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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
三章 円卓に集う者
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禁忌の魔法

感想、指摘など、気軽にご意見頂ければありがたいです。

この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。

 キャメロット城の奥深く、幽閉されている青年は大きなあくびと共に朝早く目が覚める。


 「相変わらず、寒い・・・まぁ体を動かせば基礎代謝もあがって暖かくなるかな」


 昨日夕食と共にケイが差し入れてくれたバックから、鞘付きの木刀を取り出す。

 クロウは、木刀を床に置くと、朝日に向かい深々と礼をする、木刀を右手に持ち、つま先床に付きたてた状態でゆっくりと体を起こすとベルトの隙間に木刀の反りを下向きにし柄を押えながら差し込む。


 ゆっくりと木刀を引き抜くと一瞬にして真横に切りつけると、右手を返し両手で上段から自分のへその辺りまで打ち下ろす。

 摺足すりあしで狭い牢の中を歩いたり走り回ったりして体を暖めると、最後に木刀を納刀し、敵を想像しながら抜刀し斜めに切り上げ、右手を返すと両手でそのまま首を刎ねた。木刀を肩に掛け右斜めに振り下ろし血振りをすると静かに木刀を鞘へと収めた。

 突然、廊下から拍手が響き渡る。

 クロウは鉄格子の方に眼を向けると、そこにはリアが立っていた。


 「クロウ様、格好いいです! それはどういう剣技なんですか?」


 「なんだ、見てたの?」


 「はい! クロウ様、集中してらっしゃって話しかけても返事ないんですもの」


 リアが傍にいる事に気づかないほど集中してた自分に、本当に剣術馬鹿だなとクロウは思った。


 「リア、昨日はありがとう、一応ケイに託けてあるんだけど聞いたかい?」


 「はい。朝早くいらしてパーシヴァル様と私にクロウ様が礼を述べてたと伺いました、ですが、少しケイ様いつもと違う感じがしました」


 「ケイ様ね・・・やっぱり円卓の騎士だったか」


 そういうとリアは不思議そうな顔をして聞いてきた。


 「昨晩何かあったのですか?」


 「うん、リアの代理で随分と綺麗な人が来たけど、物腰といい洗練されてて侍女らしくないなと感じてね」


 その言葉を聞いてリアは頬を膨らました。


 「それって私が洗練されて無いって事ですか!? クロウ様!」


 「そういう意味じゃないよ、リアは可愛らしくて凄く女の子らしいけど、ケイ卿は動きに無駄が無かった、実に戦闘経験が豊富な感じがしたんだ、戦闘に置いて無駄な動きは命取りになるからね。効率よく体を動かさないと命に関わる問題なんだよ」


 その言葉にリアは照れながら、思い出したかの様に昨夜の出来事を伝える。


 「クロウ様、実は昨日パーシヴァル様がクロウ様の探し物を探して戻られた時、怪我をなさって戻られたのです。先程、目が覚めたパーシヴァルが言うには、赤い騎士にやられたと申しておられました」

 「赤い騎士?」


 リアは厳しい面持ちで言葉を続ける。


 「何でも、その赤い騎士はクロウ様と同じ剣技をお使いになられたとの事でしたが、なんとか仕留めたと申しておりました」


 クロウは顔を強張らせる。赤い騎士どういうことだ・・・パーシヴァル程の騎士に傷を負わせるなんて普通の居合レベルじゃまず難しい。俺以外にもこの世界に迷い込んだのか?何かが可笑しいとクロウは違和感を感じていた。


 「リア、パーシヴァルの容態はどうなの?」


 「傷自体問題ありません、一週間ほど安静にしていれば回復するとケイ様が仰っておられました」

 クロウは安心して顔を緩ませる。


 「そうか、なら良かった! 俺のせいでパーシヴァルに何かあったら申し訳が立たないから・・・」


 リアは俺の気持ちを察してか元気づける。


 「さぁ、クロウ様、朝食にしましょう! パーシヴァル様も朝食をおいしそうに食されてました。このステーキ肉を冷めないうちに頂いて下さい!!」


  そんなリアを見てクロウは口元を緩めると微かに微笑する。なるほど、パーシヴァルが手元に侍女として置いておきたい訳だ。

 リアは床に置いたサーバーを鉄格子の小窓から中に入れると料理の説明をしだした。


 「サラダにスープ、ステーキ肉です! ここで問題です、この肉は何の肉でしょう?!」

 クロウは見た事の無い肉質に眼を近づける、おいしそうな匂いが鼻孔を擽る(くすぐる)。


 「んー見た事無い肉だなぁ・・・リアこの肉なんの肉?」


 「兎ですけど? クロウ様は食べた事が無いのですか?」


 「ウサギ・・・・・」


 あの愛らしい兎か、月には兎さんがいるんだよ~! なんて母さんがよく言ってたなぁ。そんな風に思いながら食べてみるかと思い恐る恐る口に運んでみた。


 「!? ・・・うまい、リア旨いよこれ!」


 あっという間に全て平らげると、いつもの様に手を合わせる。

 鉄格子からサーバーをリアに受け渡すとリアはにっこり笑い去って行った。

 

 リアが去って行った後、クロウは脳裏に一つの考えを抱いていた。


 「うちの流派を使う赤い騎士、持ち去られた骨壷、そして黒いフード人物、材料は揃ってるが死者を生き返らせるなんて可能なのか・・・魔法を使うヴェルフィーユなら知ってるかもしれないな」 


 そう呟くと再び立ち上がりクロウは体を鍛え始めた。

 

/


早朝、皆がまだ目覚める前、ランスロットは寝所を出て自室に戻ると、シャワーを浴び匂いを洗い流しながら俯き呟く。


 「・・・いつまでもこれを繰り返すのは好ましくないな」


 その瞳は愁いを宿していた。

 シャワーを浴び終えるとランスロットは、着替えを済ますとパーシヴァルの部屋に向かった。

 部屋の前まで来て、ノックをする。


 「パーシヴァル、容態はどうだ? 入るぞ!」


 「ランスロット様どうぞ中へ」


 部屋の中は綺麗に整理されていた。

 丁度四人が掛けれそうな円形のテーブルと椅子があり、部屋の隅には膨大な本が並んでいた。出窓には花瓶がありバラの花が活けてあった。出窓付近にベッドがあり、パーシヴァルは寝ている様だった。

 ランスロットはベットに向かうと椅子に掛ける。


 「調子はどうだ?パーシヴァル・・・」


 「大した事ありません、ケイ様が仰るには一週間程度安静にしていれば治るそうです」


 ランスロットは心配した顔で問いかける。


 「一体何があった? お前程の手練が痛手を負うのは実に信じがたい」


 「その事で、お話があったのです、クロウ様に託って落雷の落ちた場所へ探し物を探索していたのですが、城へ向かう最中、赤い騎士と出会ったのです、その者は騎士として名乗りもせず剣をこちらに向けてきたのです。そこまでなら珍しい話でもないのですが、その騎士はクロウ様と同じ剣技を繰りだしたのです。ランスロット様とクロウ様の戦いを見てなければ恐らく今、私は此処にはいなかったでしょう」


 「クロウと同じ剣技だと! 異界の者・・・か、しかし甲冑姿なのは何故だ、何処かの騎士なのか?」


 「おそらく誰かに仕える騎士でしょう、しかもその騎士は女性でした」


 「ほう・・・で討ち取ったのか? パーシヴァル」


 「はい。手加減できる相手ではありませんでした」


 「お前が無事であったならそれでいい、暫く静養しておけ。お前を失うと私も困るからな」


 「勿体無いお言葉、痛み入ります」


 そういうとランスロットは部屋を出て行った。

 自室に帰る途中、侍女のリアに偶然出くわした。

 リアは膝を付き畏まると頭を下げる。


 「ランスロット様、我が主のお見舞い恐悦至極にございます」


 「いや、無事で何よりだ。リア、パーシヴァルを宜しく頼む」


 「はい、お任せください」


 満束そうな顔でランスロットは自室に戻っていった。

 自室に戻るとランスロットはベットに横になり赤い騎士について考えていた。


 「異界の者か・・・一体どこから来ているのだ」


 そう呟き朝も早かった事でランスロットは深い眠りに入っていった。

 

/


 王宮の謁見の間での事、グィネヴィア王妃はアーサー王に向かい進言していた。


 「アーサー。どうか地下牢にいる青年を牢から出して頂けないですか?」


 「何故、その様な事を申すのだ、グィネヴィア?」


 「彼は罪を犯した訳では無いではないですか・・・」


 「わかっておる。だが信用に値するかどうか見極めねばならぬ、その日が来れば、いずれ牢から出す事も考えておる」


 「せめて、牢ではなく円卓の騎士同様に宮廷の部屋を与えてあげて下さい・・・」


 その言葉にアーサー王は傍に控えている黒いフードの人物に問いただす。


 「・・・マーリンどう思う?」


 「得たいの知れない輩です、まだ時期では無いでしょう。暫くは現状維持で宜しいかと存じます」


 「そういうことだ。グィネヴィア、この話は仕舞いにする。わかったな」


 そう告げると、アーサー王は謁見の間を出て行った。

 グィネヴィアは唇を噛み締めていた。


/


 クロウは夕食を終え、いつもの様に壁にもたれ片膝を抱えて誰かを待っているように小さな鉄格子からこっそり貌を出す月を見上げていた。

 すると頭上に蛍の光に似た小さな光の粒がひらひら落ちてくる。

 次第に集まり人の形を模ると、一瞬強い光を放つと光の中から人が姿を現す。


 「待ってたよ、ヴェルフィーユ」


 その言葉にヴェルフィーユは頬をほんのり赤く染め、クロウの隣に腰を下ろした。


 「待っててくれたの? クロウ」


 「うん、君に逢いたかったのもあるけど聞きたい事もあってね。でもやっぱり君に逢いたいのが一番の理由かな」

 ヴェルフィーユは照れながら言葉を返す。


 「クロウ、変わったね。もう瞳に黒い影が無くなった」


 「君が助けてくれたから・・・」


 「それは違うわクロウ、貴方は自分の力で勝ったの、私はただ背中を押しただけ、過去を振り切ったのは貴方自身の力」


 「俺にはもう何も無いと思ってた、でも確かな物があったんだ。誰かを守りたいって言う気持ちが、母さんを助けられない自分が憎くて、気が付いたら自分を憎んでた」


 「でもそれは間違いだと気づいたんでしょ、それだけでも大きな違いよ」


 「そうだね、実際母さんを殺した奴は、あの人じゃなかった。大きな過ちを犯す所だった。君が教えてくれたんだヴェルフィーユ、君が・・・」


 クロウは自分が羽織っている毛布の中にヴェルフィーユを包み込む。


 「風邪を引くといけないから・・・」


 ヴェルフィーユの貌は高揚して紅葉の様に染まっていた。


 「ねぇ、クロウ聞きたい事って何?」


 「実は昨晩、友人が俺と同じ剣技を使う騎士に怪我を負わされて、療養中なんだ、その友人に手傷を負わせれる人間は家の門弟にはいないからさ、他にも此処に迷い込んだ人間がいるのかなって考えてたりしてるんだけど」


 「それはないわ・・・」


 クロウはそう言いきったヴェルフィーユを見つめる。

 「どうして?」


 「クロウにはまだ秘密」


 クロウは困った顔をし話を続ける。


 「じゃぁ俺以外の人間がこの世界に迷い込んでない事を前提で考えるよ。例えばの話なんだけど、無くなった人間の骨を使い死んだ人間を生き返らせる方法ってあるのかな?」

 ヴェルフィーユは貌に緊張が走る。


 「クロウ何故そんな事を聞くの!? 死者を生き返らせるのは神への冒涜なの!」


 「ヴェルフィーユ落ち着いて聞いて、ヴェルフィーユも知ってると思うけど母さんを殺した人物は覚えてるよね?」


 「うん・・・クロウの深層過去で見たわ」


 「直接手を下したのはあの人だったけど、あの人は操られてただけだった」


 「どういう事なの?」


 「俺がこの世界に迷い込む前、夜中に霧がたちこめて不審を感じた俺は母さんの墓に向かったんだ、そこには母さんを殺した人物と、黒いフードを被った人物がいたんだ、母さんを殺した人物は、男が呪文を唱えると塵の様に姿を消したんだよ、そう緑の騎士の様にね。そして黒いフードの人物は俺の古い先祖の骨壷を携えて霧の中に姿を消したんだ」


 ヴェルフィーユは考え込んでいる様子だった。


 暫くして口を開くと衝撃的な言葉を口にした。


 「クロウ、結論から言うと特殊な物があれば可能だわ。例えば、聖遺物を媒体にして人間を構築する元素を集めれば不可能じゃないわ・・・でも例え復活できたとしても過去の記憶を持たない、ただの死人と同じ扱いになるわ」


 「それって生前の記憶を覚えて無いって事?」


 「そうなるわ、命じたままに動く死人だけど生命活動はしてるから表向きには人間と変わらないの、ただ生きてた頃の記憶が無いだけ」


 クロウは一つの結論に行き着く。


 「そう仮定すると安達姫忠しかありえないか・・・」 


 「アダチヒメタダ?」


 ヴェルフィーユは難しい貌をして悩んでいた。


 「発音しにくいんだろうから無理に理解しなくていいよ、俺の家の始祖って事」


 「赤い騎士の姿をしてたのも髪と瞳が黒いから、目立ちすぎると推測できるし、納得できる」


 「どちらにしろ、いつかは黒いフードの人物と相見えるのは確かだよ。緑の騎士の件もあるし奴が此処にいるのは間違いなさそうだ」


 不意に金糸が頬を擽る。クロウに寄り掛かりヴェルフィーユ寝息を立てていた。

 そんなヴェルフィーユをみてクロウは呟く。


 「君はいつも突然現れて俺が気が付けば消えてるね、本当神出鬼没のお姫様だ。だけど初めて会った時、俺は君に始めましてと言わなかった理由が今になってわかるよ。母さんが殺された日、君は確かに俺の傍に居たんだから・・・」


 優しく微笑むとクロウも眠りに付く事にした。

 翌朝、目覚めるとやはりヴェルフィーユの姿は何処にもなかった。

 それから三ヵ月の間、クロウはヴェルフィーユの姿を見る事はなかった。


 

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