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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第16話 これから始まる希望の未来

 紗彩に背中を押されるようにして、俺と愛沢さんは寝室に入った。互いにベッドに腰を下ろしたものの、しばし無言のまま時が流れる。

 沈黙を破ったのは、意外にも彼女の方だった。


「突然こんなことになって……どう言ったらいいのか」

「いえ、むしろ望んでいたことですから。篠宮さんってば、私がどれだけ想いを伝えても受け入れてくださらないのですもの。正直、私の方が我慢の限界でした」


 そっと俺の手を取って肩に寄り添う。香るのは大人の女性らしい、濃密な甘さ。

 頬を赤らめた彼女の瞳は潤み、やがて閉じられて――俺たちは自然と引き寄せ合い、唇を重ねた。


「篠宮さん……どうか、私をそばに置いてください」

 吐息が触れ合う距離で、彼女のささやきが耳をくすぐる。

「愛しています、隆行さん……だから、どうか受け止めてくださいね」


 その声は真剣で、けれど柔らかかった。

 俺は言葉を返す代わりに、彼女を抱きしめる。触れた瞬間、互いの心臓の鼓動がシンクロしていくようだった。


「……篠宮さん、私、ずっと想っていました」

「俺も、だ。深雪……」


 名前を呼ぶと、彼女の肩が小さく震える。ほんのそれだけで、彼女の心がどれだけこの瞬間を待っていたかが伝わってきた。


 互いの手を強く握り合い、視線を合わせる。

「どうか、お願いいたします。私は篠宮さんを……愛しています」

「分かった。俺も覚悟を決めるよ。これから一緒に歩んでいこう」


 彼女は嬉しそうに頷き、涙を浮かべながら俺にしがみついた。

 その姿は儚げで、けれど確かな決意が宿っていた。


「隆行さん、と呼んでもいいですか?」

「ああ、もちろんだ」

「隆行さん……幸せです」


 耳元で囁かれたその一言は、どんな甘美な旋律よりも心に響いた。


「俺もだ。深雪、これからは一緒に」

「はい……私は、あなたのそばにいられるだけで」


 二人の指は絡み合い、決して離れないと誓うように強く結ばれる。

 心と心が繋がり、互いの想いが一つになる。


 その瞬間、世界は二人だけのものになった。



 深雪の身体は小刻みに震えていた。

 その震えは恐怖ではなく、長年押し込めてきた想いがようやく解き放たれたせいだと分かる。


「……最初の夫も、前の夫も……私を本当には抱きしめてくれませんでした」


 かすれた声で語られた彼女の過去。

 最初の夫には別に想う相手がいた。だから、形だけの結婚のまま彼は彼女を置いて去ってしまった。

 二人目の夫は老齢で病に伏せており、深雪の献身を受けながらも、最後まで穏やかに彼女の隣で人生を閉じた。


「私は……ただ一度でいいから、心から愛する人に全てを委ねたいと思っていました」

「深雪……」


 その声に胸が締めつけられる。

 彼女は過去の孤独をすべて背負いながら、それでも目の前にいる俺を選んでくれた。


 俺は強く抱きしめ、耳元で囁く。

「深雪、俺は君を尊敬するよ。ここまで自分を懸命に磨き、守り続けてきたことに。だから……必ず君を幸せにすると誓う」


 彼女の大きな瞳から、涙が一筋こぼれ落ちる。

「はい……それだけで十分です。私は紗彩さんとは違う、私なりの形で愛してもらえれば、それが幸せですから」


 その言葉に胸の奥が熱くなる。

 俺は彼女をもう一度強く抱きしめ、彼女もまた力いっぱい俺にしがみついた。


「隆行さん、とお呼びしても……いいですか?」

「ああ、もちろんだ」

「……隆行さん」


 名前を呼んだだけで、彼女の声は震え、涙まじりの笑顔が咲いた。

 それは長い孤独を越えた者だけが見せる、本物の幸福の色だった。


「動いてください……私の心を、包んでください」

「わかった。これからはずっと一緒だ」


 互いに寄り添い、額を合わせる。

 心臓の鼓動が重なり、二人の間に温かな光が広がる。


「……愛しています、隆行さん」

「俺もだ、深雪」


 それは単なる言葉ではなかった。

 魂が繋がり合い、二人の絆が確かに結ばれた瞬間だった。


深雪と固い誓いを交わしたその直後――。


「……さぁ、今度は寂しがりのお姫様の番ですよ」


にっこりと笑った深雪が、すっと指先を扉の方へ向けた。

俺はハッと息を呑む。スピリットリンクを通じて伝わってくる、もうひとつの鼓動。


「紗彩……?」


そう、そこには確かに紗彩がいた。

ドアの向こうに身を潜めながらも、彼女の心の震えが、俺にも深雪にも手に取るように伝わってくる。


「……大丈夫、大丈夫……許容できる。出来るって決めたんだから……嫉妬しちゃダメ、嫉妬しちゃダメッ」


扉の向こうから微かに聞こえた呟きに、胸が締め付けられた。

紗彩は――自分に言い聞かせながら、必死に堪えていたのだ。


俺と深雪が心と体を重ねている、その間ずっと。

扉一枚隔てた隣の部屋で、ひとりきりで。



ブツブツと自分に言い聞かせるようにつぶやく紗彩。

けれども、その声は震え、涙をこらえる気配がありありと伝わってきた。


俺は深雪と心を重ねている最中でも、扉の向こうにいる紗彩の気配を確かに感じ取っていた。

――ずっと隣の部屋で、俺たちの声を聞いていたのだ。


「紗彩」

「た、隆行さん……終わったんですか!?」


扉を開けると、そこには目を真っ赤に腫らし、うずくまって泣きじゃくる紗彩の姿があった。

頬を伝った涙が膝にシミを作り、見ているだけで胸が痛む。


「こんなに泣いて……やっぱり無理していたんじゃないか」

「ご、ごめんなさい……」

「謝るな。俺は紗彩の覚悟を受け取ったんだ。だから深雪を受け入れたことは後悔していない。でも――紗彩を泣かせたかったわけじゃない」


俺は彼女を引き寄せ、強く抱きしめた。


「うぅ……ごめんなさい、私……」

「いいんだ、分かってる。さあ、約束だ。今度は君の番だよ」


「ぇ、隆行さんっ、ま、待ってください!」

驚く紗彩をお姫様抱っこで抱き上げ、そのままベッドへと運ぶ。


深雪はにっこり笑い、紗彩を優しく迎え入れた。

「紗彩さん……ありがとうございました。私、こんなにも幸せな気持ちになれたのは初めてです」

「深雪さん……」


ベッドに横たえられた紗彩を、深雪がそっと抱きしめ、頬を涙で濡らしながら感謝を告げる。

その真摯な言葉に、紗彩もまた微笑みを返した。


「ごめんなさい、深雪さん。私、覚悟したのに……」

「いいんです。その気持ちは当然ですよ。だから――私はあなたともっと仲良くなりたいんです」


二人は固く手を握り合い、視線を交わした。

俺はその光景に胸を打たれる。

恋のライバル同士が、互いを認め合っている――そんな奇跡のような瞬間だった。


「隆行さん。私たち二人で、あなたを愛します。どうか、受け止めてくださいね」


紗彩の言葉に、俺は深雪と紗彩を同時に抱き寄せ、強く誓いを込めてキスを交わした。

三人の心が、確かに一つに結ばれていく。


◇◇◇◇◇◇◇◇


翌朝。

俺の胸の上で、二人の恋人が猫のように甘えながら眠っていた。


「んにゅ……おはようございます、隆行さん」

深雪が囁くように目を覚ます。


「おはよう、深雪。体は大丈夫か?」

「はい。むしろ、不思議と元気になっている気がします。……鏡を見るのが楽しみですね」


少女のように微笑む深雪に、思わず俺の顔もほころぶ。


「……むにゅぅ、隆行さん……」

隣で寝言を漏らす紗彩に、二人で思わず笑い合った。


「彼女がいなかったら、私はこんなに幸せになれませんでした。隆行さん、不束者ですが……末永く可愛がってくださいね」

「もちろんだ。二人が俺を見限らない限り……いや、たとえ嫌われても、俺は二人を愛し続ける」


深雪は感極まったように涙を浮かべ、そっと唇を寄せた。

そこに紗彩も目を覚まし、頬を赤くして甘えるように言う。


「私も……キス欲しいです」

「はは、しょうがないな」


三人で笑い合いながら、朝を迎える。


――が、ふと時計を見た瞬間、俺は血の気が引いた。


「か、かかか、会社に行く時間が!!」

「きゃあーーっ!遅刻ぅううう!」

「あらあら大変。急ぎませんと」


バタバタと着替えて飛び出す俺たち。

奇跡的に遅刻を免れ、出社して顔を見合わせた瞬間、三人で大笑いしてしまった。


前途多難だが、きっと楽しい未来が待っている。

そう信じて、俺は二人と共に歩むこれからの人生を思い描いた。



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