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封印聖女×刀ヲ継しモノ  作者: 檜高 黎
三章 円卓に集う者
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逢瀬と恋に落ちた貴婦人

感想、指摘など、気軽にご意見頂ければありがたいです。

この物語はフィクションであり、作者自身、初めて書く作品ですので読んで下さる皆さんの意見をお聞かせ下さい。厳しい指摘も歓迎しております。

 夕闇が迫る頃、王宮の一室に二人の人影があった、窓から差し込むオレンジ色の光は顔を映し出す。

 その顔は互いに憂いに満ちた顔をしていた。


 「グィネヴィア王妃、どうか私の願いを聞いて頂けないか」


 「何故です・・・ランスロット。何故あの者を助けようとするのですか!」


 ランスロットは、グィネヴィア王妃に近づくと抱きしめる。


 「あの者は、才ある者です、このまま牢に閉じ込めておくのは国の損失になります・・・どうかアーサー王に進言して頂きたいのです」

  

 グィネヴィアはランスロットの耳元で艶かしく囁く。


 「解りました、アーサー王に進言しましょう。その代り今夜、私の寝所に来て下さい」


 ランスロットは悲哀に満ちた瞳をし言葉を返した。


 「わかりました・・・グィネヴィア王妃・・・」


 グィネヴィアは、ランスロットを見つめると問いかける。


 「ランスロット、何故、悲しげな瞳で、私を見つめるのです・・・」


 「・・・いえ何でも無いのです。夢の事を思い出してしまっただけの事です」


 「そうですか、なら良いのですが、余り無理をなさらないで下さい。私はもう貴方なしでは生きてゆけないのですから」

 

 グィネヴィアは、そう呟くとランスロットを優しく抱きしめた。

 抱きしめられているランスロットは、城内が騒がしくなっている事に気がついた。


 「グィネヴィア王妃、どうやら城内で何か遭った様です。今夜、寝所でお待ちしておいてください。必ず伺いますので」


 そう告げたランスロットは踵を返し扉の外へ向かう、グィネヴィアは静かに頷くと、ランスロットの背中を愛おしそうに見送った。

 

/


グィネヴィアとランスロットが逢瀬をしていた少し前、パーシヴァルはどうにか城に着く。

 パーシヴァルの脇腹から血がポタポタと伝い落ちる姿を見た兵士は、急いで開門し、馬から下ろすと担架に寝かせ城内に運び入れる。

 城内に運び入れると、すぐに異変に気が付いた侍女のリアは泣きそうな顔でパーシヴァルへ駆け寄る。


 「パーシヴァル様、死なないで下さい! どうかお気を確かに!」


 その姿を見て、パーシヴァルは、やれやれ困った娘だと複雑な顔で微笑する。


 「安心しなさい、死にはしない。それよりこの袋をクロウ様に届けてくれないか?リア」


 「わかりました! 必ずお渡しします!!」


 パーシヴァルは安堵し意識が遠のいた。そして自室に運ばれていった。

 

 王宮から降りてきたランスロットは、城内の騒動について侍女を捕まえると抱き寄せた。


 「マドモアゼル、一体何があったのだ! 教えてくれないか?」


 侍女は余りの出来事で慌てふためく、目の前には黒髪をなびかせ、憂いに満ちた碧瞳で自分を見つめるランスロット卿がいた為だった。

 余りの美貌に心臓が鼓動を速め破れそうになったのだ。


 「あのっ・・・パーシヴァル様が、怪我をなされて戻られて・・・自室に運ばれて・・・行きました・・・」


 詰まりながら懸命に声を絞り出し終えると、侍女は腰が抜けてしまった。

 その様子を案じてランスロットは、兵士を呼び寄せると丁重に介抱するように託けてパーシヴァルの自室へ急ぎ向かった。

 パーシヴァルの自室に辿りつくと、勢いよく扉を開けパーシヴァルに歩みだそうとした。


 「パーシヴァル!!」


 次の瞬間、ランスロットは顔が凍りついた。そこにはケイ卿がいた為だった。


 「ランスロット卿、騒がしいにも程がありますよ」


 「・・・申し訳ない・・・パーシヴァルが怪我をしたと伺った物で・・・ね」


 「死に至るような傷じゃありません、今縫合している最中なので静かにしていて貰えませんか」


 「それで、パーシヴァルの容態はどうなのですか?ケイ卿・・・」


 「今は気を失って眠っています、縫合するには丁度よかったです」


 「そうですか、ケイ卿、パーシヴァルをお願いします・・・」


 「言われなくともわかっています。先程もガウェイン卿が勢いよく来られましたが邪魔になるので追い払いました」


 ランスロットは安心すると、パーシヴァルをケイ卿に任せて出て行った。

 自室に向かい、歩き出すと大広間から声が聞こえてくた。


 「あの、女狐め! 何だあの口の聞き方わ! もう少し可愛くなれぬのか!」


 ランスロットは声の主に話しか掛ける。


 「ガウェインどうした?何を怒っている?」


 振り返りランスロットを見るや否や、ガウェインは詰め寄ってきた。


 「ランスロット! お前は腹が立たないのか! ケイ卿の態度に! なんだあの見下す態度は!」


 「いや、ケイ卿はそういう性格なのだ、仕方ないではないか。アレほどの美貌と知識を兼ね揃えているのだ仕方あるまい?」


 ランスロットがそう言うとガウェインは憤慨する。


 「だから男が出来ぬのだ! アレで可愛らしかったらそれはそれで・・・怖いかも知れぬ・・・」


 「だろう? まぁかく言う私も苦手ではあるのだがな・・・貴公の事は言えぬな」 


 二人が笑って話していると、後ろから殺意が漂ってきた。恐る恐る振り向くとそこには、銀色の長い髪を左肩で結わえた。薄翠の瞳に、眼鏡を掛けた人物が、袋を一指し指でくるくると回しながら冷ややかな眼で見つめていた。


 「ケイ卿・・・パーシヴァルの容態はいかがでした・・・?」


 「今は良く眠ってます、明日には目が覚めるでしょう。後の事は侍女のリアに任せました。で、お二人は何の話をしてらしてるのかしら?!」


 ランスロットとガウェインは、二人揃って競い合うように、その場を足早に逃げ出した。

 互いに大広間を抜け、一目散にガウェインの部屋に逃げ込むと大きく息を吸い込んだ。


 「死ぬかと思ったわい!」


 「まったくだ・・・寿命が縮まるかと思った」


 双方顔を見合わせると笑い出す、声を揃えて言い合った。


 「アレでは男を捕まえるのは無理だな!」「アレでは無理じゃろうな!」


 ランスロットが窓辺に目を向けると、日が暮れ外は暗闇に包まれていた。

 王妃との約束を思い出したランスロットは、自室に戻ろうと足を向ける。


 「どうじゃ? 一杯やっていかぬか、ランスロット?」


 「すまん、ガウェイン今日は用事があってな。そろそろ戻らねばならぬ」


 「そうか、では次回にするかの! 女狐に見つからぬように部屋に戻れるといいがな!」


 笑うガウェインに背を向け、ランスロットは軽く手をあげ出て行った、その瞳は憂いに満ちていた。

 

/


ランスロットとガウェインが一目散に逃げ出した後、銀髪の美女は、リアから頼まれた袋を携え、夕食を持ち地下牢へと歩みを進めていた。

 侍女達が制止したが、ケイ自身見ておきたかったのだ。宮廷に噂される円卓の騎士二人と渡り合った、漆黒の瞳をした不吉な人物に。

 自らも円卓に名を連ねる者としては、純粋に興味があったからだった。

 壁に沿って両側に蝋燭の明かりが薄暗い道を照らし出している。

 ケイは階段を降りて行くと、鉄格子の前に牢兵が立っていた。

 牢兵はケイに気づくと片膝を付き頭を垂れる。


 「ケイ卿。この様な所に御用で御座いますか?夕食なら私達で運びますが?」


 「今すぐに鍵を開けなさい!!」


 牢兵の手によって牢屋への鉄格子の扉が開かれる、中に入ると漆黒の者と噂される人物の元へ歩みを進める。


 カッカッカと、


 小刻みに靴音を鳴らしながら歩みを進めると突き当たりに微かに蝋燭の光に照らし出されている牢屋が目にはいる。

 あそこにいる人物、それが円卓の騎士を退けた漆黒の者か、ケイは不安に駆られながら恐る恐る近づくとそこには、一人の青年が片膝を抱え壁を背に寝ていた。月明かりが青年を浮かび上がらす。

 その姿を見たケイは一瞬で心を奪われた。

 なんとも形容しがたい今までどんな人物にも感じた事の無い独特の雰囲気を醸し出した青年に。

 今まで体験した事の無い速さで胸が高鳴る。

 青年は人の気配を感じて静かに目を覚ます。ケイに向かい顔を向けると話し掛ける。


 「こんばんは、夜はリアじゃないんですね?」


 ケイは、珍しく当惑した。


 「ええ・・・侍女の代理で夕食を持って来ました・・・」


 「そうですか、もう夕食の時間ですか? いつの間にか眠っていたので気づきませんでした」


 真直ぐケイを見つめる青年の瞳をみて素直に言葉が溢れ出る。


 「綺麗な瞳・・・・・・」


 その言葉に青年は嬉しそうに言葉を返す。


 「貴女のその銀髪も凄く綺麗です、眼鏡も良くお似合いです」


 ケイは頬を桜色に染め俯いてお礼を述べる。


 「ありがとう・・・ございます・・・」


 膝を付き鉄格子の隅の小窓から食事を差し出すと、リアから頼まれた袋も一緒に差し入れた。

 青年は袋を見ると喜んでお礼を述べる。


 「ありがとうございます! 私はクロウと言います。貴女の名前を伺いたいのですが聞かせてもらえますか?」


 「クロウ様、私はケイと言います」


 ケイは終始俯いていた、目を合わせていられないからだ。


 「ではケイ、パーシヴァルとリアにお礼を伝えて頂けませんか? こんな状況なので自ら赴く事が叶わないので、貴女には失礼だと思いますが、どうか二人にありがとうと伝えて欲しいのです」


 「わかりました、伝えておきます・・・」


 小声で答えるとケイは走り去って行った。

 鉄格子の扉を潜り抜け、全速力で自室に戻って、ベットにうつ伏せになり呼吸を整えてから冷静さを取り戻すと呟く。


 「地下牢には・・・本当に気高い怪物がいたわ、何だろうこの気持ち・・・」


 ケイから溜息が紡ぎだされる。

 自分の気持ちが理解できないまま、その晩は過ぎて行った。

 

/


 深夜、皆が寝静まった時刻、王宮のとある寝所に向かうランスロットの姿がそこにあった。

 その貌はやはり、憂いに満ちていた。 

     

    

 


  

 


 

 

  



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