表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青に滲む光  作者:
48/54

冬休みを前に(灯視点)

定期テストが全部終わった、その日の放課後。


 答案が返ってきて、教室のあちこちで一喜一憂の声が上がっている中、私は自分の席で、そっと水守くんの様子を見ていた。


 机に広げたテスト用紙を、何度も何度も見返している。  その表情は……少し驚いているようで、でも安心したみたいで。


(……あ、うまくいったんだ)


 直感的にわかった。


 特に数学。  あの問題集、あの時間。  一緒に解いたところだ。


 しばらくして、水守くんが顔を上げた。  目が合うと、ほんの少し照れたように笑ってくれる。


「白咲さん……ありがとう。数学、ちゃんと解けた」


 その一言で、胸の奥が一気に温かくなった。


「ほんと? よかった……!」


 自分が役に立てたこと。  水守くんが「できた」って思えていること。


 それだけで、全部報われた気がした。


 テストが終われば、あとは冬休み。


 パソコン部も、先輩たちが年末年始は忙しいから、冬休み中は活動なし。  放課後に集まる理由が、なくなってしまう。


 帰り支度をする水守くんを見ながら、胸の奥に小さな寂しさが広がった。


(……毎日話してたのに)


 意識しないようにしていたけど、やっぱり――会えなくなるのは、少しつらい。


 だから、思い切って声をかけた。


「水守くん。冬休み……あんまり会えなくなるね」


 自分でも、少し弱気な声だったと思う。


 水守くんが驚いたようにこちらを見る。


「あ……そう、だね……」


 その反応を見て、ちょっと安心した。  同じように感じてくれてるんだって。


 それから、ずっと心に引っかかっていたことを口にした。


「……私、水守くんの家の場所、まだ知らないなって思って」


 言った瞬間、心臓がどきっとする。


 嫌がられたらどうしよう。  重いって思われたらどうしよう。


 でも、水守くんは少し考えたあと、首を振った。


「嫌じゃないよ。……言う」


 その言葉に、胸がふっと軽くなった。


「桜川駅から歩いて十分くらい。地図、送るね」


 スマホに表示された地図を見て、私は思わず画面をじっと見つめてしまう。


(……ここなんだ)


 水守くんが帰る場所。  水守くんの日常。


 それを知れたことが、思っていた以上に嬉しかった。


「ありがと。これで……ちゃんとわかった」


 そう言ったら、水守くんが少し不思議そうな顔をした。


「そんなに嬉しい?」


「……うん」


 本当は、もっと言いたかった。


 会おうと思えば、会いに行ける  そう思えたことが、どれだけ心強いか。


 でも、それはまだ胸の中にしまっておく。


「冬休みでも……会いたくなったら、いつでも連絡してね」


 水守くんがそう言ってくれた瞬間、胸がきゅっとした。


「うん。する」


 即答だった。


 冬休みは、きっと少し寂しい。  でも、距離が離れる感じはしなかった。


 だって今は――  水守くんの居場所を、ちゃんと知っている。


(……大丈夫)


 そう思えた自分に、私はそっと微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ