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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
一章 異世界
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翠の騎士と真偽

感想、指摘など、気軽にご意見頂ければありがたいです。

この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。

 鬱蒼とした森を一人の騎士が馬に跨り疾走していた。

 いかにも騎士らしい勇猛さを兼ね備え翠の外套を風になびかせるその騎士は、深緑で囲まれた森の中、疾走する騎士団が目に留まった。


 「察するに、あれはランスロットの騎士団か? しかし最後尾にいるアレはなんだ」


 一見普通の騎士団の様であったが、最後部に全身漆黒の姿をした騎士には見えない人物が見えた。


 「何か好くない事が起こりそうだな、一刻も早く帰還せねば」


 手綱を強く握り、馬に鞭を入れた。鞭の合図と共に馬は先程より加速し森を駆けていった。

 

/


 その頃、深緑に囲まれた森をランスロット一団は疾走していた、馬の駆け走る音が鈍い響きを轟かせる。


 「皆、城が見えてきたぞ! 王に失礼が無きよう準備を怠るな」


 クロウは困惑していた、準備を怠るなと言われても、この世界の礼儀なんて全く知らない事。王に謁見して今後の自分の行く末がどうなるのかも彼は不安で落ち着かなかった。


 「どうしたクロウ? 顔色が悪いようだが?」


 「ランスロット、俺はこの世界の礼儀を知らない」


 そう言ったクロウに対しランスロットの言葉は、実にのんびりとしたものだった。


 「当然ではないか、クロウは異界の者だ。礼儀を知らないのは当たり前だろう。何かあれば我等がフォローに回るから気をやむな」

 

 「我が王は寛容な方だ、心配するな」


 クロウはランスロットの言葉に安心した。

 馬上で会話をしている間に、森を抜け城に到着していた。

 一様に馬の速度を落とし、緩やかに城門の前で停止すると、城門の前には兵士が門を挟んで立っていた。

 ランスロットは兵士に向かい命令する。


 「開門せよ」


 兵士は開門の合図と共に門を開く、ランスロット先頭に次々と門をくぐってゆく。

 クロウが門を潜ろうとしたその時、一人の兵士が槍をクロウに向ける。


 「待て! 貴様は何者だ! その様な姿で、我等が城内には入れさせぬ」


 すると異変に気づいたランスロットが憤慨する。只事ではないと城内の民で野次馬が出来た。


 「その者は、私が認めた者だ。文句があるならば私に言うべきではないか?」


 兵士は驚き慌て、すぐ様跪いて許しを乞う。


 「ランスロット様、御無礼申し訳ございません」


 兵士の言葉にランスロットは更に、憤慨する。


 「許しを乞うのは私ではなく、クロウにではないか!」


 兵士は我に返り、クロウに向かい直し跪く。


 「クロウ様、ご無礼の数々をお許し下さい」


 クロウは、嫌な顔一つせず、兵士に向かって話しかける。


 「お立ちください、貴方はアーサー王の仕事を忠実に実行したのです。城を護るのが兵士の務め、何を恥じる事があるんです。もし私が本当に不審な輩であるなら尚の事。貴方達がこうして忠実に務めているからこそ、城の安全が保たれてるのではないですか?」


 城門を護る兵士達、民衆は感嘆した。

 兵士は面をあげ涙を流していた。


 「クロウ様の優しき、お言葉在り難く存じます。どうぞお入り下さい」


 城内は騒然としている、先程の一部始終を見ていた者によって、すぐさま城内に噂が飛び交う。


 「なんでもランスロット卿が認めた方らしいわよ」


 「一部始終見てたを見てた奴の話じゃ騎士らしい振る舞いをしてらしゃったとの話だ」


 「全身漆黒で気味が悪い」


 「城に災いをもたらすんじゃないかしら」


 良い噂もあれば悪い噂の飛び交ってる様だった。

 騎士団は城に向かい城下を馬に乗り闊歩している、周囲は民衆で溢れていた。

 ランスロットは難しい顔をしていた、クロウはランスロットに近づき小声で囁く。


 「何で難しい顔してるのさ?」


 「クロウ、今はあまり城内を騒がせたくなかったのだ、これから審議にかけられるクロウを目立たせたくなかったのもあるが、クロウが言ったことは間違ってはいなかった。少しあの兵士に言い過ぎた事もある。そう言うこともあってな・・・」


 ランスロットは反省してる様子だった。


 「俺は事実をいったまでだよ、それに俺は頭を下げられるような身分でもない」


 「しかし、クロウが言った言葉は真に騎士らしい言葉だったぞ。これが良い方向に向いてくれると良いのだがな」


 ランスロットと話をしていると城下の大広場に突き当たった、唯一、城下で一番大きな場所だった。

 クロウが上を見上げると少し離れた所に城はみえていた。

 「此処から見ても大きな城だな、本当に此処は元いた世界じゃないんだな」

 改めて自分がどういう状況に置かれているのか、クロウは認識し直すと頭を痛める。

 大広場に視界を戻すとそこには素朴で大きな噴水があった。

 噴水からは水が滾々と湧き出ている。

 先頭を行くランスロット騎士団の後をついて行くクロウは、噴水を横目に城へ向かう。

 大きな噴水だなぁ、これだけ大きいと鯉でも飼えそうだなと考えていると、ランスロットの声が響き渡った。


 「皆、止まれ!」


 クロウも慌てて馬を止めて、城の方角へ視線を向けると、城への道を一人の騎士が塞いでいたようだった。


 「これはガウェイン卿。何用ですかな? 我等は今から王に謁見しにいく所なんだがね」


 ランスロットの顔は強張っていた。

 クロウはランスロットの横に馬をつけた。


 「クロウ、非常にまずい事になりそうだ。よりにもよってガウェイン卿が出てきた」


 「ガウェイン卿?」


 「ああ、説明は後だ、どうにかガウェイン卿を説得せねば城まで辿り着けない」


 少し離れた場所から対峙するの騎士は猛々しく咆哮をあげる。


 「ランスロット卿、貴公は下がっていてもらおうか。私が用があるのはそこの漆黒の者のほうだ、その様な輩を王に謁見させるわけにはいかんであろう」


 「ガウェイン卿、事の経緯は審議の場で尋問するのが一番良いではないか。王や他の騎士の手前もある」


 「ランスロット卿、城への道を通るのはこのガウェインを倒さねば通れないと言う事が理解できぬのか?」


 ガウェイン卿が一度言い出すと梃子でも動かない事を知っている、ランスロットは顔を歪める。


 「ならばガウェイン卿、貴殿の相手は私がしよう」


 「くどいぞ。ランスロット卿! 用があるのは貴殿ではない! そこの漆黒の者だ!」


 互いに睨み合いが続いている、ガウェインは痺れを切らし始めていた。

 クロウは、ガウェインの様子を見て、ランスロットへ話しかけた。


 「ランスロット、庇わなくていい。あのガウェインって人、道を始めから譲る気は無いようだ」


 「クロウ本気で言ってるのか? ガウェインはお前を殺す気でいるんだぞ!」


 「分かってるよ。ああいうタイプは言葉で説得するより、刃を以て説得するのが早い」


 そう言うとクロウは馬からを降り立つと、ガウェインの前へと歩を進める。

 クロウの様子をみるなり、ガウェイン卿も馬を降り、外套を外すと馬の背に投げ、クロウに向かい歩みだす。


 「クロウ!!」


 必死に呼び止めるランスロットの言葉を、クロウは聞き流した。

 クロウとガウェインの距離が互いに縮まってゆき、手を伸ばせば互いに触れられる距離まで近づいていた。

 只事ではない様子に当事者達の周りは、多くの民衆で完全に壁が出来上がっている。


 「あの漆黒の者死んだな、ガウェイン卿に敵う訳がないだろう」


 「ランスロット卿が認めた方だぞ、ガウェイン卿にも劣らないだろう?」


 野次馬の間では様々な意見が飛び交っている。

 クロウとガウェイン卿は互いに見つめ合う、そしてガウェイン卿が言葉を発した。


 「漆黒の者、大した度胸だ、それだけは認めえてやろう。このガウェインの前に何の策もなく出てくるとは、余程の愚者か、大器の者か、果たしてどちらか?」


 ガウェインは獰猛な笑みを浮かべている。


 「ガウェイン卿、そんな事俺にはどうでもいい事だ、貴方を退けないと王に謁見できない。だから貴方と対峙してるだけだ、理由はそれだけで十分だ」


 ガウェインは笑う。


 「このガウェインを前にして大口を叩くか、今だ臆せずにいられる事は褒めてやろう。が貴様は前者だな。愚者は王に謁見せずに此処で死ぬことになるだろう」


 「此処で死ぬかどうかは、それは貴方が決める事じゃない俺が決める事だ」


 ガウェイン卿は剣を抜いた。


 「我が愛剣ガラティーンよ、愚者に神罰を下せ」


 一閃、ガウェイン卿は横一文字にクロウを斬りつけていた。

 クロウは土煙と共に、地面を滑る様に吹き飛ばされた。

 

 「クロウ!!」


 ランスロットは叫んだ。


 「あっけない物だ、度胸の割には他愛も無い、どんな物かと思えばやはり唯の愚者か」


 やがて土の粉塵の中に人影が映し出される、粉塵は収まり、皆一様に目を見張る。

 クロウは片膝を着いて、鞘から少し刀を抜き刀身で剣を受け止めていたようだった。


 「今のを防いだか、普通ならば体ごと切り裂いているんだがな」


 言葉とは裏腹にガウェインは、内心驚いていた。秘蔵の愛剣の技を防がれたからだった。ガウェインはクロウに問う。


 「漆黒の者よ、どうやって今のを防いだ?」 


 「それを聞いてどうする、教えた所で貴方には使いこなせない」


 クロウの大口を聞きガウェインは歓喜をあげ、笑い出す。


 「ふははははははは! 実に見事だ!こんな所で強者に出会えるとは、ランスロット卿が認めたのも嘘ではないか」


 ガウェインはクロウを指差すと話しかける。


 「今の技を防いだのはお前で二人目だ、一人はそこのランスロット卿、二人目は漆黒の者お前だ!」


 そう言い放つとガウェインはクロウに追い討ちをかける、クロウは今だ片膝を付き微動だにしない、

 ガウェインはクロウに向かい走り出す、そして真上からクロウ目掛けてガラティーンを振り下ろす。

 瞬間クロウは鞘から刀を引き抜き、両手を使い刀身で受け止める。

 甲高い金属音がこだまする。


 「くっ!」


 余りの重い剣戟にクロウは、歯を食いしばる。

 ガウェインの剣に一層力が増す、このまま押し切るつもりの様だ。

 クロウは焦った、このままでは刀が折れてしまう危険性があったからだ。

 しかしクロウは、溢れ出る高揚感で思わず笑わずにいられなかった、クロウの口元が緩む。


 「一日に2度も化け物に会うとは思わなかった。ついてるのか、ついてないのか」


 クロウは刀身で受け止めるのをやめる事にした。

 だがこのまま刀身を支えてる手を離せば真っ二つになるのは確実だった。


 「どうした?漆黒の者。守ってるばかりでは勝てぬぞ!」


 クロウはこの状況を打破にはガウェイン卿の力を利用する事にした。

 どうせこのままならば真っ二つだと悟っていたからだった。


 「たかがこれしきの事で勝った気になってもらうと困るなガウェイン。貴様の力はこの程度か?」


 その言葉にガウェイン卿は激昂する。全力で剣に力が注がれる。刀と剣からは火花が出始めている。  クロウは、内心、いつ刀身が折れるか肝を冷やしていた。


 「今度はこちらから仕掛けるとしようか、ガウェイン」


 「何を言うこの状況では仕掛けようもあるまいに」


 「ガウェイン卿、挑発に乗ってくれて感謝する」


 「何だと!」


 一瞬にしてクロウは刀身を左斜めに傾ける、力の込められたガラティーンは刀の刀身を滑ってに大地に突き刺さった。

 その刹那、クロウは刀を引きガウェイン卿の喉元へと刀の切先を突きつける。


 「貴様! 最初からこうなる事を計算してたのか!」


 「最初からって言うのは間違いです、ガウェイン卿、貴方は力に頼りすぎです、俺が膝を付いていたのはガウェイン卿の最初の一撃が効いて立てなかったからです」


 「付け加えて言えば、ガウェイン卿が真上から打ち込んでくれた事が活路を見い出せたる要になりました。事実いつ刀身が折れるか冷や汗物でした。」


 「ふん! 小僧が一人前に講釈を垂れおって!」


 そう言うとガウェイン卿は無骨に愛剣ガラティーンを鞘へと収める。

 クロウも刀を引き、鞘へと静かに納刀した。

 ガウェインは兜を脱ぎ素顔を晒す。

 その素顔は肩にまで届きそうな、白髪交じりの茶髪を後ろで一つに束ねている、瞳は薄い青で、顔は彫りが深く、ゴツゴツとしていた。

 一見、無骨そうに見えるのだが決して下品ではない品格を備えていた。


 「認めざる得まい、その決断力と判断力、何より死を恐れる胆力。漆黒の者、名を教えてくれまいか」


 クロウはランスロットとの事を思い出した、この世界ではクロウで通す事した。


 「クロウと言います、ガウェイン卿」


 「見事な腕前だ。ランスロット卿が認めたのも頷ける、私もお前を認めよう、クロウよ」


 「有難うございます、ガウェイン卿」


 終始を見守っていた、ランスロットを始めとする騎士、民衆はクロウとガウェインの決闘が終わったのと同時に歓喜した。


 「おいおい!あのクロウとか言う漆黒の剣士、ガウェイン卿に勝利したぞ!」


 「だから言ったじゃないさ、ランスロット卿に認められた方だって!」


 「馬鹿言うなよ、クロウ様が負けるって言ったのは誰だ!」


 民衆や兵士達は口を揃えて勝手に言い合いをしている。

 クロウとガウェインが居る場所へ馬に跨ったランスロットが降り立つ。


 「久しいな。ランスロット卿」


 「ご無沙汰してます、ガウェイン卿」


 「ランスロット卿、クロウは何処の出だ? この様な戦い方は初めて見る」


 「今わかる事は、クロウは異界の者だと言う事、そして類稀なる剣技、事実ガウェイン卿も体験済みでしょう。我々では判断しかねるのでアーサー王に謁見を願うつもりだったのです」


 「それは無粋な事をした、だがこの年になって再び、血肉が踊るとは思っても見なかったぞ」


 ガウェインとランスロットは互いに目を合わせ、視線をクロウに向ける。


 「どうかしたんですか?」


 ランスロットとガウェインは目を合わせ口々に述べた。


 「クロウ、我等に認められたのだぞ、もっと堂々としていいのだ」


 ランスロットがそう言うとガウェインが続けて言う。


 「もっと気丈に振舞え、ではないと我等も困るであろうが」


 二人から小言を言われながらも、自分に父と兄がいたらこんな感じだったのだろうかと思って、クロウは少し嬉しかった。


 「ランスロット卿、このガウェインも共に往こうぞ、クロウがこの様では審議が心配になりおるわ」


 「ガウェイン卿、心遣い感謝します、有難く頂戴いたします」


 ランスロットは騎士団に向かって号令をかける。


 「ガウェイン卿と共に城に向かう、全員準備は良いか!」


 兵士達は一同に素早く馬に跨り指示を待つ、ガウェイン卿も準備を終えていた。

 ランスロットとガウェイン、兵士達が声を揃えてクロウに言う。


 「クロウ?」「クロウ!」「クロウ様!」


 ハッと我に返ったクロウは慌てて馬に跨る。


 「ランスロット卿よ、クロウを見てると孫が出来たように思える」


 「ガウェイン卿、私は息子が出来た様に思えます」


 二人の卿がニヤついてるのをクロウは無視することにした。

 ガウェインは、ニヤ付きながらも、遠い目でクロウを見つめていた、まるで若き日のアーサー王を彷彿させるこの若者を。

 こうしてランスロット率いる騎士団とガウェイン卿、クロウは城へ向かって走り出した。

 

  






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