最終話 42歳バツイチ、神様になってイチャラブハーレムを作った!
豪邸の一日は、誰かの笑い声から始まり、誰かの甘えで終わる。
社長就任から数年――俺の生活は、かつて想像もできなかったほど賑やかで、そして幸せなものになっていた。
――まずは紗彩
「隆行さん、今日の予定はこちらです。会議は午後二時から、その後に取材対応が」
デスクの横で、紗彩が手帳を広げて俺に差し出す。表情は真面目で、声も張り詰めている。秘書としての顔だ。
だが、書類を片付け、誰もいない応接室に移ると――
「……お疲れさまです、隆行さん。今は、秘書じゃなくて恋人の私に甘えてください」
そっと椅子の背から身を乗り出し、俺の肩に頬を寄せてくる。
社長令嬢としての誇りも、秘書としての気丈さも、全部脱ぎ捨てて。
ただ一人の女として俺にしがみついている。
「ありがとう、紗彩。いつも支えてくれてるな」
「……支えてもらっているのは、私の方なんです。あの日、絶望していた私に手を伸ばしてくれたのは、隆行さんでしたから」
彼女の声が震えている。過去を思い出して涙を浮かべ、それでも笑顔で言う。
――正妻として、恋人として。俺のそばにある一番確かな温もりだ。
――次に深雪
夜。豪邸の一室で、深雪が湯上がりの姿で座っていた。
窓の外は庭園の明かりに照らされ、淡い月明かりと調和している。
「隆行さん、少し休んでください。お疲れでしょう」
穏やかな声に誘われ、俺は畳に座る。深雪は湯上がりの頬をほんのり赤らめながら、そっと俺の肩を抱いた。
「私は……隆行さんを上乃介様の代わりにしているつもりはありません」
唐突に出たその言葉に、思わず彼女を見つめ返す。
「うん、知ってるよ。深雪は深雪だ」
「ええ……。私は、隆行さんに愛されて、やっと救われました。あの頃は心の半分が空っぽで……それでも、今はこうして満たされています」
母のような包容力で、女としての柔らかさで。
彼女は静かに俺を支えてくれる。
その温もりに触れるたび、俺もまた彼女に救われてきたのだと痛感する。
――フィル
翌日。社長室のソファに腰を下ろした俺の膝の上に、当たり前のようにフィルが乗ってきた。
「隆行。お昼寝する」
「……仕事中なんだけどな」
「問題ない。フィルはリモート勤務」
胸を張って断言し、そのまま俺の膝に頭を乗せて目を閉じる。
やわらかい金髪が揺れ、甘い寝息が落ちてくる。
部屋の隅にいた紗彩が眉をひそめて言う。
「ちょっとフィル! そうやってすぐ隆行さんを独り占めして……!」
「独り占めじゃない。膝は大きい。二人でも大丈夫」
「はぁ!?」
フィルのマイペースすぎる返しに、思わず笑ってしまう。
おっとりして、ずれているのに、不思議と憎めない。
彼女がいるだけで空気が柔らかくなり、心が軽くなる。
世界的ニュースをさらった支社長も、今はただ俺の膝枕で眠る少女だった。
――義娘の玲緒奈
夜。屋敷のリビングでソファに腰掛けていると、玲緒奈がこっそり隣に座ってきた。
「お父さん、今日もみんなに甘えられてばっかりだったね」
「まあな。賑やかでありがたいよ」
「……ずるいなぁ。私だって恋人なんだから、もっと前に出たいのに」
娘らしい拗ねた声。だけどその瞳は恋人としての強さを秘めている。
「いいんだぞ。恋人として甘えても」
そう言うと、玲緒奈は頬を染め、勇気を振り絞るように俺の腕に抱きついてきた。
「……じゃあ、今はお父さんじゃなくて、恋人として、ギュッてして?」
甘える仕草は娘らしくもあり、女としても真っ直ぐ。
「よし、ギュッてな」
「ん……ありがと。やっぱり私、恋人としてもお父さんが一番好き」
抱きしめた温もりの中で、玲緒奈は小さな声で囁いた。
父と娘の絆に、恋人としての愛情が重なって――俺の心は、また一段と満たされていくのだった。
――ミルフィ
海外事業部の責任者として会議を取り仕切っていたミルフィミー・アーガスは、昼休憩になると真っ先に俺のところへやってくる。
「HEY! たかゆきサンッ!」
金髪ロングを揺らして駆け寄ると、俺の首に飛びついてギュウッと抱きついてきた。
「ミルフィ、今日の商談はどうだった?」
「完璧デース! 敵の心を読むのは、元スパイの十八番デース! 部下たちからも大人気、ミルフィ尊敬されまくりデース!」
自慢げに胸を張るが、最後には目を輝かせてこうねだる。
「だからご褒美、ちょうだいデース! ハグとチューチュー、必須デース!」
「……ほんと甘えん坊だな」
俺が頭を撫でると、彼女は子犬のように嬉しそうに目を細めた。
豪快で社交的なのに、俺の前ではただの甘えたがり。そんなギャップが愛おしくて仕方ない。
――サリーシャとマリーシャ
放課後。制服姿のサリーシャとマリーシャが並んで俺の前に立つ。
「隆行さん、ご主人様!」
「今日も一緒に宿題みてください!」
二人揃って元気いっぱいにハモる。
文化や習慣の違いに戸惑いながらも、双子は学園生活を満喫しているらしい。
「先生に呼ばれて……また『スカート丈が短すぎます!』って叱られちゃいました!」
「でも、隆行さんの国の制服、可愛いから好きです!」
嬉しそうにスカートを翻す二人に、周囲の視線は釘付けだ。
「お前たち……ほどほどにな」
「「はぁい!」」
双子は声を揃えて笑い、俺の両腕に同時にしがみついてきた。
明るくて真っ直ぐで、少し危なっかしい。だけどその眩しさが、この家をますますにぎやかにしてくれている。
――桜子
広大な庭園を背景に、桜子が高らかに宣言する。
「おじ様、この邸宅は――わたくしがあなたのために作り上げた王国ですわ!」
胸を張り、誇らしげに微笑む桜子。その姿は気高く、そしてどこまでも一途だ。
「桜子ちゃん、ほんとに大げさだな」
「大げさではございません! わたくしにとって、ここでおじ様と過ごす時間こそが人生の全てなのですから」
気位の高さと甘えん坊な本音。その両方を見せてくれる彼女の可愛さに、思わず俺も頬を緩めてしまう。
――沙織
隣でそんな桜子を見つめる沙織は、柔らかに微笑んでいた。
「桜子ちゃん、本当に幸せそうですね」
「沙織ちゃんも、な」
「……はい。私も、おじ様と出会えて……桜子ちゃんと一緒に歩んでいけることが、とても幸せです」
友を想う優しさと、自分の想いを貫く芯の強さ。
沙織は桜子と肩を並べるように俺の腕にそっと寄り添ってくる。
「これからも……二人で支えていきますね。大好きです、おじ様」
その言葉に俺は強く頷いた。二人は友であり、恋人であり――かけがえのない家族だ。
――真理恵
夜、皆が笑い合う食卓を見渡しながら、真理恵がしみじみと呟く。
「こんな日が来るなんて、夢みたい……」
「真理恵」
「高校の頃、あんなに遠く見えていた篠宮君と……こうして家族として肩を並べるなんて」
彼女の瞳は、かつて「学園のマドンナ」と呼ばれていた輝きのままだ。
「これからは、もう誰にも振り回されずに……あなたと娘達と、穏やかに生きていきたいわ」
「そうだな。俺も……そのために全部を守る」
真理恵は安心したように微笑み、俺の手を包み込んだ。
――七菜香
そして最後に、元気いっぱいの声。
「おじさーんっ! 今日のご飯、七菜香が作ったんだぞ!」
無邪気な笑顔で駆け寄ってくる七菜香。
「すごいな、七菜香ちゃん。おじさん、楽しみにしてるよ」
「えへへ……七菜香ね、中学のときからずっと思ってたんだぞ。おじさんは神様みたいだって」
その瞳は尊敬と恋心でキラキラ輝いている。
「だから、これからもずっと一緒にいるんだぞ! お姉ちゃんやママと一緒に!」
「ああ、約束だ」
俺が頭を撫でると、七菜香は子犬のように嬉しそうに抱きついてきた。
◇◇◇
「おじ様、この邸宅はわたくしがあなたのために作り上げた王国ですわ!」
――桜子が誇らしげに胸を張る。
「隆行さん……私は、この王国を一生かけて守り抜きます」
――正妻として寄り添う紗彩の誓い。
「ふふ……あなたがいれば、私はもう二度と寂しくありません。ここは、私にとっても安らぎの城です」
――未亡人を救い、今は共に歩む深雪の微笑。
「問題ない。フィルは遊ぶ。のんびりするのが、フィルの仕事」
――相変わらずマイペースなフィルの一言に、皆が笑った。
「隆行さん、私達も……ご主人様のために働きます!」
「ご主人様の王国を、盛り上げます!」
――声を揃える双子のハーモニー。
「HEY!たかゆきサン! ミルフィは世界中から富を引っ張ってくるデース! この王国、もっとデカくするデース!」
――エセ外人調で腕を振り上げるミルフィ。
「お父さん……私、この王国で一番に甘える娘でありたいな」
――頬を赤くして腕に絡む玲緒奈。
「おじさん! 七菜香はおじさんの王国の一番元気な兵隊なんだぞ!」
――無邪気な七菜香の叫び。
「篠宮君……いえ、隆行君。ここまで来られたのは、あなたの強さと優しさがあったから。私も、この王国の一員として寄り添いたい」
――母として、女としての真理恵の決意。
それぞれが俺の隣に立ち、笑顔をくれる。
――この大邸宅こそ、俺と彼女達の王国。
賑やかで、時にドタバタで、そして温かい。
「これが……俺の新しい日常か」
胸いっぱいの幸せを噛み締めながら、俺は最愛の人達を抱き寄せた。
~Fin~




