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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
四章 最狂の騎士
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エレの愚痴

 エレに連れられ城下に入ったクロウは、薄目で町を眺めた。

 大通りが城まで真っ直ぐ伸びていて、西には鉱山があり民家が列をなして上へ幾重にも連なっていた。

 東には、城まで続く広大な荒れ果てた畑が広がっている、枯れた作物が無惨にも積みにされていた。

 

 (これじゃ、民衆の生活もキツイだろうな…)

 

 不意にエレが、振り向き話しかけてきたので咄嗟に瞳を閉じる。

 

 「家についたら、暖かい食事を用意するわね。まぁ大したもてなしもできないけど!」

 

 呟いて、エレは愚痴を溢し始めた。

 

 「ここの民衆ってさ、結構いい人ばかりなのよ…だけど領主は最悪! 明日の晩には若い娘を城に連れて行かないといけないし、取れた少ない作物はほとんどが領主の物! 領主だかなんだか知らないけど私達移民と、民衆は圧制に苦しんでるのよ! 堪ったもんじゃないわ!」

 

 愚痴を聞いてると空から雫が垂れてきて、クロウの頬を伝い唇に流れ込んだ。

 

 「塩水…?」


 その言葉に反応して、エレが突然馬を止めると手綱をギリギリと握りしめ唇を噛み締める。

 

 「ユキ…。なんで私たちがここで我慢してるかわかる? その塩水で作物が育たない。でも私たちはここでしか生きられないから…。過去ここを離れようとした人がいたけど、一族郎党、城に連れられて戻ってこないの! おそらく…。」

 

 エレはそれ以上語ろうとしなかった。

 クロウは、話の内容を察して問いかけた。

 

 「なぜですか? エレ様… そんな状況で私を招き入れた理由はなぜなのですか?」

 

 エレは、再び手綱を握り馬を走らせると自宅に向う。

 

 「ついてから話すわ…外で誰が聞いてるかわかったものじゃないから」

 

 そう呟いて、城が間近に見える石作りの家の扉を開けてクロウを招きいれると、薄暗い部屋の中、手馴れた様子で火打ち石を使い蝋燭に火を点ける。

 淡い光が室内を照らす。

 木で出来た簡素な食台が真ん中にあり、椅子が二脚。

 テーブルから数歩の位置に簡素なベットがあり、左の奥にはキッチンがあった。

 薄目を開けながらクロウは、顔をしかめた。

 

 (キャメロットとは、天と地の差だな…仮にも指揮官だろ。城に住まわせてやれよ…。)

 

 エレはすぐにキッチンに向うと食事の準備をしに行きながら話しかける。

 

 「適当に座ってて。すぐ出来るから」

 

 クロウは、椅子に腰掛けると居場所がなく落ち着かない様子で座っている。

 部屋には、甘い香りが漂っている為だった。

 しばらくして、エレが両手に鉄の食器を二つ持って戻ってきた。

 中身はどうやらスープのようだ。

 テーブルに置かれた、スープとスプーン。

 エレは、椅子に腰掛けてテーブルの上で手を組み、クロウを見つめる。

 

 「ねぇユキ? そろそろ正体を暴いたらどう?」

 

 突然の言葉に、クロウは動揺した。

 

 「エレ様…それはどういう意味ですか?」

 

 エレは、少し笑うと優しく微笑みかける。

 

 「どんなに見た目でごまかしても、匂いでわかるわよ? 女性らしい甘い香りがしないもの。それに男のようなムサイ臭いもしないけど胸がね…揺れないのは不自然でしょう?」

 

 クロウは、絶句して苦笑いし観念して瞳をひらくと、エレは驚いた。

 

 「黒い瞳…貴方何者なの!?」

 

 クロウは、落ち着き払って答える。

 

 「円卓の騎士だよ、ここの領主になる事をアーサー王から仰せつかった、普通に潜入したんじゃ民に被害が出るから変装したんだよ」

 

 その言葉にエレは、身構える。

 

 「その円卓の騎士様は、私たち移民を捕らえて殺すつもりなの!」

 

 「いや。それは俺が絶対にさせないよ。それにアーサー王はそういう事はしないだろう」

 

 「どうして…言い切れるの!」

 

 エレは、興奮気味に言い放つ。

 クロウは、優しく笑って問いかける。

 

 「俺も、君達と同じ移民だよ…でもアーサー王は俺を殺しはしなかった。そればかりか円卓に加えてくれたからね、俺も君達と一緒だよ」

 

 エレは、クロウの言葉に嘘がないと判断すると恥ずかしそうに頬を染めて言う。

 

 「貴方の名前はなんていうの?」

 

 「クロウ」

 

 「じゃあ、クロウ後ろ向いてて着替えるから・・・」

 

 クロウは、後ろを向いてエレに話しかけた。

 

 「エレ、単刀直入に言うけど協力してもらいたい…城に乗り込むのに」

 

 エレは、ベットの脇にある引き出しから服を取り出すと着替えながら言う。

 

 「失敗したらどうすんのよ! それにその姿じゃ確実にばれるわ!」

 

 「君の服を貸してくれたらそれでいい。あとはいつも通り城内につれていけばいいだけだ。後は俺が何とかするからさ、もし俺が失敗するようなことがあっても知らないフリをすればいい」

 

 エレは着替えを済ませると、クロウに詰まりながら話しかける。

 

 「わかったわ。それでいいとしてもさっきから気になってるんだけど…胸に何仕込んでるの?」

 

 クロウは、一番聞かれたくなかった事を言われたので動揺する。

 

 「いや…そこは聞かなくてもいいんじゃない? 俺だってこんなナリだけど一応男だからね…」

 

 クロウは、席を立ちテーブルを挟んでエレと睨みあう。

 円を描き、牽制しあっているとエレがクロウに向かい飛びついてきた、抱きつかれたクロウは後ろのベットに倒れこむとエレの手によって着物の胸元を掴まれ包帯がさらけ出された。

 抵抗するクロウに向かい、エレは静かに告げる。

 

 「抵抗したら、協力しないわよ・・・」

 

 クロウは諦めて、おとなしくなると胸から林檎を取り出す。

 それをみるなり、エレはクロウに呟いた。

 

 「変態……」

 

 深い溜息をつくと、クロウは椅子に腰掛けて食事を取り始める。

 食べながら愚痴を言う。

 

 「好きでやってるんじゃない! ほっといてくれ…」

 

 食事を取り終えると、クロウは床に寝転んで寝る準備をする、エレが微笑んで。

 

 「クロウ。ベットで寝たら? 私床で構わないし」

 

 寝返りをうちながらエレに話しかける。

 

 「ここは君の家だ。俺は客で君が気にかける事じゃない。それに君は女性だから床に寝かせるワケにもいかないだろう…。俺はここで十分だよ。明日の晩に備えて寝るよ、ありがとうエレ、おやすみ」

 

 エレは、クロウの優しい言葉に領主がこの人だったらいいなと思いながら言葉を返した。

 

 「おやすみなさい。クロウ」

 

 二人は、横になると少しの間、ドキドキして寝れなかったがしばらくしてお互いどうにか眠りについた。

 


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