確かめたいこの気持ち(蒼太視点)
頬に残った感触が、なかなか消えなかった。
柔らかくて、あたたかくて。
ほんの一瞬だったはずなのに、頭の中で何度も再生される。
白咲さんは、顔を真っ赤にして俯いていた。
「……ご、ごめん。勢いで……」
その声は小さくて、震えている。
(嫌われた、って思ってる……?)
そう気づいた瞬間、胸がきゅっと締めつけられた。
正直に言えば、驚いた。
心臓は今もバクバクしてるし、何が起きたのか完全には整理できていない。
でも――
(……嫌、じゃなかった)
それどころか。
さっきまでゲームをして笑っていた時間も、
眠っている横顔を見ていた静かな時間も、
そして今、この距離も。
全部が、やけに大切に思えてしまう。
「……白咲さん」
声を出すのに、少し勇気がいった。
「嫌じゃ……なかった」
白咲さんが、はっと顔を上げる。
「え……?」
自分でも驚くくらい、言葉が続いた。
「むしろ……その……」
喉が渇く。
でも、逃げたくなかった。
「最近、ずっと考えてた。
白咲さんと話すのが楽しくて、会えないと落ち着かなくて……」
一度、深呼吸する。
「それって……たぶん、友達として、じゃなくて……」
そこまで言って、はっきり口にした。
「僕、白咲さんのこと……異性として、好きなのかもしれない」
一瞬、時間が止まったみたいだった。
白咲さんは目を見開いたまま、数秒固まって――
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……じゃあ」
少しだけ、いたずらっぽく。
「付き合う?」
「……え?」
頭が真っ白になる。
「い、いや……でも……」
言葉がうまく出てこない。
「僕、一回……白咲さんの告白、断ってるし……」
今さら、そんなこと言っていいのか。
自分勝手なんじゃないか。
白咲さんは、少し驚いた顔をしてから、ふっと笑った。
「うん。だからこそ、だよ」
「……?」
「今は、もしかしたら両思い、かもしれないでしょ?」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
「だからさ」
白咲さんは、少し考えるように視線を泳がせてから言った。
「一日、デートしてみない?」
「……デート?」
「うん。
そのあとで、水守くんがどう思ったか、聞かせてほしい」
逃げ道も、急かしもしない。
ただ、確かめようとしている。
それが伝わってきて、胸がじんわりとした。
「……わかった」
気づけば、そう答えていた。
「一日、ちゃんと考える」
白咲さんの表情が、ぱっと明るくなる。
「ほんと?」
「うん」
約束、という言葉が頭に浮かぶ。
友達でもなく、まだ恋人でもない。
でも、確実に前とは違う場所に立っている。
(……デート、か)
不安もある。
怖さもある。
でも――
白咲さんとなら、確かめてみたいと思った。
この気持ちが、何なのかを。




