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青に滲む光  作者:
49/54

会うための理由(蒼太視点)

冬休みに入って、学校は一気に静かになった。


 朝、目覚ましをかけずに起きて、気の向くままに漫画を読んで、アニメを見て、昼過ぎまでだらだら過ごす。  少し前までなら、それだけで十分幸せだったはずなのに。


「……暇だな」


 口に出してから、自分で少し驚いた。


 やることはある。  冬休みの課題も残っているし、見たい作品も山ほどある。  なのに、胸のどこかが落ち着かない。


(白咲さん……今、何してるんだろ)


 考えないようにしていたのに、気づけば思い浮かんでしまう。  毎日当たり前のように話していた時間が、急にぽっかり空いた感じだった。


 スマホを見る。  特に通知はない。


(……理由もなく連絡するのも、変だよな)


 会いたい、なんて。  そんなこと、友達同士で言うのは変だし――ましてや、告白を断った相手に。


 そう自分に言い聞かせて、スマホを伏せた。


 その数時間後。


 画面が光った。


『水守くん、冬休みの課題ってもう始めてる?』


 白咲さんからだった。


 胸が、わずかに跳ねる。


『いや……正直、あんまり』  正直すぎる気もしたけど、嘘をつく理由もなかった。


 すぐに返事が来る。


『よかったらさ、一緒にやらない?  一人だと集中できなくて』


 一緒に。


 その二文字を、何度も読み返した。


(……会える、ってことだよな)


 迷う理由はなかった。


『うん。ぜひ』


 送信すると、少し遅れて次のメッセージ。


『じゃあ……水守くんの家でやりたいなって思ったんだけど……だめかな?』


「……え?」


 思わず声が出た。


 家。  僕の、家。


 正直に言えば、あまり乗り気じゃない。  散らかってるわけじゃないけど、人を招くほど整ってもいないし、何より――緊張する。


『えっと……僕の家、そんなに広くないし……』


 そう送ると、間を置かずに返ってきた。


『それでもいいの。  水守くんの家、ちょっと行ってみたくて』


 行ってみたい。


 その言葉に、変なところがむずがゆくなる。


 しばらく画面を見つめたまま、考える。


(……そんなに来たいなら)


『……わかった。明日でいい?』


 送った瞬間、心臓が一段大きく鳴った。


『うん! ありがとう!』


 その明るい返事に、なぜか少しだけ後悔する。


(……掃除、しなきゃ)


 スマホを置くと同時に、僕は立ち上がった。


 机の上を片付けて、本棚を整えて、床に落ちていた服を洗濯機に突っ込む。  普段なら気にも留めない場所まで、やたらと目についた。


「……来客って、こんなに大変なんだな」


 汗をかきながら、苦笑する。


 でも、不思議と嫌じゃなかった。


 白咲さんが、この部屋に来る。  そう思うと、落ち着かないけど――どこか楽しみでもあった。


(……明日か)


 掃除を終えて、ベッドに腰を下ろす。


 冬休みは、ただの“休み”だと思っていた。  でも今は、明日を指折り数えている自分がいる。


 白咲さんと一緒に課題をやるだけ。  それだけのはずなのに。


「……落ち着け」


 そう呟いても、胸の奥のそわそわは、なかなか収まらなかった。


 きっと明日も、こんな調子なんだろう。


 でも――  それも、悪くないと思えてしまう自分が、確かにいた。

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