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第7話:汚泥の証言と、塵積もる足音

 朝の光が書斎の窓を白く染める前に、一通の手紙が届いた。


 差出人の名前はない。

 だが、封を閉じた蝋の色が、薄い青灰色だった。フロード補佐官が使う色だと、シリルが昨夜のうちに教えてくれていた。


「……届きましたわね」


 私は手紙を受け取り、封を開かずシリルへと渡した。

 毒物検査は、彼の担当だ。


「問題ございません」


 シリルが三十秒ほど封筒を観察してから言った。

 私はその間、窓の外の庭を眺めていた。


 秋の朝は、ひんやりと静かだ。

 昨夜の風が落ち葉をまとめてどこかへ持ち去ったのか、庭石の上が妙に清潔に見える。


「では」


 私は封を開いた。


 中に入っていたのは、四枚の紙だった。

 整然とした筆跡で、数字が並んでいる。


 ――財務記録の差分。


 フロード補佐官が、十二年かけて記録してきた、原本と写しのずれ。


 私はそれを机に広げ、シリルと並んで覗き込んだ。


「……丁寧な仕事ですわね」


 数字の列は、三つの項目に分かれていた。

 北部軍備費。王都外郭工事の予算枠。そして――王室慶弔費。


「慶弔費の欄に、見慣れない商会名がありますわ。シリル」

「はい。『セドゥン商会』。王都には登記のない、名前だけの商会です」


 私の指が、その一行で止まった。


(セドゥン商会。どこかで聞いた名前……いいえ、聞いた名前ではなく、嗅いだ名前、ですわ。腐敗の匂いのする)


「調べましたか」

「昨夜のうちに。セドゥン商会の送金先は、国内には存在しません。……隣国経由で、海沿いの小さな港へ流れています」


 シリルがもう一枚、別の書類を机に置いた。


「港の名前は――フォル・ネビュラ。隣国の、霧の港と呼ばれる場所です」


 私は少しの間、その名前を眺めた。


 霧の港。

 霧はカスミと似ている。実体がなく、見えているようで見えない。


「……窓の外が、随分と近くなりましたわね」


 私は静かに言った。


「セドゥン商会はガルベス子爵の資金洗浄先、そしてその終着点がフォル・ネビュラ。ドレインの水が流れ着く場所がそこだとすれば――」


「第一章の汚れは、第二章の舞台と繋がっている、ということになります」


 シリルが静かに続ける。

 私は答えず、窓の外の庭をもう一度眺めた。


 清潔に見える庭の地面の下に、排水管が通っている。

 私たちは今、その管の入口を調べている。出口は、遠い霧の港にある。


「今は、まだ国内の仕事を片付けますわ」


 私は書類から目を離し、手袋の端を一度だけ整えた。


「スラッジ書記官の問題が先です。管の出口より、詰まっている箇所を先に直さなければ、いくら流しても逆流するだけですもの」


「かしこまりました。……ところで」


 シリルが、珍しく少し間を置いた。


「フロード補佐官から、もう一点情報が来ております。手紙に同封されていた別紙です」


 私は彼が差し出した小さな紙片を受け取った。

 そこには短く、こう書かれていた。


   『スラッジが昨夜から出仕していない。理由は体調不良とのことだが――私は信じていない。動きが早くなっています。急いでください。――F』


 私は紙片を机に置いた。


「……スラッジ書記官が、消えようとしている」


「あるいは、消されようとしているか」


 シリルが低い声で言った。


 私は立ち上がった。


「リタ、外出の準備を」


 廊下から、チャキッと金属の澄んだ音がした。


   * * *


 ロムルス・スラッジ上席書記官の自宅は、王都の東側、中級官吏が集まる区画にある。

 石造りの落ち着いた家並みの中で、スラッジの家だけが――少し、様子がおかしかった。


「……玄関の鍵が、外から閉まっていますわ」


 私は馬車の中から家を観察しながら言った。


「内側ではなく、外から。つまり、本人は外に出られない状態か、あるいは既に中にいない、ということですわね」


「昨夜の時点でリタが下見しておりましたが――住人の気配が、窓の明かりの動きから著しく減少していたとのことです」


「住人の気配が著しく減少」


 私は静かに繰り返した。


(出仕しない。玄関が外鍵。気配が薄い。……これは自発的な逃走ではなく、誰かに動けなくされた可能性がありますわ)


「リタ」


 私は視線をリタへ向けた。


「裏手から入れますか?」


 リタが一度頷く。


「先に確認してくださいな。……私は、正面から参りますわ」


 シリルが僅かに眉を動かした。


「正面から、とおっしゃいますと」

「官吏の自宅への礼儀正しい訪問ですわ。問題があって?」


「……ございません」


 シリルが深く一礼した。


   * * *


 私が玄関の呼び鈴を鳴らすと、しばらく間があって、内側から錠の外れる音がした。


 扉を開けたのは、初老の家政婦らしき女性だった。顔色が悪い。目が赤い。


「ヴィクトリア家のクレアと申します。スラッジ書記官に、国王陛下からのご伝言を届けに参りましたわ」


 嘘ではない。私は国王から特命を受けた「掃除人」であり、今ここに来ることは陛下の意向の範囲内だ。


 家政婦は少し迷った後、扉を大きく開けた。


「……どうぞ、お入りください。旦那様は、その……二階の寝室に」


「ありがとうございます」


 私は家政婦の顔色を一瞥した。恐怖。疲弊。そして、誰かに助けを求めたかったのに求められなかった人間の、安堵に似た表情。


 玄関ホールに入ると、裏手から音もなくリタが滑り込んできていた。

 彼女は私に向かって首を縦に振り、次に手のひらを軽く上に向けた。

 ――中に対象あり。生存している。


(よかった。間に合いましたわね)


 私は家政婦を振り返った。


「二階へのご案内を」


   * * *


 スラッジ書記官は、寝室のベッドに横たわっていた。


 四十二歳のはずだが、今は六十代のように見えた。顔は土色で、呼吸は浅く、意識が半分霞んでいる。


「……なにか、飲まされましたわね」


 私は枕元に近づき、書記官の手首を取った。脈は弱いが、あった。


「リタ」


 リタが扉を閉め、窓の外を一度確認した後、私の隣に立つ。

 私はリタの目を見た。


「解毒薬。馬車の中の救急箱に、緩慢毒の中和剤がありますわ。取ってきてくださいな」


 リタが無言で踵を返した。


 シリルが枕元の薬湯の瓶を取り上げ、匂いを嗅いだ。


「……スラリ草の抽出物ですね。直接の毒性は低い。ただし、長時間摂取させると意識を曖昧にさせ、記憶に混乱を生じさせます」


「記憶の混乱」


 私は静かに言った。


「証言を封じるための薬、ということですわね。殺すためではなく、話せなくするための」


(殺されなかったのは、消えてもらうより無力化させておく方が都合よかったから。スラッジ書記官は汚泥スラッジ――詰まらせておけば、情報が外へ流れない、という計算ですわね)


「……シリル、この家を昨夜から誰かが出入りした痕跡は?」


「裏手の窓枠に、引っかき傷が新しいものが一本。ただし、痕跡はそれだけです。慣れた者の仕事ですね」


「薬を盛ったのは昨夜、ということかしら」


「あるいは、一昨日の夜から段階的に。スラリ草は少量なら判別が難しいので」


 私はもう一度、書記官の顔を眺めた。

 歪んだ顔の中に、フロード補佐官の言葉がよみがえる。


 ――最初は小さな謝礼から始まって、気づいた時には引き返せなくなっていた。


(この人間は、自分で自分を泥の中に沈めていった。だが、沈められている間も、泥の外に出たかったかどうかは――今の私には分かりませんわ)


 判断するのは私の仕事ではない。

 私の仕事は、この汚泥を適切な場所へ引き渡すことだ。


 それだけだ。


 リタが戻ってきた。

 手には小さな薬瓶と、清潔な布。


「ありがとう」


 私は薬瓶を受け取り、書記官の口元に慎重に含ませた。

 白い手袋の指先が、書記官の顎に触れる。


 その一瞬、かすかな――ほんの、刹那の違和感があった。

 自分の手の感触ではなく、手袋の外側から伝わってくる温度。人の、体温。


 私はすぐに手を引いた。


(……何でもありませんわ)


 扇子を取り出し、ゆっくりと風を作る。


   * * *


 三十分後。

 書記官の顔色が、僅かに戻ってきた。


「…………ぁ」


 かすれた声が、寝室に漏れた。


「気がつきましたか」


 私は椅子に腰掛けたまま、静かに言った。


 書記官の目がぼんやりと開き、私を見た。

 焦点が合わない。だが、形だけは意識がある。


「ヴィクトリア家のクレアと申します。あなたを助けに来ましたわ」


「……なぜ」


 絞り出すような声だった。


「なぜ、貴女が」


「私はおそうじをする人間ですの」


 私は静かに答えた。


「あなたは確かに、この十二年間、染みを作り続けた。ですが今、あなたを沈めようとしている汚れは、あなたよりも深く、広い。……そちらを先に片付けなければ、あなたのお掃除の順番は回ってこないのですわ」


 書記官がぼんやりと私を見ていた。

 やがて、その目から、何か薄いものが滲んだ。


「……私は、十二年間」


「今は話さなくてよろしい」


 私はさえぎった。


「体力が戻ってから。聞くべきことは、全部お聞きします。……それまでは、安静になさっていてくださいませ」


 書記官は何か言おうとして、やめた。

 やがて目を閉じ、今度は自然な、深い息で眠り始めた。


 私は立ち上がり、シリルへ向き直った。


「この家に、王城の衛士を二名。国王陛下直属の、信頼できる者を」

「手配済みです。フロード殿が推薦した二名が、既に周辺に配置されています」


「……フロード補佐官は、本当によく動きますわね」


 私は小さく息をついた。


「汚れていない人間というのは、こういう時に大変役に立ちますわ」


「エコでありますね」


 シリルが笑顔で言った。


「……あなたは今、ものすごく嫌なことを言いましたわよ」


「お褒めの言葉として受け取ります」


   * * *


 昼過ぎ、書記官の容態が安定したことを確認してから、私たちはスラッジ邸を出た。


 帰りの馬車の中、私はシリルの報告を聞いた。


「今回の件、ガルベス子爵の直接指示の可能性は?」


「高いと見ます。ただ、スラリ草の調達ルートが興味深い。王都の薬草問屋ではなく、隣国の商人経由で入ってきているようです。……ドレインの物流ルートが使われた可能性があります」


「ドレインが直接動いた、ということかしら」


「あるいは、ガルベス子爵がドレインの物流を借りた、か。いずれにせよ、スラッジ書記官の口を封じることを、複数の勢力が共通利益として認識していた、ということになります」


 私は馬車の窓から外を眺めた。

 王都の往来は、今日も変わらず穏やかだ。


「共通の利益のために、別々の汚れが協力している、と」


「はい。ゴミの分別を超えた協力関係、といいますか」


「分別できないゴミ、ということですわね」


 私は扇子を開いた。


「可燃でも不燃でもなく、有害物質。……扱いには、慎重を期す必要がありますわ」


 シリルが微かに頷いた。


「スラッジ書記官が意識を回復し、証言ができる状態になれば――ガルベス子爵への直接的な証拠が揃います。そこで初めて、正式な『回収』が可能になりますね」


「ええ。……その前に、もう一手打ちますわ」


 私は扇子を閉じた。


「ダスト侯爵家のことが、気になりますの」


「と、おっしゃいますと」


「フロード補佐官の財務記録に、セドゥン商会の名前があった。セドゥン商会はガルベス子爵の資金洗浄先。ならば、なぜその記録に――」


 私は言葉を一度切った。


「ダスト侯爵家の傍系事業の名前が、三度も出てくるのかしら」


 シリルが目を細めた。


「……確認されましたか」


「ええ。朝の書類の中で。あなたも気づいていたでしょう?」


「……はい」


 シリルが、珍しく即座に認めた。


「ダスト侯爵家の傍系事業――『ラフス織物商会』と、セドゥン商会の間に、三度の送金記録があります。金額は少額ですが、時期が……」


「ガルベスがフォル・ネビュラへ送金した時期と、ほぼ一致する」


「おっしゃる通りです」


 馬車の中に、一瞬の沈黙が落ちた。


ダスト汚泥スラッジ。二つの汚れが、同じ水路カスミを使って、同じ港へ流れ込んでいる。……これは、単なる偶然ではありませんわね)


「シリル、この情報は当面、私とあなたとリタだけで持ちますわ。フロード補佐官にも、まだ明かさない」


「ご意向は?」


「モモ・ダスト嬢が、この件に絡んでいるとすれば――彼女は今もまだ、第一王子の傍にいる。……証拠のない状態で動いて、先に彼女に察知させれば、ダストはどこかへ消えてしまう」


 私は窓の外へ視線を向けた。


「塵というのは、揺らすと飛び散りますの。静かにしておいて、あとでまとめて払った方が確実ですわ」


「……かしこまりました」


 シリルが一礼する。


「なお、スラッジ書記官の意識回復は、本日夕刻以降かと見ております。証言が取れれば、第一段階の『染み抜き』は完了します」


「ええ。そうなれば――ガルベス子爵の方へ、本格的に向き合えますわ」


 私は馬車の背もたれに少しだけ体重を預けた。


 白い手袋の右手を、膝の上に置く。

 先ほど、書記官の体温に触れた感触が、まだ薄く残っていた。


(人間の体温は、温かいですわね。当たり前のことを、今頃になって気づいているなんて、おかしな話ですわ)


 私はそっと、右手の手袋の上から左手を重ねた。

 それ以上は、考えなかった。


   * * *


 夕刻。

 フロード補佐官からの早馬が、ヴィクトリア家に届いた。


 短い文面だった。


   『スラッジが午後より意識を取り戻した。しっかりとした証言ができる状態です。――F』


 私はその手紙を読んで、静かに息をついた。


 安堵ではない。もう少し違う、何かだ。

 汚泥がそこにある。染みがそこにある。だが、その汚泥は今、証言できる状態で存在している。


 それは――あの人間が、まだここにいる、ということだ。


(なぜ、それを少しだけ、よかったと思うのかしら)


 私は扇子を取り出して、ゆっくりと開いた。風を作る。余計な思考を払うように。


「シリル」

「はい」

「明日、スラッジ書記官の証言を取りに参ります。フロード補佐官にも同席を。証言の形式を整えてくださいな。後で法的に使えるよう」


「承知いたしました。……お嬢様、今夜は少し、早めにお休みになった方がよろしいかと」


「そんなに疲れて見えますか、私」


「いいえ。疲れているように見えるお嬢様は、一度も拝見したことがございません」


 シリルが笑顔で言った。


「ただ――今日は、珍しいものをご覧になったでしょう。染みがあっても、まだ形を保っているもの、を」


 私は少しの間、返事をしなかった。


「……珍しいかしら」

「珍しいとは思いません。ただ、お嬢様が普段、御覧になる前に処理をされることが多いので」


 私はシリルの顔を正面から見た。

 完璧な笑顔。だが、その笑顔の奥に、珍しく真剣な光があった。


「……今夜のティータイムを、少し豪勢にしてくださいな」

「かしこまりました」


「何にしますか、と聞かないのですね」


「お嬢様が今日必要なものは、分かっております」


 シリルが深く一礼し、ダイニングへと向かった。


   * * *


 夜のダイニングには、見慣れない茶色の小さな瓶が置かれていた。


「これは?」


「フォル・ネビュラ産の茶葉です」


 シリルが静かに答えた。


「霧の港では、海の潮気と混じった独特の風味の茶葉が採れます。少々癖がありますが――深みがあります」


 私は小さな陶製のティーカップを手に取り、その琥珀色の液体を眺めた。


「……これを、どこで手に入れたのかしら」


「王都の隣国商品を扱う専門店に、三か月前から入荷しておりました。念のため、確保しておりました」


「三か月前」


 私は少し眉を上げた。


「……シリル、あなたは三か月前から第二章を見越して動いていたのですか」


「エコではありませんか」


「あなたは今日、三回同じことを言いましたわよ」


「大切なことは三度申します」


 私はため息をついた代わりに、ティーカップを口に運んだ。


 最初の一口が、舌に触れた瞬間。


 ――思っていたより、深かった。


 潮の香りが、ほんのわずかにある。だが、雑ではない。清潔な、塩の風を遠くに感じるような。霧の奥に海があることを知っているような、そういう深みだ。


「……おいしいですわ」


 私は率直に言った。


「癖がありますが、それを補って余りある深みがある。……悪くない茶葉ですわ」


「フォル・ネビュラは、霧が濃くて有名ですが――霧の下の港には、良いものも、悪いものも、等しく流れ込みます」


 シリルが給仕をしながら言った。


「良いものを選り分けるには、霧の中に入っていく必要がある」


「それは、第二章のことを言っていますの」


「もちろん、茶葉の話でございます」


 完璧な笑顔だった。


 テーブルの上には、茶葉に合わせて用意されたのだろう、隣国の菓子があった。

 薄い層状の生地に、塩漬けのキャラメルを挟んだ焼き菓子だ。


「これも隣国のものですか?」


「はい。フォル・ネビュラの名物菓子です。現地では船乗りの間で食べられているもので、保存が利き、塩気がある。……疲労回復に向いているそうです」


 私は一口かじった。

 バリッとした薄い生地が崩れ、中からとろりとした塩キャラメルが出てくる。甘さと塩気が、同時に来る。


 意外なことに、それが悪くなかった。


「……矛盾しているようで、合っていますわね」


「甘さだけでも、塩気だけでも、足りないのでしょう」


「哲学めいたことを言いますわね」


「お嬢様の前では、自然とそうなります」


 私はもう一口、焼き菓子をかじった。


 ダイニングの外は、夜の静寂が続いている。

 スラッジ書記官は今夜も、衛士に守られた自宅の寝室で眠っているはずだ。

 フロード補佐官は今頃、明日の証言の準備を静かに進めているかもしれない。


 ガルベス子爵は。

 モモ・ダストは。

 そして、ドレインの頂点にいる、まだ名前のない者は。


 彼らも今夜、どこかで何かをしているはずだ。


(でも今夜は、私はここにいますわ)


 フォル・ネビュラの茶葉の、深い琥珀色を眺めながら。


「シリル」

「はい」

「明日の証言が取れたら――本格的に、ガルベス子爵の『回収』に入りますわよ」


「楽しみにしております」


「楽しそうな顔をしていますわね」


「かしこまった表情が基本でございます」


「同じ意味ですわよ、あなたの場合」


 私はフォル・ネビュラの茶をもう一口飲んだ。


 深く、静かで、潮の遠い香り。

 第二章の入口が、もうそこまで来ている気がした。


 でも今夜は、まだここにいる。


 この暖かいダイニングで、塩キャラメルの焼き菓子と、霧の港の茶葉と一緒に。

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