円卓への挑戦と侍女
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この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。
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コン!コンコン!
扉を叩く音で目が覚める。
太陽の日差しが窓から射し込み眩しかった。
「もう朝か、ヴェルフィーユ! 起きてる?」
目を擦りながらベットの脇に目をやると残り香だけ残してヴェルフィーユの姿はなかった。
「やっぱりいないか、きっと夜には逢えるだろう」
体を起こし、扉の方向に目を向ける。
コンコン! 扉から音が響き渡る。
「クロウ様、お目覚めで御座いますか?」
聞き覚えのある声が耳届く。
「どうぞ! 今起きた所です」
声の主は扉を開けると部屋に入ってくる。
カッカッカッと、
規則正しい靴音を鳴らしながら、緑のドレス着こなし、手にはサーバーを持っている。
太陽の光を浴び透き通る様な、銀髪を胸元でひらひら揺らしていた。
「ケイ!?」
クロウは驚いて声を上げる。
「はい? 何でしょうクロウ様?」
ケイは、テーブルまで歩いていきサーバー置くとベットの前で片足を付け跪く。
「どうしてケイが、俺の朝食を運んでるの?!」
「今日から、クロウ様の侍女を仰せつかったケイで御座います、宜しくお願いします」
「えぇ! ケイが? どうして?」
ケイは立ち上がり、クスクス笑う。
「私では御不満でしょうか?」
クロウはベットから起き上がり雪駄を履くと椅子へ腰掛ける。
「いや、不満なんてないけど円卓の騎士のケイがどうして俺の侍女を仰せつかったのかと疑問に思っただけだよ」
「私から志願したのです・・・」
「どうして又? 俺は身分の無い一介の奴隷だよ?」
その言葉にケイは振り返り厳しい口調でものを言う。
「クロウ様、貴方様はいずれ円卓の騎士になられる方なんですよ?! 少しは自覚していただけないと困ります」
クロウは唖然とした。今なんて・・・言ったの?
「昨夜、賊から一人でアーサー王を守られたとの話で、早朝円卓の騎士が集められました。今城にいるのは私にガウェイン、パーシヴァル、ランスロットの四名ですが時期に、他の騎士達も城に集う事になるでしょう」
クロウは、理解できなかった。
「どうして、そんな事になったの?」
ケイは立ち上がりテーブルの脇に立つと料理の説明をし始める。
「クロウ様、先に料理の説明をさせて頂きます。今日の朝食は、ジャムの実を蒸した物と、焼き魚、サラダとコーンスープで御座います。食べながらで構いませんのでお聞き下さい」
「うん、じゃあ遠慮なく頂きます」
「実はですね、以前からクロウ様を牢に閉じ込めるのは皆反対していたのです。朝方アーサー王自らがクロウ様に爵位を与えると申し上げた事が話の始まりで御座います」
クロウは銀のスプーンを手に取るとジャムの実をすくい口に入れる。
あっ! このジャムの実って白米みたいな味がするなぁと思いながらケイの話に耳を傾けている。
「私たち四騎士はそれで納得したのですが、円卓に座るには、今の所空席が無いのが現状です。それで十三番目の椅子ならどうだろうと言う話になったのでが、この席にはもうガラハド卿がお座りになっているので新たに円卓を設けるという話になったのです」
クロウは朝食を食べ終えるといつもの様に手を合わせた。
「それで、俺が新しく設けられた椅子に座らせられると言う事?」
ケイは厳しい面持ちで言葉を述べた。
「ですから二人の騎士と戦ってもらいます。その際、全ての民衆の前で戦ってもらいます」
クロウは困った顔でケイに問いただす。
「・・・本気で言ってるの?」
ケイは真剣な眼差しでクロウを見つめてながら言葉を返す。
「戯言でこの様な事を申し上げません、民衆、円卓の騎士、王の前で認めてもらわなければ椅子に座る資格は無いのです。アーサー王もマーリン程の者が倒された者ならば、いつ国がその者の手によって滅ぼされるとも限らないと申しておりました。ならば、早急に円卓の騎士の強化を図らねばならぬと仰っていました」
クロウは呟く。
「力には力か。抑止力ね・・・その話断るよ」
ケイは目を見開いて驚く。
「一国の領主なれるのですよ? 加えて円卓に連なると言う事は、騎士なら最高の名誉です」
「家の家系は、私欲の為に刀を振るうべからず、家訓なんだ。俺は一介の武士だから弱き人々を守れればそれでいい、だから円卓に座る気も無い、座らなくとも人を守れるからね」
ケイはその場で片膝を付き、顔を伏せる。
「クロウ様、お願いです。どうか円卓に座る為の試練を受けて下さい。今この国は昨夜の賊に狙われてるのです、最悪の場合、賊の手により国中の民が犠牲になるのです、貴方の言う弱き人々を守るには円卓の騎士となり、一丸となってその賊から民を護る事ではないでしょうか?」
その言葉にクロウは考えさせられる。
どちらにしろ、俺は奴を追わないといけない。
円卓の騎士の名誉や騎士道には興味は無いけど、奴の手で母さんの様な犠牲者を出したくも無い。
昨夜の事にしても奴を迎え撃った結果、俺一人じゃ何も出来なかった。
結局、母さんを救ったのはヴェルフィーユだし、俺はただ母さんを斬っただけだ。
一人じゃきっと何も出来なかった、結局未だに無力なんだ。
一人で何でもできると過信してたんだ・・・
なんて、愚かなんだ。
なんて、無力なんだ。
なんて、思い上がってたんだ俺は―――
クロウは顔を伏せ、ケイに言葉を交わす。
「ケイ、その円卓の試練いつから行われるの?」
「今日の午後から行われる予定で準備を進めています。ですから・・・」
ケイの言葉を遮るようにクロウは言葉を返す。
「ケイ、今すぐ準備に取り掛かる。お風呂に入りたいだけど準備できる?」
ケイは部屋の片隅にある扉に足を向けて歩みだす。
カッカッカッと、
規則正しい靴音を響かせるとノブを捻り扉を開ける。
そこには入浴の支度が準備されていた。
テーブルから遠目でケイに視線を注ぐ。
「えらく準備がいいな・・・」
クロウへと振り返り満面の笑みでクロウを見つめるケイがいた。
しぶしぶ黒袴を脱ぐと赤い着物が膝まで垂れる。リボンを解くと長い黒髪は背中まで届き、日本人特有の美を現していた。
その姿を後ろから見ていたケイは膝を付き何故か鼻から鮮血を垂らしていた。
顔を横に向けたクロウはケイを流し見る。
「ケイ、どうかした? 血が出てるようだけど何かあったの?」
「違います、先程鼻を打ちまして・・・時期に治まりますので心配なさらないで下さい」
ケイは食器を片付けますので。と言い残し扉を閉め出て行った。
クロウは浴槽に浸かり三か月分の汚れを洗い落とす。
「きもちいい! やっぱ日本人は風呂だよなぁ」
浴槽から出たらタオルが用意されていた。
タオルで体を拭くと颯爽と朱染めの着物に袖を通し、角帯を巻きつけると黒袴に足を通す。
着替えが終わった頃。
静かに扉が開きケイがそっと顔を覗かせる。
「クロウ様、髪を左肩で結んで頂けないでしょうか?」
ケイに左肩で結ぶように指示されたのでめんどくさいのもあって横で結んでみた。
満足そうな貌で微笑むと浮かれ顔でケイは部屋へと戻っていった。
風呂場を出て部屋に戻ると、ケイが刀を両手で持ち立っていた。
クロウは、ケイの手から刀を受け取ると帯びに差し、下げ緒を帯びに結びつける。
「クロウ様、それでは参りましょうか」
クロウは、ここ数日でケイへの印象が変わりつつあった。
最初は、お堅い感じの才女と言う感じだったが、今見るとなんだか可愛らしい女性だなと感じていた。
「ケイ、試練の会場まで案内してくれ」
そう告げた後、ケイの後ろについて部屋を後にした。
王宮を出て、中庭を通る辺りで、金髪碧眼の長い髪を首元で結んだ青年を見かけた。
年齢は俺とそう変わらないくらいか?
高貴な雰囲気を醸し出し、青年は木々に魅入られたように見上げていた。
少しランスロットに似てるなと思いながら青年を横目にクロウは会場へ向かった。




