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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第30話 閃光の如き解決


『奴の娘を呼び出したところだ。ついでに社長の娘の紗彩もこちらの手に入った』


 心臓が高鳴るのが分かった。部屋の中に飛び込みそうになるのを必死に堪える。

 口の中に血の味がした。


 俺は怒り狂いそうになる自分を懸命に押し殺して奴らの話に聞き耳を立てる。

 今ここで飛び込んだら奴らの居所が分からなくなる。


 情報を聴き出して助け出さないと。冷静に現状を分析しなければ。俺の判断ミスで玲緒奈や紗彩の安全が揺らいでしまう。

 いや、既に十分危険領域であるが、一つの判断ミスが致命的になる。


 落ち着いて相手の会話に耳を傾ける。

 集中して、研ぎ澄ませた神経を総動員して情報を聞き出すために耳を傾けた。


 どうやら別れた妻を人質にとったと偽って玲緒奈を呼び出したらしい。どのように携帯の番号を知ったのかは謎だが、そこらへんは何とでもなるのだろう。


 問題なのは二人が今どこにいるのかだ。


 すると、俺の脳内に浮かんできた光景があった。

 古びたビルの一室。清潔感の無いソファの上に縄で縛られ猿ぐつわをされている紗彩と玲緒奈。

 周りには無表情に取り囲んでいる男たち。


 分かる。紗彩と玲緒奈がどっちにいるのか分かるようになっていた。

 俺はすぐさまその場所へと向かうためその場を立ち上がる。


『篠宮を始末して娘を押さえれば社長も後退せざるを得ないだろう。そうすれば副社長が会社のトップに立ち、お前たちも出世は思うままだ。それまでせいぜい大人しくしていろ』

『分かりました』


 それを聞き終る前に俺は料亭を出て走り出していた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 私は黒い服を着た男たちに攫われ古びたビルの部屋へと押し込まれていた。

 会社から帰ろうとした時、突如として車に連れ込まれ、抵抗する暇もなく眠らされた私は、気が付くと縄で縛られ、口も塞がれて横たわっていた。


 目を覚ますと隣には玲緒奈ちゃんが気を失って倒れており、同じく縛られ猿ぐつわをされていた。


 私たちを取り囲んでいるのは黒いスーツを着た男たち。そいつらは不気味なほどに無感情で、何もしゃべらず直立不動のまま動こうとしない。


 そしてそれを取り仕切っているのは専務の浜島という男。

 副社長の片腕であり、次の役員会で昇進確実の有力株と目される男だった。


 深雪さんはいない。別行動が幸いしたようだ。彼らが顔をさらしているということは私たちを無事に返す気はないってことになる。


 なんとか玲緒奈ちゃんだけでも無事に逃がさないと。

「目が覚めたようだな。猿ぐつわを外してやれ」

 スーツの男が一人、私の口にまかれた布を外し始める。

 恐ろしく無機質な男で髪形以外に他の奴との違いが分からない。

 チンピラヤクザみたいな人達じゃない。ものすごく訓練された、まさしく兵隊といった感じの人だった。


「こんなことをして。一体何が目的なんですか」

「聡明な紗彩お嬢様なら分かっているはずだ。君は餌であると同時に大事な取り引き材料だ。社長がその椅子から降りるまでは身の安全は保障してやる」


 古ぼけたソファに座りながらニヤニヤと笑ってそんなことをいう浜島。

 周りを観察すると三脚に嵌められらたビデオカメラとパソコンが一台。恐らく人質を取ったことを知らせるためのライブ中継でもするつもりなのだろう。


 そのあとの展開は想像するまでもない。考えるだけでも泣きたくなる。

 だけど、ここで泣き叫んではいけない。こいつには人質としての価値があることを認識してもらわないと。


「そうですか。私に甘い父なら喜んで取引に応じるでしょうね。でも、人質は無傷だからこそ価値があるってことは分かっているみたいですね。そこにいる玲緒奈さんも含めて、傷一つ付けていないことが取引を上手くいかせる最良の判断。流石は次期幹部最有力の浜島さんですね」

「くっく。自分の立場を十分理解しながらその冷静な判断力。ただのお嬢様ではないと思っていたが本当にすごいな。心配しなくても貴女は人質であると同時に大事な供物になる人だ。傷一つ付けないから安心するといい」

「供物?……まさか!?」

「察しがいいな。あんたは奉龍院和時様への贈り物だ」

「現代日本でよくもそんなことをやろうと思いつきますね」

「さあね。古式ゆかしい金持ちなら法律なんてどうとでもなるんじゃないかねぇ。それより、あんたの態度次第では、あんたはともかく、そっちのお嬢さんは無事じゃすまなくなる。口の利き方には気を付けることだ」


 気を失ったままの玲緒奈ちゃんを見やる。

「心配しなくてもあんたが下手な態度に出ない限りそっちのお嬢さんにも手は出さないよ。だがここにいる奴らは下手なチンピラより質が悪いぞ。普段は俺の命令に忠実だから何もしないが、ひとたび鎖を解き放てば無遠慮にボロボロにするまで止まらないだろう」


 私の首筋に冷や汗が流れた。多分私たちは無事では帰れない。




 でも、不思議と絶望感はないことに気が付いた。恐怖はある。しかし、そのことに全く慌てていない自分がいる。


 やがて気が付いた玲緒奈ちゃんも、目を覚まし、状況を確認しても尚、まったく慌てることなくゆっくりと起き上がる。

 男の一人が猿ぐつわを外しても、彼女は一切騒ぎ立てることもなくこともなく、淡々と語った。


「今すぐ私たちを解放した方が身のためです。すぐにあなたたちは絶望することになりますよ」

「随分と気丈なお嬢さんだ。自分の立場を分かっているのかな?」

「ええ、分かってます。あなたのさい配一つで私たちは無事では済まない。だから大人しく人質としての立場を弁えておいた方がいい。でも、無意味です。すぐにあなたたちの方が無事では済まなくなりますから」


 玲緒奈ちゃんの言葉に気が付いた。私にもわかった。彼女の言っている言葉の意味。

 玲緒奈ちゃんが全く慌てていない理由が。


 そこで浜島の携帯着信音が鳴る。

「もしもし……誰だお前は?……愛沢?それは確か最近社長が雇い入れたっていう」


 深雪さん!?なんで浜島の携帯に深雪さんが電話を?

「おい、愛沢ってのはお前たちの仲間だろ?」


「ええ、そうです。それが?」

 浜島は無言で携帯をスピーカーモードでこちらに向けた。

『あ、紗彩ちゃんですか?もうすぐ助かりますからねぇ。少し我慢しててくださいね』


 その言葉には不思議と興奮はなかった。

 何故なら、私はその結果になることを知っていた気がする。確信といってもいい。


 玲緒奈ちゃんも同じようだ。とてもとても確信に満ちた表情でまっすぐに何かを見据えていた。


 近づいてきた。私には、いや、私たちにはわかっていた。その結果が。



 バリィイイイイイイイン……


「うおっ!?」

「な、なんだ!?」


 突如として鳴り響く破裂音。それはガラスが割れて飛び散る音であった。それと同時にまき散らされる大量の破片。飛び込んできた一つの影。


 誰であるかは考えるまでもなかった。無言で立ち尽くしていた巨漢たちも流石に事態に狼狽を隠し切れない。


「ま、まさか。ここはビルの5階だぞ!」

 一瞬にして影が動き出す。

「ぐほっ」

「ゴえぇっ!?」


 180以上はあろうかという男たちが紙風船のように吹き飛ばされていく。

 激突した壁の方がガラガラと音を立てて崩れ落ち、穴をあけた。


「なっ、なっ……!?」

 浜島は起こった事実を把握しきれていないらしい。私だってこの確信に満ちた気配がなかったら何が起こったか分からないでいただろう。

 玲緒奈ちゃんはこの結末を知っていたかのように笑っている。

 多分、私も同じ顔をしていた。


「隆行さん!!」

「よう。待たせちまったな」


 思った通りの人が、そこには立っていた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 ━30分ほど前━

 俺は紗彩と玲緒奈がいるであろう古ぼけたビルに向かって走っていた。


 俺は深雪にすぐに連絡を取り現状を伝える。

 深雪は冷静に状況を分析し、会社側での対応についてはこちらに任せて欲しいといってくれた。


 憂いの無くなった俺は電話を切って紗彩たちの元へと向かう。

 タクシーを使ったほうが早いのではないか。いや、そうじゃない。タクシーを使うより自分で走ったほうが早かった。


 文字通り、俺は車やバイクが普通に走るよりも早い速度で走っていた。

 人通りの少ない路地を選んで、最短ルートが不思議とわかる。


 視界に赤い絨毯のような道筋が通っているのが見える。半透明のそれは、不思議とそれに従えば目的の場所まで案内してくれるという妙な確信があった。


 まるでゲームのルートナビのように俺を導いてくれている。


 身体の奥底から溢れてくるような熱量が俺を支配している。神力の凄さは単純な運動能力だけではない。

 人智を超えた能力の数々が二人を助けたいという今の俺に応えてくれたような感じがしている。

 目的のビルが見えてくる。赤い絨毯はビルの上階に向かって真っすぐ伸びており、俺はそれに従ってビルの真下からそのままジャンプする。

 先日から身体を鍛えていてわかったことだが、俺の身体能力はアメコミヒーロー並みの超人スキルを有している。


 迷うことなく飛び上がり、当然のように卓越した視力はビルのガラス越しに紗彩と玲緒奈、そしてそれを取り囲んでいる黒い服の男たち。

 更にその前にいるソファの男の姿をはっきりととらえる。


 一瞬にしてこれだけの情報が視界に飛び込んできて、更にそれを掌握する動体視力は普通の人間のそれではない。

 だが俺はそれを使えることに不思議と驚きは少なかった。


 なんといえばいいのだろうか。使うことに身体がなじみ始めている感じがする。

 玲緒奈と繋がったあたりからだろうか。敵意のある存在を感知出来たり、心同士が繋がったりと、およそ人間には出来ないことが出来るようになっていく過程でそのことになじみ始めている自分がいた。


 身に着けてまだ数日も経っていないのに自分が出来ることが増えていることに違和感がない。


 変に達観した思考があるのだ。


 飛び上がったビルの5階部分あたりで紗彩たちを発見し、そのまま空中を蹴る。

 垂直方向に飛び上がった身体は空気の層を蹴って水平方向へとシフトする。

 突き出した脚をまっすぐ伸ばし、ビルの分厚いガラスを蹴り割った。


 派手な破裂音がし、ガラスと共に飛び込んだ先ですぐさま行動を起こした。

 紗彩と玲緒奈を取り囲んでいるデカい男たちの懐に飛び込んで体当たりをする。

 吹き飛ばされた黒服たちは風に飛ばされた小枝のように宙を舞い壁に激突する。

 かなり派手に吹き飛んだがガタイがデカいので死んではいないだろう。


 紗彩と玲緒奈の安全を確保して縄を引きちぎる。人間の力ではちぎるのは不可能に思える硬い縄も、今の俺なら紙で出来た紐と変わらない。


「な、なんだよ。なんなんだよお前は!!」

「浜島専務ですか。黒いうわさの絶えない人でしたが、本当にあなただったとはね。そうそう。殿山係長と佐山部長の会話は録音させてもらいましたから、あなたがしていた悪さは全部証拠が揃っていますよ」


 正直少し距離が離れていたため録音レベルは心もとないがブラフも含めて鎌をかけた。

「くそっ。まさかあの料亭にいたのか!いや、あそこからここまでどれだけ離れていると思っている。嘘が下手だな」

「ま、それはそれとして。誘拐の現行犯であることは一目瞭然ですよね。これは言い逃れ出来ない」

「う、うるさい!口を塞げば同じことだ!やれお前たち!」


 流石はプロ(っぽい)黒服の男たち。

 あれだけの事態を見ても狼狽した様子も無く、一瞬ですぐに俺を取り囲み始めた。

 だが俺に恐怖はない。


 後ろで構えている男の位置まで詳細にわかる。武道の達人にでもなった気分だ。

 俺は紗彩と玲緒奈を壁際に誘導して安全を確保しつつ一人ずつ黒服に対処する。

 飛び込んできた一人目の拳を受け止め握り潰す。


「ぐぁあああ」

 鉄面皮と思われた屈強な男も流石に拳の骨をつぶされては叫ばざるを得ないだろう。

 その場に膝をつき唸っている男を蹴り飛ばして無力化する。


 続いて二人目の懐に飛び込んで拳を突き出す。吸い込まれるようにめり込んだストレートが鳩尾(みぞおち)をへこませて相手の身体をくの字に曲げる。


 三人目、四人目と順次対処していき、無力化していく。恐らく相手は見た目からしてプロだ。

 普通の人間なら一人でだって数人の男をねじ伏せることが出来る屈強な巨漢たちも、今の俺には何でもないことのように対処できる。



 気が付けば、浜島以外の全てがその場に倒れ伏し、誰一人意識を保っている者はいなくなっていた。


「ば、バカな……」


 失禁した浜島はその場にへたり込んで動かなかった。



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