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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第9話 現われた二人目

「頑張ってご奉仕しますね……」

 上目遣いでそんなふうに言ってくる紗彩の顔は、恥ずかしそうに赤らんでいて、それでいてどこか色っぽい。


 ベッドの端に腰掛ける俺を前に、彼女は膝をつき、恐る恐る手を伸ばしてきた。その仕草は不器用なのに一生懸命で、俺の心を甘く揺さぶる。


「こ、こうして間近で見ると……改めて、大きいんですね」


 彼女は少し震える指先で触れながら、はにかんだ笑みを見せる。その瞳には、嫌悪ではなく――大切な人に尽くせることへの喜びが宿っていた。


「紗彩……無理はしなくていい」

「いいえ。わたし……隆行さんに喜んでもらえるなら、それが幸せなんです」


 懸命な彼女の姿に胸が熱くなる。ぎこちない動きでも、そのひたむきさが心に響いてくる。愛されているのだと、強く実感できる瞬間だった。


 やがて紗彩は顔を上げ、涙が滲むほど必死に微笑んで言った。


「大好きです……だから、全部受け止めたい」


 俺はその言葉に思わず彼女を抱きしめた。細い身体が俺の胸に寄り添い、温もりが心の奥まで染み渡っていく。


「ありがとう、紗彩。俺も……心から愛してる」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 夜は長く、そして甘い時間だった。

 互いを何度も確かめ合い、気がつけば夢中で相手の名前を呼んでいた。


「隆行さん……幸せです……」

「俺もだよ。紗彩のおかげで、今までにないくらい満たされてる」


 抱き合って笑い合い、ときには涙ぐみながら、俺たちはただひたすらに愛情を伝え合った。


 最後に紗彩が、子供のように無邪気な笑顔で囁く。


「今だけは……わたしだけを見てくださいね」

「もちろんだ。ずっと一番は紗彩だ」


 言葉にして、改めて誓う。

 互いの鼓動が重なり、夜は静かに更けていった。




「もう、隆行さん、張り切り過ぎです! せっかくのデート、行けなくなっちゃいますよ!」

「いや……真に申し訳ございません」


 浴室いっぱいに立ち上る湯気の中、紗彩が頬をぷくっと膨らませる。さっきまでの甘い時間の余韻が二人を包んでいて、シャワーの水音がそれを和らげるように響いていた。


「でも不思議です」

「ん?」

「隆行さんとあれだけ激しく……いえ、その、動いていたのに、身体はすごく軽いです。腰はちょっとふらつきますけど、午後のデートに全然支障がないくらい」


 確かに紗彩の肌は湯上がりのように艶を増し、25歳にはもともと見えなかったが、より透明感を帯びているようにも感じられた。

 神力の効果なのか、二人で触れ合うたびに彼女の気配がさらに輝きを増していく。心地よい疲労感はあるのに、むしろ活力が湧いているように見えた。





 風呂から上がった俺たちは、さっぱりした身体でソファに座り、午後のデートはどこに行こうかと談笑していた。

 そんな折――


『ピンポーン』


 不意にインターホンが鳴った。


「ん? 誰だろう?」


 玄関へ向かい扉を開けた瞬間、柔らかなものが胸板に飛び込んできた。


「篠宮さん!」

「ウォッと!?」


 驚いて視線を落とすと、そこには薄紫に近い髪をふわりと揺らす女性――お隣に住む【愛沢(あいざわ)深雪(みゆき)】さんがいた。


 愁いを帯びた儚げな目元、女優にも滅多に見かけないほど整った顔立ち、そして全てを包み込むような温かな雰囲気を持つ未亡人。

 柔らかな香りが、朝のシャワーを浴びたばかりの石鹸の匂いと混ざり合い、胸の奥をくすぐる。


「一体どこに行っていたんですか!? 変な物音が聞こえたし、警察は来るし、篠宮さんは帰ってこないしで……私、もう心配で心配で……」


 彼女は泣きながら俺にしがみつき、その声は心底の安堵と怒りが混じっていた。

 後ろから紗彩の驚きの声が聞こえ、俺は我に返る。


「はっ、そうだ、愛沢さん、俺は大丈夫ですから。何も悪いことは起きていませんから、心配しないでください」


 俺は肩をさすりながら宥め、愛沢さんを落ち着かせた。

 しゃくり上げながらも俺の無事を確認した彼女は、深く息を吐いた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「申し訳ありません、取り乱してしまって……」


 ようやく落ち着きを取り戻した愛沢さんが、俺の出したほうじ茶を手にしながら謝ってきた。

 その仕草一つとっても色っぽく、紗彩に向き直って丁寧に頭を下げる。


「初めまして、愛沢深雪です。あら? あなたは水無月コーポレーションの……」

「あ、はい、水無月紗彩です。愛沢さん、でしたよね。株主総会でお顔を拝見したことがあります。先日の立食パーティーでもご挨拶させていただきましたよね」

「ええ、その節はありがとうございました」


 三人の空気が少し和らぐ。

 だが紗彩の視線は少しだけ不安げだった。


「愛沢さんと隆行さんは、どのようなご関係なんですか? ずいぶん仲が良さそうに見えますけど」


 俺は隠し事をするのは良くないと思い、事実をそのまま話すことにした。

 愛沢さんは俺の部屋の真隣に住んでいて、時折晩御飯に誘ってくれたり、軽く晩酌に付き合ってくれたりしていたこと。

 お互い一人暮らしの寂しさを埋め合うように、ただ気軽に話せる間柄だったこと。


「まぁ、そうなんですか! それはおめでとうございます! 社長の娘さんとお付き合いされるなんて篠宮さんも隅に置けませんねぇ」


 愛沢さんはニコニコ笑い、紗彩は思わずむっとした顔をする。

 その光景はまるで、新しい物語が動き出す合図のように見えた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 彼女が引っ越してきたのは三年ほど前のことだった――。

 日曜で行くところもなくゴロゴロしていると鳴ったインターホン。

 玄関を開けると、そこには初めて見る圧倒的な美人が立っていた。


『初めまして。今日お隣に引っ越して来た愛沢深雪と申します』


 そのとき胸に走った衝撃を、俺はいまだに覚えている。

 高い酒を持ってきてくれたり、作ってくれる晩飯が妙に豪華だったり。

 理由は分からないけれど、彼女が俺に良くしてくれたことは確かだ。


 だが今、俺はそれ以上のことを感じている。

 彼女の身体がぼんやりと光って見えるのだ。

 紗彩が青白い光を放っていたのに対して、愛沢さんは淡く柔らかな紫色の光だった。


「なあ、実はさっき会った愛沢さんも、違う色だけど光って見えたんだ。それってもしかして……」


 それを聞いた紗彩は、少し肩を竦めて微笑んだ。


「……はぁ、いくらなんでも早すぎるよ」


「まさか二日目にして、もう二人目が現れるなんてな……」


 紗彩は真剣な眼差しで俺に告げた。


「ゆっくり考えてください。さっきも言いましたけど、私は隆行さんのご意思を尊重します。私も一目見ただけでわかりました。愛沢さんは隆行さんのことを深く愛しています。理由はまだ分からないですけど、私と同じくらいの気持ちを持っていることは分かります」


 俺は思わず息をのむ。

 ハーレムだとか神力だとか、現実離れした言葉が頭をよぎるが、何より今は紗彩を悲しませたくない。


「……分かった。愛沢さんと今後どうなっていくのかはまだ分からないけど、俺は紗彩を悲しませたくない。それを一番に据えて行動するよ」

「はい、それでいいと思います。嬉しいです、隆行さん」


 こうして、また一歩、新しい“物語”の扉が開かれていった。



※後書き※

明日も3本更新となります。18:00です。

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