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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第18話 深雪との夜

「乾杯」


缶チューハイの軽い衝突音が、小さなアパートの一室に響いた。今日は“二人きりデイ”――深雪と過ごす特別な日だ。


ちゃぶ台の上には、裂きイカやあられといった素朴なおつまみが並んでいる。コンビニで買った安い缶チューハイを片手に、俺と深雪は顔を見合わせて笑った。


「やっぱりこういうお酒のほうが落ち着きますね」

「まさかお酒に弱いってのが“演技”だったなんてな。すっかり騙されたよ」

「ふふ……。襲ってくださらないから、恥ずかしいのをずっと我慢していたんです」


深雪は薄手のワンピース姿で、床にお姉さん座りをしている。肩がすっと出たシルエットと短いスカート丈が妙に艶っぽい。頬は少し赤く、吐息も熱を帯びている。



思えば、これまでも何度となく理性を揺さぶられてきた。けれど深雪は自分からは決して一歩を踏み出さず、俺が“狼”になるのを待っていたのだろう。


「もしも……の話をしてみませんか?」

「もしも?」

「私と出会った頃に戻ったとして、篠宮さんが理性を失っていたら……っていう“ごっこ遊び”です」


どうやら、かつて隣に越してきた当時のことを再現するらしい。深雪は一度部屋を出て、改めてチャイムを鳴らした。


扉を開けると、あの日の装いそのまま――肩を出した淡い紫のワンピース姿で立っていた。手には、あの時と同じようにお酒を提げて。



「こんばんわ。珍しいお酒が手に入ったので、ご一緒しませんか? 二十年ものなんですよ」

「……そんな貴重なお酒を?」

「美味しいお酒は誰かと一緒に飲むからこそ、です」


俺は苦笑しながら彼女を迎え入れる。机を挟んで世間話をしながら杯を重ねるうちに、当時の記憶がよみがえってきた。


「ん……ちょっと、酔っちゃいました」


彼女がしなだれかかってくる。その重みと吐息、そして柔らかな温もりが俺の理性を削っていく。


「愛沢さん、大丈夫か? ここで寝たら風邪ひくぞ」

「すぅ……はぁふ……篠宮さぁん……」


寝言のように俺の名前を呼ぶ。その声に、胸がざわついた。もしあの時、理性を保てなかったら――。


深雪は目を閉じたまま、ふっと唇を寄せてきた。触れた瞬間、柔らかな温かさと甘い吐息が重なり合う。


「……捕まえた」


目を開いた深雪が、いたずらっぽく微笑む。


「ずっと襲ってくれないから、不安だったんです。私、魅力がないのかって」

「そんなこと、あるわけない。深雪さんにどれだけ救われてきたか……」


言葉にした瞬間、彼女は少し照れくさそうに笑い、そっと俺の手を取った。


「不束者ですが……。どうか、これからもそばに置いてくださいね」


静かな部屋に、缶チューハイの残りと二人の吐息だけが混ざり合っていた。


深雪は俺の手をそっと胸元へ導いた。柔らかな感触に指先が震える。


「昔から……篠宮さんのことが好きでした。でも、自分から言い出す勇気がなくて……。こうして“ごっこ遊び”なんて方法に頼ってしまって、ずるい女ですよね」

「全然ずるくなんてない。俺は――ただ救われていたんだ。深雪さんが隣にいてくれただけで」


真剣な言葉を返すと、彼女は一瞬きょとんとしたあと、くしゃりと顔を崩した。


「そんな風に言ってもらえるなんて……幸せです」


彼女の瞳に涙がにじむ。だがその雫は哀しみではなく、安心と喜びが混ざったものだった。


「じゃあ……本当に、もしもあの時理性を失っていたら……篠宮さんは私を抱いてくれましたか?」

「……きっと、抱いていた」

「ふふっ……じゃあ、今は?」


問いかける声は、いたずらっぽさと真剣さが入り混じっていた。俺はしばし言葉を失い、深雪の顔を見つめる。


――三年前から、ずっと隣にいてくれた人。

――そして今、紗彩と共に“未来”を背負おうとしてくれている人。


「今は……抱きたい。心からそう思ってる」


正直に告げると、深雪の表情がぱっと花のように綻んだ。


「うれしい……。ずっと、ずっとこの瞬間を夢見ていました」


深雪が身を寄せ、俺の肩に顔を埋める。細い腕がぎゅっと背中に回され、その温もりに胸が熱くなる。


「篠宮さん……もう、“もしも”じゃありません。これは、今の私たちの物語ですから」

「……ああ」


二人の距離がなくなり、唇が重なる。甘い果実のような味が口の中に広がり、互いの鼓動が伝わる。


――三年前、理性で押しとどめた夜。

その延長線上に、今こうして俺たちの“答え”がある。


 再現ごっことは名ばかりで、俺と深雪の唇は何度も重なり、互いの吐息が絡み合うたびに熱が増していった。

 最初はあくまで遊びのつもりだった。けれど、俺たちはもう止まれない。


「ん……んふ、篠宮さん……じゃなくて……隆行さん」

「深雪……」


 名前を呼び合った瞬間、二人の心が確かにつながった気がした。


 深雪のワンピースにそっと指をかける。布が滑り落ち、白い肩が露わになる。

 彼女は抗わず、むしろ自ら身を預けてきた。頬を赤らめ、少しだけ不安そうに笑う顔があまりにも愛おしい。


「……こんな私でも、欲しいって思ってくれますか?」

「思ってる。ずっと前から、ずっとな」


 俺の答えに、深雪は涙をにじませながら微笑んだ。


 ちゃぶ台の上に並んだお摘みや空き缶はそのままに、畳の上で抱き合う。

 窓の外では夜風がすこし揺れていたが、部屋の中は熱を帯びていくばかりだった。


「隆行さん……あの時、勇気がなくて、ずっと後悔してたんです。今日こうして――ようやく……」

「俺もだ。今なら、全部受け止められる」


 深雪が瞳を閉じる。俺はその唇をそっと塞ぎ、彼女を床に押し倒した。


 部屋の隅で小さく揺れる影が、二人の新しい関係を刻んでいく。





 「うふふ、隆行さんの言葉、凄く真剣で演技どころじゃありませんでした。あんな真面目な顔でお付き合いしてくださいなんて言われたら、ね」

 「自分がそうするであろう行動だからね」

 「……あんな風に言われたら、胸がいっぱいになっちゃうじゃないですか」


 さっきまでの出来事を思い出しながら、俺たちは浴室で互いの体を洗い流し、清々しい湯気の中で笑い合っていた。布団に並んで横になると、深雪はイタズラっぽく笑みを浮かべ、俺の胸に頬をすり寄せる。


 「うふふ、今度は私が襲っちゃいますね」

 深雪は俺の上に軽く乗りかかり、温もりを確かめるように胸元に顔を埋めた。豊かな髪が頬をくすぐり、柔らかな体温が心地よく伝わってくる。


 「……じゃあ、今度は私からご奉仕しますね」

 色を帯びた唇で囁きながら、深雪はゆっくりと首筋にキスを落としていく。舌先ではなく、あくまで柔らかな吐息と唇の感触で、俺の全身を愛撫するように撫でる。水音のような小さなキスの音が部屋に響くたび、胸の奥に甘い痺れが走った。


 「隆行さん、かわいいですね……」

 年上の深雪にからかわれる奇妙な心地よさ。俺の身体は強い刺激を求めるように自然と彼女に身を委ねていく。


 深雪は布団の中で俺の手をとり、自分の髪に絡ませ、頬に導く。瞳は潤み、吐息は熱を帯び、まるで花が開くように彼女の心が俺に向かって開いていくのが分かる。


 「……今度は、私が全部受け止めますから」

 その声は、優しく、そして決意に満ちていた。


 俺たちはしばし言葉を失い、ただ互いの温もりを感じ合った。

 月明かりが障子越しに差し込み、二人の輪郭を淡く照らしている。外の世界が静まり返るなか、俺たちはひとつの布団の中で、ひとつの心になっていった。




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