自由の国ーアウレイヤ連邦
森を抜けた向こうに灯りが見えた。
レオンが足を止め、指をさす。
「あれが――アウレイヤ連邦です」
黒瀬は目を細める。
城壁の上に灯る明かり。石造りの門。行き交う人影。
(……街だ)
セラが伸びをする。
「やっと着いたー! お腹すいた!」
ミリアも小さく頷く。
「私も、すきました……」
門をくぐると、石畳の通りが広がった。
店先の明かり。香ばしい匂い。冒険者と思しき者たちが笑い、酒を酌み交わしている。
黒瀬は思わず足を止めた。
「……綺麗ですね」
セラが振り返る。
「いいとこでしょ!」
レオンが穏やかに笑う。
「まずはギルドへ行きましょう」
巨大な建物の前に立つ。
木と石で造られた重厚な外観。扉の上には剣と盾の紋章。
中へ入ると、ざわめきが広がった。
依頼掲示板。酒を飲む冒険者。受付カウンターに並ぶ列。
黒瀬はその光景を、静かに見渡す。
レオンたちはカウンターへ向かった。
受付嬢が微笑む。
「お帰りなさい、レオンさん」
「はい、キーナさん、本日の依頼報告です」
簡潔に状況を伝え、魔石を提出する。
キーナは手際よく確認し、差し出す。
「こちらが報酬になります」
レオンは頷き、そして黒瀬を示す。
「それと……こちらの黒瀬さんですが」
「遠方から来られたばかりで、ギルド登録をお願いしたいのですが」
キーナは黒瀬を見る。
柔らかいが、観察するような視線。
「承知しました」
レオンが黒瀬へ向き直る。
「この後、お時間はありますか?」
「よろしければ、お食事をご一緒に。改めてお礼をさせてください」
黒瀬は少し考え、頷く。
「お礼なんて、では、お言葉に甘えて…」
セラが跳ねる。
「やったー!」
ミリアも穏やかに微笑む。
「登録が終わるまで、お待ちしておりますね」
「では、後ほど」
三人は手を振り、奥の席へ向かった。
黒瀬はキーナの前に立つ。
「では、登録のご案内をいたします」
キーナの声は落ち着いている。
「まず、お名前と出身地を」
「黒瀬、です。出身は……東の方です」
キーナは軽く頷く。
「現在のランクはFランクからの開始となります。
依頼を達成することで昇格していきます」
黒瀬は質問する。
「ランクが上がると、何が変わるんですか?」
「受けられる依頼の難度が上がります。報酬も比例して増えますが、危険度も増します。
緊急依頼の場合、ランクを問わず招集がかかることもあります。
拒否も可能ですが、正当な理由が必要です」
黒瀬は静かに聞く。
「魔物の素材は、すべてここで換金できるんですか?」
「はい。魔石は基本通貨のようなものです。
品質により価値が変動します」
キーナは小さな金属製の札を取り出す。
「こちらがギルドタグです」
黒瀬は受け取る。
表には刻印と、“F”の文字。
「常に携帯してくださいね、身分証明と、ランクの証になりますので、
紛失にはご注意を」
さらに説明が続く。
「ギルド宿舎の利用も可能です。
こちらが部屋番号です。鍵はタグと連動しています」
黒瀬はわずかに驚く。
「……便利ですね」
キーナは微笑む。
「はい、アウレイヤは、冒険者のための町ですから」
登録書類を確認し、最後に言う。
「これで正式に、ギルド所属となります」
「ありがとうございます」
黒瀬はギルドタグを首にかける。
金属が胸元で触れる。
(……冒険者、か)
後ろから、セラの声が聞こえる。
「黒瀬さーん! 終わったー?」
黒瀬は顔を上げる。
「……はい」
キーナは静かに言う。
「良い冒険を」
黒瀬は小さく頷き、三人の元へ向かった。
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