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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
三章 円卓に集う者
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黒いフードを纏う者

感想、指摘など、気軽にご意見頂ければありがたいです。

この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。

 キャメロットに聖霊降臨祭日が訪れていた。

 朝早くから、皆一様に忙しく、城下を始め、城内でも祝賀ムードでざわめき立っている。

 侍女達は嬉しそうに料理を運び、騎士や兵士は互いに肩を組みその日だけは愉しそうに祝杯を挙げていた。

 そんな賑わうキャメロット城へと漆黒のローブを纏い仮面を着けた人物は足を踏み入れようとしていた。

 城門の前まで来て兵士に呼び止められる。


 「止まれ! 貴様は何者だ!」


 声を荒げて兵士は槍を漆黒のローブを纏った人物に向ける。


 「私は、隠者です。アーサー王に謁見を願いたい、重要な事をお伝えしなければならないのです、どうか取次いで頂きたい」


 「貴様の様な不気味な輩を通す訳にはいかぬ、早々と立ち去れ!」


 漆黒のローブを纏った人物は兵士に跪くと懇願する。


 「どうか、お取次ぎを頂きたい・・・」


 城内の窓辺からその光景を見ていた、黒いローブを纏った人物は城門へと降りて行くと兵士に語りかける。


 「私が招いた者だ。御通しなさい」


 兵士はその声の主に振り返り跪き、頭を下げる。


 「これはマーリン様。失礼しました、そうとは知らず無礼の数々お許しください」


 マーリンは優しそうに笑うと兵士を労う。


 「よい、祝賀ムードで城内は浮かれておるが、そなたは律儀に務めを果たしておる、実に立派な事だ。」


 「ハッ!」


 マーリンは、漆黒のローブを纏った人物を城に招き入れると謁見の間へ向かい案内する。

 謁見の間へと真っ直ぐに伸びた豪奢な絨毯をマーリンと隠者は突き進んでいく。やがて謁見の間へと辿りつくと扉を守護する騎士に向かい王への謁見を願い出る。

 騎士は、謁見の間に入ると暫くして戻ってきた。


 「どうぞ、マーリン様、アーサー王がお待ちです」


 マーリンと隠者は謁見の間に通されると、マーリンは王の傍らに、隠者は王の御前に跪く。

 アーサー王は、隠者に向かい問いを投げかける。


 「この様な日に何用だ? 漆黒の隠者よ?」


 マーリンはアーサー王に向かい耳元で囁く。


 「この者は未来を見通す事の出来る者でございます、私の知人です」


 「それは真か? ならば信用に値するのだな、マーリン?」


 「はい」


 アーサー王は漆黒の隠者に向き直し再度問いかける。


 「隠者よ、そなたは未来を見通す事ができるらしいな? 話を聞いてやろう、その前に仮面を脱ぎ素顔を晒せ、出なければ話を聞くに値せぬ」


 漆黒の隠者は仮面を少しずらす。

 アーサー王はその顔をみて驚く。


 「アーサー王、どうかお許し下さい。とてもお見せできる顔ではないのです。どうか仮面を着けたままで語る事をお許し願いたい」

 

 アーサー王は酷く後悔した。


 「漆黒の隠者よ、辛い思いをさせて済まなかった、そなたの予言を申してみよ」


 隠者は一歩前へ歩み出ると、膝を付き、頭を垂れ申し出る。


 「アーサー王。僭越ながら申し上げます所、今年こそある者が現れ、その者はいつか『聖杯』を手にキャメロットへ持ち帰るでしょう。それが私の予言で御座います、それを逸早くアーサー王にお伝えしたくマーリン殿に助力して頂き参った次第です」


 アーサー王は玉座から立ち上がり驚嘆すると隠者に問う。


 「それは真か!」


 「はい、神に誓って嘘偽りの無い事実で御座います」


 隠者に近寄りアーサー王は労いの言葉を掛けると騎士を呼び隠者を手厚く持て成す様に支持した。

 すると隠者はそれを拒みアーサー王に申し出た。


 「アーサー王、どうかお許し願いたい。私はこの予言の為だけに城に参ったのです、すでに世捨て人となった私は人と係わる気は一切ないのです。どうかお許し下さい」


 そう述べると隠者は城の外へと出て行った。

 

/


その頃、地下室に閉じ込められたクロウは城内の異様な雰囲気に困惑していた。

 いつもならリアが夕食を運んできてくれる時間なのに、朝飯も運ばれてこないし城内は早朝から騒々しいし、遂に俺の公開処刑が決まったのかと思っていた。

 クロウは毎晩月を見上げては月齢を数えていた。月の周期は約三十日で新月から満月、満月から新月に変わる事を知っていたクロウは、ヴェルフィーユが三ヵ月姿を現さないと言う事をしっかりと把握していた。

 そして今夜は新月の晩だった。


 「ヴェルフィーユ、一体何処にいるんだ・・・」


 クロウはお腹を空かせ、孤独と戦いながら、時間は過ぎていった。


 その晩、吉報を知らされたアーサー王は円卓の騎士を集め祝杯を挙げていた。


 「皆、今日は聖霊降臨祭だ、この円卓に集う者、上も下もない、同士達よ。この祝日を共に分ち合おう!」


 そう言うと皆で祝杯を挙げていた。

 侍女や兵士、騎士達も円卓を囲い一緒になって歌い踊っては、宴は深夜まで行われた。

 皆一様に疲れ果て、そのまま深い眠りに着く深夜。一人の侍女によって、アーサー王は肩を抱えられ寝所へと運ばれていった。


/

 

 深夜になりクロウはいつもの様に片膝と抱え、冷めた壁に寄り掛かり、鉄格子の小窓から月の見えない空を見上げていた。

 明日で自分の人生も終わりを告げるのかと思いながら、自分は一体何の為に此処にいるのか、そんな事を考えていた。


 「こんな時でも腹は空くんだな・・・死ぬ前に米が食べたかった」


 一言呟き、星が敷き詰められた夜空を見つめていると鉄格子の廊下から蛍の様な光が漂いながら入ってくる。光の粒はやがて少女に姿を変えた。

 それを見たクロウは思わず嬉しいそうな声をあげる。


 「ヴェルフィーユ!!」


 ヴェルフィーユは、静かに瞳を開けるとクロウを見て疑問を投げかける。


 「・・・クロウ? 貴方いつから女の子になったの?」


 「ヴェルフィーユ何を言ってるんだ! 俺は男だ!」


 ヴェルフィーユはクロウの顔を食い入るように見つめる。


 「クロウ、髪が伸びてることに気づいてないの? 誰が見ても女の子に間違われるわよ?」


 「・・・は?」


 クロウは自分の髪を手で触ると髪は胸まで伸びていた。

 自分でも全く気が付かなかった。確かバッグの中に短刀があったなと思い出したクロウは短刀を取り出すと髪を束ね削ごうとした。


 「待ってクロウ、その髪型でいて! だって凄く可愛いんだもん・・・」


 クロウは一瞬呆気に取られると言い返す。


 「邪魔になって仕方ないじゃないか、それに可愛いって何・・・」


 ヴェルフィーユは頬を染めながらポケットから絹で出来た赤いリボンをクロウに手渡した。


 「私の使ってるリボンをクロウにあげる。それで髪を一つに束ねて!」


 「あのね、ヴェルフィーユ楽しんでない? それより今まで一体何処で何をしてたんだよ!」


 不満を口にしながらクロウは髪を後頭部で一つに束ね結っていた。

 その言葉に、真面目な貌でヴェルフィーユは話しかけてくる。


 「クロウから死体を生き返らす話を聞いてからずっと、この三ヵ月調べてたの、それでわかった事があるの・・・」


 「何がわかったのさ?」


 「いい? よく聞いてこの城にはマーリンて言う魔法使いがいるの! 結論から言うと彼はもう死んでるのよ」


 「まさか・・・!」


 「そのまさかよ・・・今城内でよくない事が起きてるの」


 「クロウは戦闘の準備をして、私は補助に徹するから」


 クロウは頷くとバッグから、黒袴に朱色の着物、白足袋に雪駄、黒い篭手を取り出す。


 「ヴェルフィーユ頼みがあるんだ、すぐに牢の入り口から俺の刀を持ってきて欲しい」


 「わかったわ! 少し待ってて」


 ヴェルフィーユは鉄格子をすり抜け出て行った後、クロウは素早く着替えを済ませる。

 刀を抱えてにヴェルフィーユは戻ってくるとクロウに手渡す。


 「クロウいつの間に着替えたの?」


 ヴェルフィーユは不思議そうにクロウを見る。


 「ヴェルフィーユ、君はそんなに俺の裸が見たかったの?」


 その言葉にヴェルフィーユ全てを理解し、俯き頬を染めていた。


 「クロウの意地悪・・・」


 クロウはニヤ付きながら質問する。


 「それより、牢兵はいなかった?鍵はなかったかい?」


 「今日は聖霊降臨祭だから、皆、宴に参加してるわ、鍵も牢兵が持ってるはずよ。クロウにも解る様に説明してあげる!聖霊降臨祭って言うのはイエスが奇跡の起こして復活した五十日目に聖霊が降り立った日の事よ」


 「・・・そうなの?」


 「そうなの! 兎に角急いで! 何か起きてるのは確かだから」


 「わかったよ、仕方ないから鉄格子を斬るしかないか」


 クロウは刀を鞘から抜刀すると鉄格子を真横に斬りつけると刀を持ち直し上段から左斜めに切り落とし引き抜くと鞘へ刀身を静かに納める。鉄格子は一瞬、間を置き、カランと音を立て転がった。

 牢から出ると牢屋への入り口の鉄格子も同様に斬りおとし、一直線に階段に向かい駆け上がる。


 「さすが名刀だ、刃こぼれ一つ無い」


 そう呟くとヴェルフィーユの案内で魔力を感じる方向へ導かれる。


 「相手の魔力を辿ると言う事は、恐らく私の存在もばれてるわね・・・」


 「ばれると不味いの?」


 「クロウ、私は追われてるのよ、生まれたときからね・・・」


 「でも、大丈夫。どんな時も必ずクロウが助けてくれるから、だからもう逃げるのはやめるの」


 「どんな時も君を助けると必ず約束する。だけど今は姿は消していた方がいい」


 互いに話しながら走っていると、やがて大広間に突き当たる。そこには大勢の騎士、兵士、侍女達が眠っていた。

 クロウは騎士に駆け寄り叩き起こす。


 「おい! 起きろ! くそ、死んだように眠ってる」


 「クロウ眠りの魔法が掛けられてるのよ、術者を倒さないと目が覚めないわ」


 大広間の先に人影が見えたクロウは走り出す。ヴェルフィーユ不可視の魔法を掛け姿を隠し浮遊する様にクロウの後を追う。

 銀髪の髪が踊るように舞い走っている人物に追いつくとクロウは手を掴む。


 「ケイ! 何処に向かってる!」


 その言葉にケイは恐る恐る振り向くとそこには見た事の無い服装をした女性がいた。ケイは高圧的な態度で言葉を返す。


 「貴女は誰なの! 私を誰だと思ってるの! その手を放してもらえないかしら?」


 クロウは苦虫を噛む表情で訴える。


 「ケイ! 俺だよ! クロウだよ!!」


 ケイは驚き、赤面する。クロウはケイの肩を両手で掴むと質問を投げかける。


 「それよりケイ聞きたい事がある、一体何があった?」


 「実は、王を始め、皆で祝杯を挙げていたのですが、酒を飲んだ者は、皆一様に寝たままいくら起こしても起きないのです」


 「ケイ・・・自室に篭ってろ!」


 「嫌です! 円卓の騎士としてこの事態を見過ごすわけには行きません!」


 ・・・どうする、相手はおそらく・・・安達姫忠を連れているはずだ。

 ケイは強い、だけど恐らく敵わないだろう。

 味方は多い方がいいがケイは女性だ・・・くそ!他の円卓の騎士は何してるんだ!


 「ケイ! ランスロットやパーシヴァル、ガウェインはどうした?!」


 「皆、眠って起きません、私は酒ではなく葡萄の果汁を頂きましたので・・・アルコールは脳に悪いので飲まなかったのです。ただ見た事の無い侍女がアーサー王を連れて寝所の方向に向かったのを見かけたので後を追いかけてたのです」


 「なるほど・・・ケイは此処に残って皆を介抱してくれ!相手は危険だ!」


 「ですが!」


 クロウは珍しく感情的になって怒った!


 「ケイ! 君の事を想って言ってるんだ! 頼むから此処で皆を介抱してくれ!死ぬかもしれない事になる、君を巻き込みたくないんだ!」


 ケイはその言葉に素直に従うと大広間に戻って行った。戻りながら呟く、どうか御武運を・・・


 「ヴェルフィーユ、魔力を感じる方向に案内してくれ!」


 「わかったわ・・・」


 ヴェルフィーユの声に導かれて、豪奢な王宮へと足を踏み入れる、そのまま階段を駆け上がると寝所の部屋への道は階段に沿ってまっすぐ伸びていた。

 左側に扉が眼にはいる、ヴェルフィーユはクロウに一番奥の方から強い魔力を感じるわ!と言い放つ。

 更に奥へとクロウはひた走ると右側に扉が見えてきた。


 「此処か? ヴェルフィーユ!」


 ヴェルフィーユは不可視状態を解除すると頷き、再び姿を消した。

 クロウは扉のノブを回し寝所へと足を踏み入れた。

 部屋の中は、真赤な絨毯が引かれ、窓辺に天蓋付きのベット、傍に豪奢なテーブルに部屋の隅には大量の書物が本棚にびっしりと収められていた。壁には剣が飾られていて、すぐ下には暖炉があった。

 寝ているアーサー王の傍には侍女が、短剣を携えてが佇んでいた。何処からもなく声が響き渡る。


 「随分と長くこの日を待ちわびたぞ・・・漆黒の者」


 何も無い空間から黒いフードを纏った人物が姿を現す。


 「待っていただと? どういう事だ!」


 クロウは厳しい貌で言い放つと、黒いフードを纏った人物は歩き出しながら言葉を続ける。


 「マーリンと言う人物の体が必要だった、時を遡る事のできる魔力を得るには私だけの魔力では厳しいのでね、このマーリンと言う男は膨大な魔力を有してはいるが何分、人間とインプの間に生まれた者だ。魔力の使い方が下手すぎる。折角持ち合わせている魔力が勿体無いだろう?だから殺して奪った!この男は実に無能だった、亡くなったニムエと言う恋人を生き返らせてやろうと告げたら利用されてるとも知らず、力を貸してくれた、だから逢わせてやったのだ。ニムエの骨から魂の無い人形を作り出しマーリンと引き逢わせたのだ。するとどうだ?涙を流し喜びニムエを抱きしめた。その瞬間、愛するニムエ自身の手で心臓を抉りださせてやった」


 クロウは冷静に答える。


 「貴様・・・神になったつもりか!」


 黒いフードを纏った人物は更に愉しそうに言葉を続ける。

 「貴様の母親を故意に殺害し、この世界に貴様を導いたのは私だ! お前には、この世界に来てもらわないと困るのでな! 今宵は貴様に最高のプレゼントを用意してある。絶望と言う名のな」


 そう告げると漆黒のフードを被った人物は、骨を残し砂のように崩れ落ちた。部屋に男の声が響き渡る。

 「せいぜいと愉しんでいけ! 貴様を闇に落とす事は失敗したが、聖女を確認できたのは収穫だった」


 男の声が去った後、侍女がアーサー王に向かい短剣を振り下ろす。

 クロウは鞘から小柄こづかを引き抜くと侍女の手に投げつけた、小柄は侍女の手に刺さり短刀は床に転がった。

 異変にアーサー王は目を覚ます。どうやら魔法が解除されたようだった。

 侍女はアーサー王の傍から素早く離れるとゆっくりとクロウに向かい歩みだした。

 手からポタポタと血を流しながら、小柄を引き抜くと放り投げる。

 壁へと投げつけられた小柄は乾いた金属音をたて床に転がり落ちた。

 薄暗い部屋の中、蝋燭の明かりに侍女の姿は映し出される。

 赤いドレスを身に纏い、黒髪は艶やか光沢を放って胸元で揺れていた。

 瞳はクロウと同じ漆黒の瞳をしていた。


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