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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第90話 マスコットフィルリーナ

 翌日。

 俺は重役会議に向けて社長室で準備をしていた。


 そこに、またもやフィルがノックもせず侵入してくる。


「隆行。フィル、今日もリモート」


 そう言うなり、俺の椅子を当然のように引き、ひょいっと膝の上へ。


「……またかよ」

「問題無い。昨日と同じ。フィルの定位置」


 タブレットを取り出して画面に集中する姿は仕事そのもの。

 だが膝の上でやられると、どうにも落ち着かない。


 そこへ会議の開始時間。

 経営陣と幹部社員が次々と社長室に入ってきた。


「社長、本日の案件は……」

「っ!? えっ、あの……」


 皆の視線が一点に集中。

 俺の膝に鎮座し、涼しい顔でタブレットを操作する金髪少女・フィル。


「……社長、これは?」

「えーっと、その……」


 俺が言い淀む前に、フィルが顔を上げた。


「問題無い。フィルはリモート勤務中。ここで支社と繋がってる」


 堂々と宣言し、タブレットを掲げる。

 そこにはロシア支社のビデオ会議画面。真面目な議題が進んでいた。


 ……だが、その姿勢。

 会議しているのに社長の膝で甘えてる。誰が見てもアウトだ。


「……リモートって、そういう意味じゃない……」

 思わず俺が小声で突っ込むと、経営陣の一人が噴き出した。


「さ、さすがフィル支社長……型破りすぎますね」

「リモートワーク……膝元から……ふふっ……」


 堪えきれず笑いを漏らす者まで出てきてしまった。

 会議室の空気は一瞬にして緊張感を失い、代わりに柔らかい笑いが広がる。


 紗綾が慌てて場を整えようと声を張った。

「皆さん! 本日の議題に集中しましょう!」


 しかしその声もどこか楽しそうで、頬は赤い。


 フィルは満足げに微笑んだ。

「ほら。皆、笑った。良い会議。成功」


「いや……まだ始まってもないからな……」


 俺は頭を抱えつつも、心のどこかで感謝していた。

 堅苦しい空気を一瞬で和ませられるのは、彼女の持つ特別な力だ。

 破天荒で自由奔放――だが、それが人を惹きつけ、グループ全体を明るくしている。


 会議が再開し、資料を読み上げる中でも、フィルは俺の膝に座ったまま。

 タブレット越しに的確な指示を飛ばす姿に、社員たちは「やっぱり凄い」と感嘆の声を漏らしていた。


 ――リモート勤務(膝元で)。

 奇行のようでいて、どこか納得させられる。


 俺はふと、微笑むしかなかった。


◇◇◇


 会議が終わった後。

 社員たちが退出して静けさを取り戻した社長室に、まだフィルは膝に座ったままだった。


「なあフィル……そろそろ降りてくれないか?」

「問題無い。フィル、ここが好き。安心する」


 タブレットを閉じると、彼女はストンと俺の胸に背を預ける。

 その無防備さに、ため息が出そうになる。


「……お前な。社長室なんだから、人目を考えてくれ」

「フィルは考えた。結果、問題無い。皆、笑った。雰囲気、良くなった」


 悪びれもせず、むしろ得意げ。

 確かにその通りなのだが、膝の感触に意識が持っていかれてしまう俺の身にもなってほしい。


「フィル、こう見えても一応、社長なんだぞ」

「知ってる。だから甘える。隆行、特別。フィルにとって、特等席」


 彼女は俺の胸にすり寄り、嬉しそうに目を細めた。

 金髪が肩にかかり、ほんのり甘い香りが漂う。


「たかゆきサン。フィル、頑張ったデース。褒めてチョンマゲ!」

「はいはい。よくやったよ」


 ミルフィの喋り方が移ってるじゃないか。


 頭を撫でてやると、ぱっと笑顔になる。

 さっきまで世界経済を左右するような会議を仕切っていた人物とは思えないほど、子供のように無邪気だ。


「フィル、仕事も遊びも全力。だから疲れない」

「いや、疲れるはずだろ……」

「でも、ここにいると全部回復する。だから問題無い」


 そう言って、俺の膝から降りる気配はない。

 まるでここが充電スポットだとでも言いたげな顔をしている。


「フィル……頼むから、他のやつの前では控えてくれよ」

「約束。隆行の前だけ。特別サービス」


 にっこりと笑う彼女の言葉に、苦笑いしか返せなかった。

 結局この調子に押されてしまうのは、俺が甘いからなのかもしれない。


 ……まあ、悪くないけどな。


◇◇◇


 昼下がりの応接間。

 窓越しに庭園の青々とした松と白砂の庭が見え、障子を通して柔らかな日差しが射し込んでいる。外ではメイドキャスト達が忙しなく動き回っていたが、この部屋だけは嘘みたいに静かだった。


 俺は分厚い資料を広げ、経営会議用の書類に赤ペンを入れていた。奉龍院との合併で、今後は決済ひとつでも大きな影響を与える。集中力を切らさずにやるつもりだったのだが――。


「隆行、休憩」


 ふいに低く落ち着いた声がして、視線を上げる。

 金色の髪を揺らし、青い瞳を瞬かせながら入ってきたのはフィルリーナだった。


「フィル。……また勝手に来たな」

「問題無い。ここは隆行の家。フィルの家。だから問題無い」


 そう言いながら、彼女は俺の横にすとんと腰を下ろす。次の瞬間――。


「ん……」


 当たり前のように俺の膝へ身体を預けてきた。

 金髪がさらりと広がり、ほんのり柑橘の香りが漂う。


「おいおい……またか」

「また、じゃない。フィルの日課。隆行の膝は、フィルのベッド」


 抗議の余地はないらしい。すっかり自分の場所と決め込んでいる。


 細い肩を撫でてやると、彼女は小さく喉を鳴らした。猫みたいに。


「……眠い。隆行の膝、心地よい」

「仕事中だぞ?」

「隆行が仕事してても、フィルは寝る。問題無い」


 そうして目を閉じたフィルの寝顔は、普段の不思議さが嘘のように穏やかだ。

 どれほど世界がざわつこうと、この子は自分の心地よい場所をまっすぐ選ぶ。……困ったものだが、嫌いになれるはずもない。


 俺は書類を脇に置き、結局その髪を撫で続けた。

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