0.3
暗闇に落ちていく、夢を見ている。手を伸ばしてクジラに触れる。炎に旗を掲げ、後方で銃を構えた。圧倒的な権力と、狂気的な知略で、我が国へ貢献しようと、俺は殺されていた。
愚者はより強い才覚で貫かれ、妖艶に笑う女神が愛を誓う。勝利の女神、均衡の女神、敗北を冠する戦士達の亡骸。
「大昔から決まっていた...戦争の最後は...。」
天から降る雨が...血の涙となって終わるのだと。
「君も、軍に居たのか?」
寝て醒めた、ディスコミュニケーション。深夜と提唱できない夕暮れ。上体を起こして、誰かが応えないだろうかと言葉にしてみる。
「私ですか?いいえ?それより貴方は、どうして此処に?」
「知っているんじゃないのか?」
「私は貴方が幽閉される数ヶ月前には、もう檻にいましたからね〜。」
何故か誇るような顔をされる。椅子に座って本を読んでいたらしい。分厚い、芥川龍之介の名が施された表紙に、少し寒気がした。
「...。」
立ち上がることをやめて、ベッドの上に脱ぎ捨てていたコートを軍服の上に羽織る。そのうち、この服も囚人服に変えられてしまうのだろうか...。軍人にしては細い手足を、宥めるように思わず抱きしめた。
「そういえば、青鴉准尉は何歳なんですか?」
「...准尉はやめてくれ。」
「じゃあ、雨は何歳なんでしょうか?」
雨...。思わず、フリーズしてトウを睨んだが、彼は凛とした表情のまま、柔和に笑ってみせてくる。
「24歳...。」
「ふーん、私より3つ下...か...。」
そう言って、しばらくて、トウがパラリと本のページを捲る。俺は手持ち無沙汰に、隣の監獄を見た。
「彼女は...?」
「ああ...人形には興味がないので。」
そう言って、溜息をつくとトウは本を閉じて、じっと俺を見た。楽しそうな笑顔、本を読んでいたからか、薄いフレームのメガネを掛けている。
「人間に興味があるのでね。」
「そうか...。」
「貴方は、噂には残虐な人間だったと聞くが、こう見るとだいぶ違うようだ。」
「そんなこと...。」
俺は顔を伏せる、そして首を振って自嘲した。
「ヒトラーだって我々と同じ心があった。」
「ああ。」
「俺だって、君と同じように思考する。」
少し嫌そうな顔をして、トウが目を逸らす。1億年前の地球に、誕生した人類も同じように、コンピュータグラフィックスを様式とした。
半導体は、64bitのケースに仕舞い込み、懐古の姉妹と手を取り合い、核融合を実験場にて披露する。
「明日から、君はもう囚人だ。」
「...。」
少し違和感を覚えて、トウを見つめた。
「敬語をやめたのか?」
「...。」
トウがニヤリと笑う。切れ長の瞳が、更に細められる。整った顔だからか、余計に恐怖が増した。
「もう、雨は人間なんだろう?」
「...。」
戸惑って、唇を噛む。息を吐いて、閉じ込められた我が身を呪い、そして安心してしまう。
「でも...これでもう...。」
誰かを殺すための設計図なんて作らなくて良いのだから。俺はようやく、人間になれたんだと。
ふと、光を帯びた鉄格子を見て想った。
1日遅刻しました...部署配属されてから、残業はないけど忙しい...(;;)
青鴉くんが完全に橙にマークされましたね...可哀想に。狭い監獄で刺激に飢えている、橙にとっては格好の獲物です。
彼らがどうなっていくのか...そして未だ、虚空を見つめるばかりの少女は、何者なのか...。次回に続きます!




