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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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12/22

第12話 紗彩の力

 アパートから荷物を運び込み、マンションに置いたあと、俺たちはタクシーで紗彩行きつけの店へ向かった。どうやら紳士服の専門店らしいのだが、店舗の看板はなく、洒落たビルの一室にひっそりと構えていた。


 そこで俺を出迎えたのは、初老の紳士。まるで舞台に立つ俳優のように恭しい礼をしてきたかと思えば、次の瞬間には俺を値踏みするようにじっと見つめてくる。なぜか一瞬、お尻のあたりが「キュッ」と引き締まってしまった。いや、別に狙われてるわけじゃないのに。


 老紳士はやがて奥に引っ込み、一着のスーツを持って現れた。そして「こちらにお着替えを」と手渡される。言われるがままフィッティングルームに入り、着替えて姿を見せると──そこからの展開は早かった。


 俺は気づけば上質な革靴を履かされ、美容院のような椅子に座らされ、若い女性スタッフに髪までセットされていたのだ。数十分後、鏡の前に立った自分は……誰だコレ!?


「ど、どちら様ですか……?」

 間抜けな声が出たのも仕方ない。原型を留めないほどのイケメンがそこにいたからだ。


 老紳士の案内で店を出ると──さらに衝撃が待っていた。


 店の前に停まっていたのは、映画でしか見たことのないような超ロングのハイヤー。そして、その開いた扉の前に立つのは……。


 華やかなドレスに身を包み、蝶と花をかたどったコサージュを胸に飾り、上品に微笑む紗彩。まるで結婚式場の女神がそのまま降臨したかのような姿だった。


「……綺麗だ……」

 本当にそれしか言葉が出なかった。


「ありがとう、隆行さん。さあ、どうぞ」

 促されるままハイヤーに乗り込むが、車内の豪華さを堪能する余裕すらない。視線はただ、紗彩の横顔に釘付けだった。


 走ること三十分ほど。目的地は看板もない隠れ家レストラン。中に入ると、またもや初老のウェイターにじっと見つめられ、思わず尻が「キュッ」となる。いやだから、なんで俺ばかり狙われてるんだ!?


 しかし、その緊張も扉を開けた瞬間に吹き飛んだ。幻想的な水槽が壁一面に並ぶ個室。テーブルと椅子は寄り添うように並べられ、カップルのために設計されたとしか思えないムードだ。


 運ばれてくる料理はどれも見たことのない逸品ばかり。味は……語彙力が消し飛ぶほど美味い。思わず「美味い」としか言えない自分が情けない。紗彩はそんな俺を微笑ましそうに見て、時にはフォークで料理を差し出し、時にはワイングラスを俺に近づけ──って、おい、口移しって反則だろ!?


 完全に心を撃ち抜かれた俺は、気づけば食事よりも紗彩に夢中になっていた。


 そして次の目的地は、この街でも指折りのホテル。最上階のスイートルーム──いや、ペントハウスと呼ぶべき部屋だ。大きな窓から広がるのは、煌めく宝石のような夜景の大パノラマ。


 その夜のことを、俺は断片的にしか覚えていない。ただひとつ確かなのは、紗彩の「さあ、召し上がれ♡」という冗談めかした囁きと、俺たちが何度も抱き合い、心と心を結びつけたということだ。


 翌朝。眩しい光で目を覚ますと、隣にいるのは変わらず愛しい彼女。思わず「二度目の朝チュンか……」と苦笑する俺を、紗彩は小悪魔のような笑顔で見つめていた。


 そして、支払いに使われたのは黒光りするクレジットカード──年会費だけで俺の月給が吹き飛ぶ、上限なしのVIPカード。俺の予想を軽く超える金額を「ゼロが二つ足りませんよ」とさらりと笑ってみせる彼女に、ただ脱力するしかなかった。


(……やばい、本当にとんでもない子を彼女にしちゃったんじゃないか、俺……)


 そう思いながらも、心の底ではこの非現実的な幸運に、嬉しさと誇らしさを噛みしめていた。



◇◇◇



 翌朝。

 俺はついに、会社へ復帰した。


 休暇の間は――まあ、ほとんど紗彩とベタベタしていた。だがそれだけじゃない。神力なるものがどんなものなのか、二人でいろいろ試すこともできた。おかげでちょっとは自分の体に起きている変化を理解できた気がする。


「えー、本日付で企画部部長を拝命しました、篠原隆行です。出戻りですが、よろしくお願いします」


 パチパチパチパチ――。

 フロア中に拍手が広がった。


 つい数日前まで俺を追い出そうと上司と一緒に動いていた連中が、今では何事もなかったように笑顔で手を叩いている。


(調子いいなぁ……いや、これも仕方ないのか)


 考えてみれば、彼らも生活がかかっているサラリーマン。上が敵と見なせば従うしかなかったんだろう。下手に庇えば自分が標的になる。誰だって波風は立てたくないものだ。


「まあ、俺は気にしていない。水に流して、今日からは一致団結して会社を盛り上げていこうじゃないか」


 そう言うと、社員たちの表情がぱっと緩んだ。

 ――ふう、まずは第一歩、か。


 ◇◇◇


「篠宮部長、お茶が入りました」


「ありがとう、紗……いや、水無月君」


 危うく名前を呼び間違えかけた俺に、紗彩がスッと身を寄せてきて、耳元で囁く。


「うふふ。会社では気を付けてくださいね♡」


 その小悪魔めいた笑顔に、思わず背筋がゾクリとした。

 ……ダメだ。ここは会社。俺と紗彩の関係は秘密にしなきゃならない。


 そう思った矢先――。


『ピンポンパンポーン』


 社内アナウンスが流れる。


『企画部の篠宮隆行部長。至急、社長室までお越しください』


「……社長室?」


 ざわつくフロア。俺は首を傾げた。


「お父様から、何かお話があるのだと思います」

「水無月君は心当たりあるのか?」

「はい。篠宮部長が不当な解雇を受けた件まで、すでに報告は入っているはずです」


「なるほどな……。社長直々に呼び出されるなんて、ちょっと緊張するな」


 課長に仕事を任せ、俺はエレベーターへと向かった。



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