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42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!  作者: かくろう


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第1話 老婆から魔法薬をもらう男

 俺は篠宮隆行という。

 職業はサラリーマン。42歳の万年課長。

 まあ、凡庸型の平均値であり、特質すべき点もない。と、自分では思っている。

 男やもめの一人暮らし。

 つまりはバツイチだ。一応別れた妻との間に娘がいるが、その子も元々連れ子なので血は繋がっていない。


 自己紹介は以上だ。



 突然だが、俺は今人生で最大に不可解な事態にさらされていた。



 う~ん、ここはどこなんだろうか。


 真っ白で何もない。

 俺は先ほどまでオフィスで残業をしていたはずだ。机に突っ伏して仮眠をとろうとした記憶はあるのだが、そこから先を覚えていない。


 目が覚めるとこんなところにいた。


 そうか、あれか!ブラック企業のサラリーマンが過労死して異世界に転生するってやつだ!!


 いよいよ俺も異世界でチートを駆使して冒険者になってハーレム作ってウハウハ生活するときがやってきたのだ!



「……」



 阿保らしい。大体うちは別段ブラック企業でもない。俺は労働基準法に準じた働き方しかしていないし、今回だってたまたま案件が重なって夜中までかかっているが、それだって1年に一回あるかどうかだ。


 職場環境には恵まれている。人間関係もそんなに悪くはない。

 女性には最近あまり縁がなくてご無沙汰だが、そんな性欲にがっつく年齢でもないしな。


 異世界に転生とか、苦労の方が多そうだ。それこそ神様が出てきて反則級のギフトスキルでも授けてくれないと俺みたいな凡庸型で量産型ザ〇みたいな中年オヤジはあっという間に詰みだろう。




 と、現実逃避をしているとやがて歩き続ける先にぼんやりとした明かりが見えてきた。

 特に目印もないこの謎空間でそんなものが見えたら行ってみるしかないだろう。怖いけど。


 俺は若干急ぎ足でその光の方向へと向かっていった。


 近寄ってみるとそれは家だった。

 丸いドーム型のファンタジックなデザインをしている建物で、現実には見たことのない形をしている。少なくとも日本では見たことがない。


 いや、あるな。某作品で放り投げると煙と共に色々出てくるカプセルの家に似ている。

 これはもっと中世的なデザインだが。


 小さな窓からは揺らめきのような光が漏れており、暖炉みたいなものでもあるのだろうかと想像できる。


 この得体のしれない空間でいかにもここを目指してくださいと言わんばかりの一戸建てファンタジック建造物。

 中にはどんな奴がいるのか想像すらできないな。


 俺は中にどんな奴がいるのか恐る恐る小窓から中を覗いてみることにした。

 しかし位置が若干高いのと窓が意外と奥ばっているので家の中の様子を見て取ることは出来ない。


 だがわずかに中の明かりが揺らめいて動いているように見える。この事から家の中に誰かがいることは確実だ。


 一体どんな存在なのか。人間かどうかも分からない。何しろこんなヘンテコ空間に住んでいるような存在だ。

 まともとは思えない。


 俺は怖かったが思い切って中を覗いてみることにした。


 入り口には引き下げるタイプのドアノブが付いており、俺のマンションのドアノブによく似ている。

 そぉーーと、そぉおーと、慎重にノブに指をかけたところで・・・・



「人ん()の前で何をこそこそしているんだい!とって食ったりしないからさっさとお入り」


 しわがれた老人のような声が突如として響き、俺は驚いて思い切りノブを引き下ろして扉を開いてしまった。

「どわっ」

 後ろにすっころぶような形で転倒してしまい、起き上がって中をのぞくと、声で想像した通りのしわがれた老婆がアームチェアに座ってこちらを睨んでいた。


「どうしたんだい。さっさとお入り」


「あ、ああはい。お邪魔します」

 俺は老婆の迫力ある声に思わず従ってしまう。

 なんだか身体が勝手に動くような不思議な感覚だ。


「それで、ここに何しにきたんだい?」

「えっとですね……」


 俺はここに至るまでの経緯を話して聞かせた。

 かいつまむ必要もなく気が付いたらここにいた。以上。


 だってそれ以上言うことなんてないもんな。


「なるほどのぅ。お前さんは時折現れる”迷い人”か」

「迷い人?」

「そう、ここはな、おぬしの立場で言えば、いわゆる異世界という奴じゃ」

「い、異世界?」


 まさかのガチで異世界転生という奴だった。

 いや、まだ転生とは限らないぞ。俺が死んでいるかも分からないのだ。


「正確に言うなら異世界とおぬしの世界の狭間のような場所じゃ。魔法でしょっちゅうドンパチやっているから空間にひずみが生じて時々向こうから人はやってくるが、生きたまま来るのは珍しいの。大抵は向こうで死んだ瞬間に魂が肉体を離れるタイミングに運悪く巻き込まれることがほとんどじゃ。恐らくお前さんは一時的に意識がこっちに飛んできておるのじゃろう。これもまた時折偶然に起こることがある」

「あ、俺死んでないんだ」

「あん?」


 言ってることの半分も分からなかったが、とりあえず俺自身は生きているようで安心した。


「いや、てっきり死んで異世界に転生する展開になるものかと」

「ああ、そういうことを言い出すやつは最近多くなってきたのう。期待せんほうがええぞ。お前さんがあっちの世界に入ったらものの数秒で魔物の餌じゃ。あるいはむこうでは珍しい黒目黒髪種族だから奴隷に売られて変質的趣味の貴族に掘られるのがオチじゃ。悪いことはいわんからやめておけ。ワシのいうことを聞かずに『異世界チートで無双する』とか訳の分からん事をいってパックンチョされたバカが何人もおる」

「そうか。じゃあやめておこう」

「随分とあっさりしておるのう」

「いやぁ、確かに異世界ものの作品は好きだけどさ、自分がそっちに行こうとは思わないですよ。まだ見たいアニメが沢山あるし。お袋もまあまあ年だから残していくわけにもいかないんでね」

「はっはっは。いい判断だよ。最近の若い奴にしては謙虚なこった。親を大切にする姿勢も気に入った。本来はすぐにでもお帰り願うのじゃが、今日は特別に(ばあ)が手土産をもたせてやろう」

「あ、これはご親切に」


 よかった。一時はどうなるかと思ったが、どうやら無事に帰れるらしい。




 婆さんは暖炉とは反対側にある棚の一角から何やら小瓶を取り出してテーブルの上に置いて見せた。

 大きさはジュースの缶と同じくらいだな。


 透明な小瓶の中には爽やか系の色をした液体が入っていた。


「うーん、色はオレンジジュースみたいな(だいだい)色だな。これは一体なんですか?」

「こいつはな、飲んできっかり一週間、運がとてつもなく良くなる魔法の秘薬じゃ。最近発見された新種の薬草を原料にワシが開発したとっておきの魔法薬じゃよ」

「ぉお、なんか凄そうだ。運がよくなるってのがあいまいでよくわかりませんが」

「まあそっちの感覚じゃとそうじゃろう。じゃがわしらの世界では運とはステータスで管理する成長パラメータの一つじゃ。魔法やスキルで一時的に強化することで戦闘を有利に進めたりも出来る、と、お前さんには関係ない話じゃな。一つ欠点があるとすれば、原液でのんでしまうと効果が切れなくなってしまううえに強すぎて何が起こるか分からんというものじゃ」

「え?それってアブナイ薬なんじゃ」

「安心せい。これはワシが長年にわたり魔法薬研究一筋に培った経験をもとにして理想的な濃度に希釈したものじゃ。その間夢のような幸運がお主にまっておるじゃろう。効果が消えれば一時の夢のごとく元の状態に戻り副作用もない。ま、眉唾じゃろうから別に飲まんでもええ。いらんかったら捨ててしまえ」

「まあ、せっかくもらったものだしな。ありがたくいただいておきますよ」


「お前さん人が良すぎるといわれることはないか?」

「う……よく言われる」

「へっへっへ。そんなところも気に入ったわい」


「ところでその原料になっている植物ってなんて名前なんですか?」

「ゴツゴーシュンギクという」

「待ってください!その名前は非常にマズい気がします。いや、ほんとにあれと同じだったら凄いですけど」


 それ以上は聞いちゃいけない気がしたので原料に関しては追及しないことにした。



 俺は結局老婆から小瓶を受け取り持って帰ることにした。

 風貌は怪しいが悪い人ではなさそうだ。

 長年中間管理職をしていると人を観察する癖が身についてしまう。


 この人は多分、俺みたいに異世界に迷い込もうとしている人の道案内みたいなことをしているのではなかろうか。

 まあわからんけどな。


「さて、そろそろ目も覚めるじゃろう。そうそう、向こうで薬を使う場合は帰って三日以内につかうんじゃぞ。そうでないとただの苦い水になってしまうからな」

「わかりました」


 老婆は壁に立てかけてあった大きな樫の杖を手にもって俺の頭にコツンと乗せる。

 何をするのか眺めていたが、何やらブツブツと呪文のようなものを唱え始めた。


「息災でな。まあ二度と会うこともないじゃろうが、達者でくらせ」

「ええ、いろいろお世話になりました」


 老婆はしわの寄った顔をニコリとさせながら手を振った。

 その人の良さそうな笑顔を見ながら、俺の視界はドロップアウトしていった。



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