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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
一章 異世界
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少女と粉雪

感想、指摘など、気軽にご意見頂ければありがたいです。

この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。

 深夜を向かえ地下牢は、先程までとは違う顔を見せる。

 余りの寒さにクロウは、目が覚めた。


 「地下牢行きを宣告されてから、こうなるのは予想してたけど、想像以上に冷え込むな・・・」


 寒さで目が冴えてしまってクロウは寝付けないでいた。

 毛布に包まる様に、横になる。

 寒さに震えるクロウの目の前に、光の粒が落ちてくる。

 体勢をぐるっと真逆に入れ替えて廊下に目を向ける。

 どうやら、地下牢の突き当たりにある、大きな鉄格子の窓から入って来てる様だった。

 蛍の光に似た、光の粒は鉄格子の窓を通り抜け、空中を浮遊している。


 「綺麗だなぁ・・・それにしても尋常じゃない数だな・・・」


 光の粒は、クロウの居る、牢屋の鉄格子をすり抜け、ゆっくりと人の形を形成していく。

 クロウは、目の前で何が起きてるのか理解できかった。

 光の粒はやがて、人の姿に変わって行く。

 一瞬、眩い光を放つ。クロウは眩しさの余り瞬間的に瞳を閉じた。そしてゆっくりと開く。

 そこには自分と同じ位の年の純白のドレスを纏った、可愛らしい女の子が立っていた。

 床まで根を下ろしそうな、真直ぐに伸びる金髪の髪。綺麗に整った眉、高くも低くも無い、鼻筋の通った小さな鼻、唇は厚めで瑞々しかった。

 クロウが特に気になったのは、赤と碧の左右非対称の瞳だった。

 少女は、こちらを見つめる。


 「こんばんわ。クロウ」


 「君は、誰?何で俺の名前を知ってるの?もしかして幽霊?」


 彼女はクスクスと笑った。


 「違うわ。クロウには秘密よ。それに質問の数が多すぎるわ」


 クロウは、恥ずかしくなって頬を染める。まるで子供だ。


 「じゃぁ一つだけ。君の名前を教えてくれない?」


 彼女は、困った顔して恥ずかしそうに答える。


 「じゃぁ、特別にクロウだけに名前を教えてあげる」


 「私の名前は、ヴェルフィ-ユ」


 「こんばんわ、ヴェルフィ-ユ」


 挨拶を交わして、互いに少しの間、沈黙が流れる。

 ヴェルフィーユはクロウの目の前に座り、突然、息が掛かりそうな位、顔を近づける。


 「クロウの瞳は、漆黒なのね。でも透き通っていて、とても綺麗」


 ヴェルフィーユが、突然近づけて来たので、クロウは驚き頬を真赤に染める、なんとか離れようとする。しかし後ろは完全に壁だった。


 「ヴェルフィーユ、少し離れて・・・顔が近い」


 「どうして?」


 「どうしてって・・・ヴェルフィーユが凄く可愛いから」


 ヴェルフィーユは頬を染め、恥ずかしそうに言う。


 「クロウ、もしかして、私を口説いてるの?」


 クロウは絶句し、高速で首を左右に振る。


 「むッ! 何でそんなに、強く否定するのよ! これでも私凄~くもてるんだからね、引く手数多で、困るくらいなんだから!」


 ヴェルフィーユは怒ってる様だった。


 「ヴェルフィーユ、君は可愛いし、綺麗だとも思う」


 ヴェルフィーユは機嫌を直し、恥ずかしそうに頬を染めてる。


 「だけど俺には、人を好きになるとか、そう言う感情がわからないんだ」


 「どういうことなの?」


  ヴェルフィ-ユは不思議そうに見つめてくる。


 「言葉そのままだよ。感情が無いに等しいとでも言ったほうが早いかも知れない」


 「俺には何も無い、あるのは刀だけだから」


 クロウの瞳に影がさすのをヴェルフィーユは見逃さなかった。

 ヴェルフィーユはさらに距離を詰める。

 クロウは逃げ出そうとした。後ろは壁で身動きが取れないのを思い出す。


 「しまった!」


 二人の距離は先程より、更に縮まっていた。互いの唇が触れそうなほどに。

 互いに見つめ合う。


 「クロウ怖い?」


 「怖い物なんてない」


 「嘘。本当は、怖いんでしょ?」


 「何が?」


 「人と触れ合うのが、怖い癖に強がってる様に見えるわ」


 その言葉にクロウは感情を露にする。


 「怖くないって言ってるだろ!」


 「クロウ、貴方はこのままでは闇に沈む事になるの。それだけは絶対させないわ」


 「貴方は、私の運命の人。だからこうして貴方の前に現れたの」


 「だからお願い。動かないで静かにして」

  

 ヴェルフィーユは、クロウの額に自分の額を押し当てた。そして目を閉じる。

 ヴェルフィーユの口から聞き取れない言語が紡ぎだされる。


 「TUBDSO*DHKDDDJKL*JGDDSFHKL*JILLK***」

 (汝と我の精神を結び給え、この者の精神に入る事を神に宣言する)


 言葉を紡ぎ終えた途端、クロウは意識を失った。  


/


 ヴェルフィーユは宙に浮かび、俯瞰するように湖に降り立つ、水面から浮いた状態でヴェルフィ-ユは周囲を見渡した。


 「此処がクロウの精神世界なの?」


 湖を除いてそこは、白色で統一された、見渡す限り何もない世界。


 「何もないなんて異常だわ。普通の人なら何かしら世界を構築して広がってるのに・・・」


 ヴェルフゥーユは湖を見下ろす。


 「一度、入ってしまったからには、クロウを見つけるまで帰れないわ」


 気合を入れるように両手で自分の頬を叩く。


 「きっと、この湖の中にクロウはいる。助けなきゃ」


 ヴェルフィーユは、目を閉じ、そして、静かに湖へと足をつけた。

 体はゆっくりと水面へと沈んでゆく。

 足先から頭まで、水に浸かった感覚に覆われる。そしてヴェルフィーユはゆっくりと目を開けた。

 ヴェルフィーユは、驚き思わず声にする。


 「キレイ。こんなにも水の中が透き通ってるなんて、でも・・・生き物がいないなんて不自然だわ」


 「とにかく、潜ってみないと分からないわ、つべこべ言わずやるのよ! ヴェルフィーユ!」

 そう言い聞かせるとヴェルフィーユは、体を反転させ水面を蹴る。

 勢いよく水中を潜ってゆく。その姿は、まるで人魚の様だった。

 もう、随分と潜っただろうか。一向に、水中の風景は変わらなかった。


 「本当に、クロウがこの湖の中にいるかわかんなくなって来るわね」


 水中で立ち往生していると、少し先に、白い地面が見えた。

 ヴェルフィーユは、勢いよく加速すると、やっとの思いでその場所へたどり着くと両手を交差してつま先から静かに水の膜を抜けて内部へと降り立った。

 降り立つと、静かに瞼をあける。


 内部は入ってきた湖と同様に、一面白い光景が広がっていた。

 

 「まるで、ケーキみたいね・・・三層の構造になってる」

 

 「でも、何もないわ・・・あッ! 赤いものが見える。何かしら?」

 

 ヴェルフィーユは、赤い何かを目指して飛んでいくと、それは大きな鳥居だった。

 

 「何? 何かの建造物みたいだけど・・・まぁいいわ行ってみるしかないわね」

 

 大きな鳥居にそって、小さな鳥居が幾重にも上へ向けて連なっていた。

 ヴェルフィーユは、階段を浮いて上っていくと大きな日本屋敷に辿りついた。

 門を抜けて、庭に足を踏み入れるとそこには、大きな木と、大きな池。コの字型の縁側があった。

 大きな池は、氷が張ってガラスのように空の水を映し出していた。

 大きな木に向かい、幼い少年は木刀を叩きつけていた。

 何度も、何度も、その顔は憎しみに覆われていた。

 ヴェルフィーユは、幼い少年の顔に見覚えがあった。


 「クロウ・・・なの?」

 

 少年は、黙って木刀を大きな木に叩きつけていた。

 ヴェルフィーユは、クロウの手を見ると皮は剥がれ、てのひらは血だらけになっていた。

 

 「クロウ! やめて! 手から血が出てる!」

 

 必死に叫び、涙を浮かべ怒るヴェルフィーユの声は、少年には届いてないようだった。


 突然、ヴェルフィーユの頭上に、粉雪が降り注ぐ。

 粉雪は旋風を巻き、雪の塊へと変化していく。

 雪の塊はやがて女性の姿へと変貌をとげると、見たこともない服を着た女性が姿を現した。

 優しい顔でヴェルフィーユに語りかける。


 「こんにちわ。ヴェルフィーユちゃん」


 ヴェルフィーユは涙を拭った。


 「貴女は、誰?」


 女性は困った顔をしながら優しく答える。


 「私はこの子の大切な人の残留思念。貴女が困ってるみたいだから助けに来たの」


 「クロウの大切な人?」


 「そうね、でも、それは私じゃないんだけど、私でもあるわ」


 「そう。クロウの心の中に深く眠る大切な想いなのね」


 女性は優しく微笑んだ。


 「ヴェルフィーユちゃん、この子を助けてあげられる? 私も長い歳月を懸けて助けようと試みたの。でも、私では助けてあげられないの」


 ヴェルフィーユは強く頷いた。


 「この先は、酷く過酷なモノを見ることになると思うわ。その覚悟はある?」


 「精神世界に入ると決めたときから覚悟はできてるわ。クロウを助けないと私も出れないもの」


 「それに・・・どんな事でもいいからクロウの事もっと知りたいから・・・」


 頬を赤く染めながらく話す。ヴェルフィーユを見て女性は優しく微笑だ後、少し残念そうに微笑んだ。

 女性は、ヴェルフィーユの手を取ると、池の前まで連れていき指差した。

 

 「ヴェルフィーユちゃん、ここから先に進めるわ。九郎の心の更に奥に・・・」


 女性は、ヴェルフィーユの頭を優しく撫でて、池の上に乗る様に指示して話しかけた。


 「ヴェルフィーユちゃん。これからは貴女が、クロウの傍に居てあげてね」


 「貴女・・・もしかしてクロウの・・・」

 

 女性は優しく微笑むと、粉雪の様に舞って跡形もなく散っていった。

 女性が、散った瞬間、氷がガラスのように砕けて、ヴェルフィーユは池に吸い込まれてゆく。

 池の中を落ちゆく最中ヴェルフィーユは呟く。


 「さよなら、クロウのお母さん」





  




  

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