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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第15話 覚悟の契約

 紗彩が愛沢さんに持ち掛けた条件――それは、新設される部署のリーダーに俺を任命すること。

 だが俺が本当に気になっていたのは、その条件そのものよりも、なぜ愛沢さんが水無月に現れ、そんな条件を提示したのかだった。


 その理由を確かめるため、定時で仕事を切り上げた俺たちはタクシーで紗彩のマンションへと向かった。

 移動の間、誰も口を開かなかった。けれど愛沢さんは、いつもの柔らかい微笑みを浮かべ続けていた。

 悪意や打算からではない。むしろ――彼女なりの強い決意の表れ。

 だからこそ俺は、説明を待つことにした。


 リビングに入ると、紗彩が紅茶を入れてくれる。俺はカップを口にして、ようやく息を整えた。


「さて……それでは、このようなことになった経緯をお話ししましょう」

「ええ……正直、俺にはもう何が何だか分かりませんから」


 ゴクリと喉が鳴る。愛沢さんは真っ直ぐにこちらを見て口を開いた。


「これは、紗彩さんから提案されたことなのです」



◇◇◇


 ━一週間前━


 母から「水無月が買収工作を受けている」と知らされた紗彩は、隆行に告げず、単独で動いた。

 目指したのは、彼のアパートの隣室――愛沢深雪の部屋だった。


 インターホンを押すと、驚いた声が返る。

『はい、どなたですか?』

「こんにちは。水無月紗彩です」

『え!?』


 すぐに扉が開き、深雪に中へと招き入れられる。

 客用の湯呑みを置いた深雪に、紗彩はいきなり核心を突いた。


「単刀直入に伺います。――愛沢さんは、隆行さんと添い遂げたいですか?」


 深雪は一瞬固まった。だが、すぐに瞳を揺らすことなく答える。


「もちろんです。私は篠宮さんを愛しています」


 現役彼女へのライバル宣言ともとれる堂々たる言葉。

 だが、互いに目を逸らさず睨み合った末、不意に二人とも笑い合ってしまった。


「やっぱり……あの時、聞いていましたね?」

「ええ。アパートの前で見かけたとき、確信しました」


 互いの想いは、隠すまでもなく露わになった。



◇◇◇


「私は隆行さんを世界一幸せな男性にしてあげたいんです」

「……壮大な夢ですね」


 紗彩の言葉に、深雪は驚きながらも共鳴していた。

 隆行が纏う気配――それはかつて奉龍院を支配した上之介と同じ「器の大きさ」を秘めていると、直感していたからだ。


「だからこそ、一人では足りません。あなたを――仲間に迎えに来ました」


 その瞬間、深雪の瞳が鋭さを帯びた。

 柔らかな雰囲気が消え、まるで権力闘争を生き抜いてきた頂点の覇気。

 紗彩の背筋に冷たい戦慄が走る。


「……本当のあなたなんですね」

「乙女に向かって“獅子”は失礼ですよ」


 冗談めかして言いながらも、深雪は真剣な眼差しで手を差し出す。


「私は二番目で構いません。ただし、あなたが油断すれば一番を奪うつもりです。――覚悟はありますか?」


 紗彩は震えながらも、その手を強く握り返した。


「もちろんです。私は必ず、あの方の一番であり続けます」


 二人の手はしっかりと重なり合い、誓いが結ばれた。


『必ず隆行さんを幸せにする』と


◇◇◇


 回想を終え、リビングに戻る。

 愛沢さんは凛とした表情で俺を見つめた。


「誤解のないように言います。私は“篠宮隆行”という餌につられたのではありません。――彼の幸せを壊す因子を排除するために、自らの意思で決めたのです」


 その瞳に宿る決意。

 俺の目には、彼女の身体から紫色の光が溢れて見えた。以前よりもずっと強く。


 そして心が繋がる感覚。

 紗彩と初めて心を重ねたときと同じ、魂同士が触れ合う感覚。

 俺と深雪の間にも確かな絆が芽生えていた。


「どうか……お願いいたします。私は篠宮さんを愛しています。紗彩さんの次で構いません。そばに置いてください」


 真剣な瞳に、俺は息を呑む。

 そして決意を固めた。


「分かりました。あなたのことは、この三年間でよく知っています。でも、きっとまだほんの一部に過ぎない。これから――お互いをもっと知っていきましょう」


 俺は、覚悟を決めた。



 だが、その直後。

 紗彩がとんでもない一言を放った。


「それじゃあ隆行さん。早速、愛沢さんと“心を重ねて”ください!」


「はぁあああ!?」「さ、紗彩さん!?」


 深雪ですら目を見開いて狼狽する。


「もちろん、その後は私の番ですよ。ハーレムなら女は平等に扱わなきゃダメですからね」


 いやいやいや、何を言ってるんだ。俺も混乱した。

 だが紗彩の顔は真剣そのもの。


「私も覚悟を決めたんです。隆行さんが決意したなら、決心が鈍らないうちに行動すべきです。そうじゃなきゃ、私の覚悟が揺らいでしまいますから」


 彼女が必死に我慢しているのは分かった。

 ここで「後にしよう」と逃げれば、紗彩の誓いも、愛沢さんの尊厳も踏みにじることになる。


「分かった。ただし――愛沢さんの後は必ず紗彩だ。ちゃんと準備しておいてくれ」


 俺の言葉に、紗彩は満足そうに笑い、力強く頷いた。


「はい。お待ちしてます。でも……もし愛沢さんを疎かにしたら、私、怒りますからね!」


 そう告げると、彼女は俺と愛沢さんを寝室へ押し込み、自らドアを閉めた。


 ――今夜は、大きな覚悟を試される夜になりそうだ。





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