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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
四章 最狂の騎士
31/36

四卿とヴェルフィーユの秘密

 クロウが、城からいなくなって二日目の晩の事。

 すでに宮廷には、クロウの噂が広まっていた―――。

 

 ランスロットの部屋に、ガウェインとパーシヴァル。エクトールが集まっていた。

  

 ランスロットは、部屋の隅にある窓辺に立ち、銀グラスを片手に葡萄酒を飲んでいた。

 部屋の中央に、四人は座れるだろう、鉄製のテーブルにワインボトルが置かれ、ランスロットを見つめている。

 愁いの秘めた瞳で、窓辺から離れると椅子に腰掛けて一気に飲み干す。

 

 「アーサー王は、何を考えているのだ・・・クロウをヴェルドラッカーに行かせるなど・・・」

 

 ランスロットは、アーサー王の考えを理解できないでいた。

 扉からノックの音が響く。

 

 「パーシヴァルです、ガウェイン卿と、エクトール卿をお連れしまいた」

 

 ランスロットは、テーブルに重ねてある銀のコップを三つ並べ葡萄酒を注ぎこむと扉に向けて話しかける。

 

 「パーシヴァル、遠慮するな。入って来い」

 

 ランスロットの言葉に、パーシヴァルは扉を開けてテーブルに二人の卿を案内すると、三人一緒に椅子に腰掛ける。

 

 四人の卿は、銀のコップを手に取ると酒を酌み交わしながら議論にはいる。

 

 「ランスロット、クロウが居なくなって二日目の夜だがそろそろヴェルドラッガーについた頃かのう?」

 

 そう言ったガウェインに、対してランスロットは心配そうな顔で言う。

 

 「ああ、だろうな。だが問題なのはそこじゃない・・・かつての円卓の騎士の事だ」

 

 ランスロットの言葉に、パーシヴァルは心配な顔で問いただした。


 「かつての円卓の騎士? その方はどの様なお方なのですか?」


 パーシヴァルの言葉に、エクトールが答える。

 

 「パーシヴァル卿。貴公が知らないのも無理はないだろう。アーサー王の父君、ウーサー王の頃の円卓の騎士だからな、その円卓で最強を誇った騎士だ・・・」


 不機嫌そうにガウェインが、パーシヴァルに説明する。

 

 「確かに。エクトール卿の言うとおりだな。だが、奴は騎士の風上にも置けぬ奴だ。カイ卿を殺害し円卓を追放された輩だ」

 

 興奮したガウェインは、銀グラスをテーブルに叩きつけて憤慨した、その様子が只事ではないとパーシヴァルは、聞くのを止めようとしたがランスロットは語りだした。

 

 「パーシヴァル、お前も知っておいたほうがいいだろう。その騎士の事を・・・奴は自分と意見の合わないカイ卿を、闇に乗じて騎士の道徳に背き背後から襲い殺害したのだ」

 

 パーシヴァルは、ランスロットに疑問をぶつけた。

 

 「なぜ、その様な事を仕出かした輩をウーサー王は、追放したのです! 死刑にすべきだったのではないのですか!」

 

 ガウェインとエクトールは唇を噛み黙っていた。

 仕方なく、ランスロットが重い口をあけて説明する。

 

 「パーシヴァル。ウーサー王は取り押さえようとしたのだ。だが、逃げられたのだよ・・・奴は魔物を飼っている・・・ドラゴンという魔物をな。最強と言う称号は伊達ではないのだ」

 

 ランスロットは、酒を注ぎ一口飲むと説明しはじめる。

 

 「アーサー王は、一人で抱え込むタイプだからな。クロウを差し向けたのも何かしら勝算があっての事だろう、クロウを完全には認めてないと言う卿もまだ大勢いる。これは私の意見だが、アーサー王はクロウを他の卿に認めさせる為にヴェルドラッカーに送ったと考えている」

 

 ランスロットの言葉にエクトールは髭を弄びながら答えた。

 

 「おそらくは、そうだろうな・・・一人で落とせば他の卿も認めざる得ない」

 

 ガウェインは腕を組み、頷き難しい顔で言い放った。

 

 「だが、万が一入り込めたとしても、相手は元最強の称号を手にした輩だぞ! 経験で言えば奴のほうが格段に上だろうに!」

 

 怒り、酒をあおるガウェインを、パーシヴァルは横目に静かに話し出した。

 

 「クロウ様が居なくなった後、ケイ卿が城から居なくなったそうですよ・・・」

 

 パーシヴァルを除いた一同は、錆びた機械のような動きでピタリと動きを止めてランスロットが聞きなおす。

 

 「どういうことだ? パーシヴァル・・・」

 

 知らなかったのですか? と言う顔つきでもう一度言い直した。

 

 「ですから・・・クロウ様が居なくなった翌日には、城からケイ卿の姿がなかったと・・・」

 

 その言葉を聞いた途端、ガウェインはパーシヴァルの首を掴んで憤慨した。

 

 「パーシヴァル! それを先に言わぬか! これでどうにかなるかも知れぬ!」

 

 パーシヴァルは、ガウェインの手を振り切ると怒りだして三人の卿に言いぶつけた。

 

 「ケイ卿の事を、なぜ知らないのですか! 城にいない事は明白でしょう!?」

 

 三人の卿は、黙って静かに呟いた。

 

 「『ケイ卿・・・苦手だからな・・・』」

 

 パーシヴァルは、大きな溜息をついて銀のコップに注ぎこまれた葡萄酒を飲み干した。

 

 三人の卿は、口を揃えて言った。

 

 「これで、勝敗は半分と言うところか、ケイ卿がいれば何とかなるかも知れん」

 

 パーシヴァルは、三人の卿に聞きなおした。

 

 「なぜですか?」

 

 ランスロットは、パーシヴァルを見つめて言う。

 

 「ケイ卿は、魔法を使うからだよ。それとパーシヴァッ・・・!!」

 

 ランスロットは、エクトールによって口を塞がれていた、エクトールはランスロットの耳元で囁いて言う。

 

 「兄さん・・・言うな。ケイ卿がクロウを好きな事はパーシヴァル卿は気がついてない!」


 エクトールの言葉に、ハッと気づくと咳払いして呟いた。

 

 「さて! お開きだ。とりあえずなんとかなりそうだ、私は寝るぞ!」

 

 ガウェインとエクトールは席を立つと、自室に帰っていった。

 取り残された、パーシヴァルは黙って部屋を出ると、扉の前で腕を組み心中で呟いた。

 (なんとかなるか・・・ケイ卿がクロウ様の後を追いかけたのは解るが・・・どういうことだ?)

 

 と、思いながらパーシヴァルは自室に向かった。

 

/


 ヴェルフィーユは、清らかな水の中で体を胎児のように折り曲げ、ゆっくり瞳を開けた。

 水中から浮上して、ユリ畑へ寝そべると雲ひとつない澄みきった空に向かい話しかける。 

 

 「ランスロット! 外に出して!」

 

 深夜、寝ていたランスロットは、心の中の声に目が覚める。

 瞳を閉じてランスロットは、心の中でヴェルフィーユに向って話しかける。

 

 「ヴェルフィーユ! 今は、クロウの元にお前を行かす事は出来ない!」

 

 「どうして!?」

 

 「今行けば、奴に見つかるからだ! 当分の間は、キャメロット以外から外出させるわけにはいかない!」

 

 その言葉に、ヴェルフィーユは怒り出す。

 

 「クロウの戴冠式には、外に出してくれたじゃない! なんでこの二日間は出してくれないの!」

 

 ランスロットは、諭すように答える。

 

 「戴冠式に出したのは、クロウを祝福するためだ・・・今お前が奴に捕まればどうなるかわかってるだろう? だからお前を出すことは出来ないのだ」

 

 ランスロットは、優しい声で話しかけた。

 

 「本心で言えば、お前をクロウの傍に居させたい。だが今は無理だ。わかってくれ・・・」

 

 その言葉に、ポケットから真紅のリボンを取り出して両手で胸で握りこむと涙を溢した―――。


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