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闘神を宿す拳で、異世界を歩く  作者: 朝霧ネル
第一章 赤き刻印の目覚め
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拳と闇刃

ルヴィアは一瞬で状況を測ると、ミリアへ視線を向けた。


「あなた、回復術師ね」


ミリアは虚ろな目のまま、セラを抱きしめている。


「……なんで……なんで……」

「聞いてるの?」


ルヴィアは躊躇なく、ミリアの胸ぐらを掴んだ。


「しっかりしろ!おまえが助けなければ仲間は死ぬ!冒険者なら不測の状況くらい覚悟しとけ!」

わかったら早く、二人に回復魔法をかけろ!」


黒瀬は思わず息を呑む。


(この人……冷静だ、きっと、過酷な環境で生きてきたんだ)


ミリアの焦点が戻る。


「……っ、はい……!」


セラの傷に両手をかざす。

淡い緑光が滲み始める。

レオンが歯を食いしばる。


「俺も……まだ、戦えます……」


立ち上がろうとするが、膝が崩れる。


「無理をするな、私は前に出る。黒瀬は三人のそばに」


そう言うとルヴィアは駆け出す。


「ルヴィアさん!」


(三人を守る、それだけを考えろ)

(俺が突破されれば、三人は死ぬ)


ルヴィアの剣が闇を纏う。

黒い霧のような魔力が刀身を包む。


「《影纏え・夜刃えいまとえ・やいば》」


次の瞬間、姿が消える。

闇を引き裂く軌跡だけが残る。

魔物の身体が、遅れて崩れる。


「……すごい」


だが。一体倒せば、二体出る。

裂け目から溢れる影。


黒瀬も拳を振るう。昨日の個体より明らかに耐久が高い。


「っ……!」


拳に痺れが走る。

そのとき。ミリアの背後。

魔物の剣が振り下ろされる。


「……!」


間に合わない。

そう思った瞬間。

闇が走る。剣ごと魔物が断ち切られる。


「ありがとうございます」

「問題ない、それにしても、どこから湧いて出てる…」


ルヴィアの肩が上下し、呼吸が荒い。


(これは……力を借りる時か)

(闘神ゴウラ……力を貸してください)


(……)


(……貸してください)


(……)


何度も呼ぶ。

だが――返答はない。


黒瀬の奥歯が軋む。


「くそ……!」


迫る魔物を打ち抜く。だが数が減らない。

裂け目は、まだ開いたままだった。


黒瀬は痺れる拳を、強く握り締めた。


(……自分で乗り越えろってことですか)


「ルヴィアさん、交代です。俺が前に出ます」


ルヴィアが即座に否定する。


「何を言っている。私が前線に出る。だから黒瀬は――」

「俺を…舐めないでください」


黒瀬は、わずかに笑った。

次の瞬間、飛び出す。

魔物の群れへ一直線。


低く潜り、足を払う。

崩れた個体の顎を打ち抜く。

背後からの斬撃を身体を捻って避け、肘で喉を潰す。


「なんだ、あの身のこなし…駆け出しじゃ、ないのか……?」


レオンは膝をついたまま、ミリアの回復魔法を受けながら息を整える。


「不思議な方ですよね……」


ミリアも小さく頷く。


「ええ……」

「ルヴィアさん、先程は……ありがとうございました」


ルヴィアは視線を前に向けたまま言う。


「礼はいい。立て直せただけで十分」


セラが、うっすらと目を開く。


「黒瀬……さん……来てくれたんだ……だったら……安心、だね……」


薄く笑い、再び目を閉じる。

その言葉に、ルヴィアの視線が揺れる。


(何者なんだ)


拳は赤く染まり、皮膚が裂けている。

腕にも深い切り傷。血が滴る。


「ルヴィアさん、こちらは大丈夫です。黒瀬さんを、お願いします!」

「わかった、危うい時はすぐに呼べ」

「わかりました」


黒瀬の横へ滑り込み、闇を纏った刃が閃く。

魔物が次々と崩れる。

やがて。最後の個体が地に沈む。

広場には、大量の魔石と静寂。


だが。


足元の魔法陣は、消えない。

淡く光り続けている。


「終わったのか…」


「わからない…でも、気を抜くな黒瀬」


そのとき。


パン、パン、と。

場違いな拍手が響いた。


「いやぁ、いいものを見させていただきましたよ」


広場の奥。白装束の男が、ゆっくりと姿を現す。

穏やかな笑み。だが、その目は冷たい。


「想定以上の収獲でしたよ。特にあなた、実に興味深い…」


視線が黒瀬に向く。

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