3人の冒険者
四人は森の小道を進む。
黒瀬は歩きながら、先ほどの緑色の個体を思い出す。
「さっきのは、何なんですか?」
「あれはゴブリンと呼ばれる魔物です」
「そして剣を持っていた個体は、ゴブリンナイトと呼ばれています。
通常個体よりも体格が大きく、知能もやや高い厄介な存在です」
「なるほど……」
セラが不満げに声を上げた。
「でもさ!あんなにいるなんて聞いてないよ!
せいぜい三、四匹って依頼書に書いてあったのに!
完全に情報ミスだよ、あれ!」
レオンが苦笑する。
「森は生き物だからね。状況は常に変わるよ」
ミリアが静かに続ける。
「……本当に、危ないところでした。
黒瀬さんが来てくださらなければ、私たちはどうなっていたか、本当に、ありがとうございます」
そう言って、柔らかく微笑む。
黒瀬は視線を逸らす。
「……運がよかっただけです」
「それにしても、あの威力、素手であれほどの打撃……見たことがありません」
ミリアも頷く。
「強化魔法の類でしょうか?」
黒瀬は、ふと先ほどの光景を思い出す。
淡い緑の光。傷が閉じていく様子。
「魔法……さっき、ミリアさんが使っていたもの、あれが、魔法なんですか?」
ミリアは少し驚き、それから答える。
「はい。初級回復魔法ですが……大したものではありませんよ」
「いや、すごいです、傷が、治るなんて、見たことがないので」
「……あ、ありがとうございます」
と、ほんのり頬を染めた。
セラが目を丸くする。
「え、黒瀬さん、魔法見たことないの?」
「……ないですね」
三人は顔を見合わせた。
セラがにやりと笑う。
「へぇ〜、変わってるね、黒瀬さん」
レオンは穏やかに言う。
「いずれ慣れることになりますよ」
黒瀬は、前を見つめたまま答えた。
「そう、なんですかね」
森を進みながら、セラが横から覗き込んでくる。
「そういえばさ、黒瀬さん、遠い国から来たって言ってたよね? 冒険者なの?」
黒瀬は少し首を傾げる。
「……冒険者?」
「え!? 冒険者も知らないの!?黒瀬さん、もしかして……いいとこの貴族?」
「セラ!憶測で決めつけるのは、よくありません」
ミリアが無表情でチョップを落としていた。
「いたっ!?でもだって、冒険者知らないなんて人いる!?」
黒瀬は少し考え、淡々と言う。
「冒険者というより……旅人、と言えばいいですかね」
「ほらやっぱり! 貴族が身分隠して旅してるやつ!」
「セラ!」
「ごめんなさい…」
レオンが小さく咳払いをした。
「では、ギルドの登録はされていない、ということですね?」
「……ギルドって、なんですか?」
三人が同時に止まる。
セラが両手を上げた。
「やっぱおかしいって!黒瀬さん、どこから来たの!?」
「セラ、落ち着いてください」
ミリアがため息をつく。
レオンが説明を始めた。
「ギルドとは、冒険者を統括する組織です。
魔物討伐や素材収集、護衛依頼などを仲介し、報酬を支払います。
依頼をこなすことでランクが上がり、受けられる仕事も増える仕組みです」
「報酬とは?」
セラが元気よく答える。
「タリスっていう硬貨だよ!金・銀・銅があって、金タリスが一番価値高いの!
ミリアが補足する。
「魔物の体内から採れる“魔石”も換金できます。素材も部位によって価値が異なります。」
レオンが頷く。
「先ほどのゴブリンからもいくつか魔石を回収しときました。アウレイヤに着けば、換金できます」
(……魔物に、石があるのか)
セラが得意げに胸を張る。
「ちなみに今向かってるアウレイヤ連邦は、冒険者の町!
何にも縛られず、自由に活動できるんだよ!」
レオンが続ける。
「武のヴォルタニア、政のダーリス、信仰のルビア神政国と違い、アウレイヤは、自由と実力主義を掲げています。アウレイヤは、自由と実力主義を掲げています。力があれば、身分も出自も問われません」
黒瀬は静かに前を見る。
「……自由、ですか、いいですね」
レオンは穏やかに微笑む。
「もしよろしければ、ギルド登録までご案内します。初めてなら、不安も多いでしょうから」
セラも勢いよく頷く。
「うんうん!したほうがいいって!黒瀬さんならすぐ有名になっちゃうよ!」
ミリアも柔らかく言う。
「困ったことがあれば、お力になれると思います」
黒瀬は少しだけ視線を落とした。
「では……お願いします」
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