表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神を宿す拳で、異世界を歩く  作者: 朝霧ネル
第一章 赤き刻印の目覚め
5/13

出会い

しばらく進むと、地面の様子が変わってきた。

湿った土は踏み固められ、草は不自然に倒れている。


(人が通った跡か?)


森の向こうから、かすかな声と音が聞こえる。複数人の声。

そして――金属がぶつかり合う、甲高い音。黒瀬は足を止める。


「誰か、いるのか?」


低く呟き、音の方向へ慎重に進む。枝を払わず、音を立てず。茂みに身を伏せ、そっと覗く。

そこにいたのは――三人の人影。そして、それを囲む多数のさっきの個体。


(さっきのやつらか…いや、似てるけど違うやつもいる…)


数が多い。そして、一回り大きい個体も混ざっている。

粗末な棍棒ではなく、錆びた剣を持つ個体もいる。

ギィギィと喉を鳴らし、三人を取り囲んでいた。黒瀬は状況を観察する。


ひとりは、青年。剣を構え、前に立っている。肩で息をしながらも、二人を背に庇って戦っている。

背後には――淡い光を帯びた杖を持つ少女。

もう一人は弓を持っているが、足を怪我しているのか、膝をついている。


(一人、負傷してるのか)


青年の剣が、個体の一体を斬り伏せる。だが数が多い。

左右から同時に襲いかかられ、防ぎきれない。青年の腕から、血が飛ぶ。


「っ……!」


その衝撃で、剣を取り落とした。周囲の個体が、一斉に唸り声を上げる。

錆びた剣を持つ個体が、ゆっくりと振りかぶる。青年は、歯を食いしばるが、動けない。


(悩んでる暇ないか…くそ)


黒瀬の呼吸が、わずかに深くなる。錆びた刃が、振り下ろされようとした瞬間――黒瀬は、地面を蹴っていた。一瞬で間合いを詰め、振り下ろされる腕を、掴む。そのまま、腹へ拳を叩き込む。

個体の身体が浮き、背後に転がり吹っ飛ぶ。

青年も、少女たちも、突然現れた黒い影を見つめていた。黒瀬は、構え直す。

個体たちは一瞬怯んだが、すぐに唸り声を上げて襲いかかってくる。


「ギィッ!」


棍棒が振り下ろされる。半身でかわし、顔をつかみ地にねじ伏せる。すぐさま背後。気配で察知し、振り向きざまに肘打ち。牙が飛び、緑の体が転がる。


(隙だらけだけど、きりがない…攻めに転じるか…!)


剣を持った個体が突きかかる。黒瀬は刃を紙一重で避け、腕を掴んで体勢を崩し、膝蹴り。最後に拳を落とす。森に、しばらく戦闘音が続き、やがて――静寂。倒れた魔物を確認し、黒瀬はゆっくりと息を吐いた。


(……終わったか)


(さすがに刃物前だと、緊張するな…)


腕に、じん、と痺れが残っている。深く息を吸い、落ち着かせる。


そのとき。


「……あの」


振り向くと、先ほどの青年が立っていた。腕からはまだ血が滲んでいる。


「助けていただき、ありがとうございます」


礼儀正しく、深く頭を下げる。黒瀬はわずかに視線を逸らす。


「いえ……それより、腕。大丈夫ですか?」


「はい、お気遣い、ありがとうございます。」


「レオン! じっとしててください!」


後ろから駆け寄ってきた少女が、青年の腕を掴む。


「ヒール」


緑色の光が、穏やかに灯る。淡い光が、傷口を包み込む。皮膚が、ゆっくりと閉じていく。血が止まり、傷跡さえ薄れていく。


「おぉ……すごい、ですね」


思わず声が漏れる。少女は、少し照れたように微笑んだ。


「回復魔法です。軽傷なら、これで大丈夫です」


「ありがとう、ミリア」


青年は改めて姿勢を正す。


「改めまして。私はレオン・ヴァルク。冒険者です」


穏やかな瞳を向けてくる。続いて、弓を持った少女が駆け寄り、にかっと笑う。


「私はセラ・フィンネル! 助かったよ、本当に!」


最後に、杖を持った少女が丁寧に一礼する。


「ミリア・ハインツと申します。助けていただき、ありがとうございました」


三人の視線が、黒瀬に集まる。


「あぁ…えっと…黒瀬、と言います」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ