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闘神を宿す拳で、異世界を歩く  作者: 朝霧ネル
第一章 赤き刻印の目覚め
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初依頼

ギルドの朝は、静かだった。

黒瀬は掲示板の前に立ち、依頼書を眺めていた。


薬草採取。街道の見回り。簡単な雑務。

どれも派手さはない。


「黒瀬さん、おはようございます。初依頼ですね」


振り返ると、キーナが穏やかに微笑んでいる。


「おはようございます、キーナさん。どれを受けるべきか、正直わからなくて、おすすめはありますか」

「そうですね、まずは薬草採取なんかがおすすめですよ」


キーナはカウンターの下から一冊の本を取り出した。


「あと、昨日お渡しするのを忘れていました。冒険者入門書になります」

「入門書、ですか」

「この地域の薬草や低級魔物の特徴がまとめてあります。最初はこれを読んでから動くと安心ですよ」

「ありがとうございます」


表紙には簡素な文字。


《アウレイア周辺 基礎知識》


「今日はこの依頼はいかがですか?街の北西の森です。危険度は低いですが、ゴブリンが出ることがあります」

「ゴブリンですか…わかりました」

「無理はしないでくださいね」

「はい。行ってきます」


黒瀬は歩きながら入門書を開いた。

葉の形。根の色。採取方法。


(勉強はあまり好きじゃないけど、こういうのは何故か嫌いじゃない)


森は、昼の光をやわらかく抱いていた。

黒瀬はしゃがみ込み、入門書と見比べる。


「……鋸歯状の葉、茎は淡い紫。たぶん、これだよな」


根を傷つけないよう、ゆっくりと引き抜く。

土を軽く払って布袋へ。

二つ、三つ。


「ちょっと取りすぎたかな、まぁ、多すぎる分にはいいよな」


一息つき、木陰へ移動する。

背を幹に預け、入門書を開いた。


《ゴブリン》

《夜行性、集団行動が多い。粗雑な武器を扱う》

《討伐時は急所を狙え》


ページをめくる。


《灰狼》《角兎》《森蜥蜴》

特徴、習性、弱点。


(頭にすっと入ってくるな)


一度読んだだけで、頭に残る。

黒瀬は指を止めた。


「妙だな」

「ゴウラさん。これも、あなたの影響だったりします?」


返事はない。

黒瀬は小さく息を吐いた。


「返事なしですか……まあ、慣れてますけど」


前の世界でもそうだった。

そもそも、友達と呼べる存在もいなかったし

話す以前に、誰も近寄ってこなかった。


本を再び開く。

今度はダンジョンの項目。


《灰牙の迷宮》

《全九階層。駆け出し冒険者向け。》

《過去に大規模異変はなし》


(……異変は、なし、か…レオンさん達、大丈夫だよな…)


ページを閉じる。

森の奥を一度見やり、立ち上がった。


「よし」


布袋を木の根元に置く。

黒瀬は大木の前に立つ。

布袋を脇に置き、拳を握った。


(実戦を想定しろ。止まるな。隙を見せれば殺される)


親父の声が、記憶の奥で蘇る。

一歩踏み込む。拳を打ち込み、すぐに位置をずらす。

背後からの攻撃を想像し、身体を捻る。

低く構え、蹴りを放ち、間合いを切る。

常に、次を想定する。敵は一体ではない。

囲まれている想定で、回る。


(力みすぎるな、余計な力を抜け)


拳が幹に打ち込まれるたび、鈍い音が森に響く。

打ち込むたび、威力が上がってくのを実感する。


「ふぅ……こんなもんか、って、もう夕暮れか…そろそろ戻ろう」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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