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青に滲む光  作者:
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近づく距離(灯視点)

 放課後、部活を終えて青葉台駅へ向かう帰り道。

 夕方の風は少し冷たくて、駅前の並木道にはオレンジのライトが優しく灯っている。

 道沿いの店には、かぼちゃの飾りや紫のリボンが揺れていて十月の空気が肌に触れるたび、なんだかそわそわしてしまう。


 そんな中、隣を歩く水守くんの横顔を見上げた。


 今日も落ち着いていて、静かで、いつも通りで。

 でも最近は、褒めたときの反応が少しだけ柔らかくなっていて、その変化を見るのが……すごく嬉しい。


 だから、自然と口を開いていた。


「そういえば水守くん、明日って創立記念日で休みだよね」


「うん。家で課題やるくらいかな」


 うん、そう言うと思ってた。


 ――今日、誘おうって、ずっと決めてたんだ。


 勇気を出して息を吸う。


「あのさ……明日、よかったら……一緒に出かけない?」


 言った瞬間、心臓の鼓動が一気に跳ねる。

 水守くんがびっくりしたみたいに目を丸くしたのを見て、変な汗が背中を流れた。


「……最近、いろいろ頑張ってたし。気分転換にもなるかなって。迷惑じゃなかったらでいいんだけど」


 言葉を選びながらも、本心は隠しきれなかった。


 本当は、理由なんてなんでもよかった。

 ただ、水守くんと一緒に過ごしてみたかった。


 しばらくして――


「……行くよ。僕でよければ」


 その一言を聞いた瞬間、胸が熱くなるのがわかった。


「ほんと? よかった……!」


 声が弾んだ。

 抑えきれなかった。

 きっと顔も笑っている。


 でも、水守くんが嫌じゃないって思ってくれたなら、それだけで十分だった。


「どこ行くの?」と聞かれて、少しだけ悩む。


「うーん……いろんなお店があった方が楽しいかなって思って……ショッピングモールとかどう?」


 デート、って言葉を口にしたくなったけど、飲み込んだ。


 水守くんにとっては“友達とのお出かけ”だって分かってる。

 それでいい。

 それでもいい。


「桜川駅で待ち合わせしよ? 電車乗るし」


「うん……桜川駅で」


 その返事に、胸の奥がじんわり温かくなった。


 青葉台駅の改札に着く。


「じゃあ、水守くん。また明日ね」


「うん。気をつけて帰って」


 手を振りながら階段を下りていく彼を見送って、駅の外に出た瞬間。


 思わず口元を押さえた。


「……っ、やば……」


 笑いが止まらなかった。


 明日、一緒に出かける。

 二人で電車に乗って、ショッピングモールに行く。

 ご飯を食べたり、お店を覗いたり、たぶんたくさん歩いて、たくさん話して――。


 想像するだけで胸がぎゅっとなる。


 帰ってすぐ自分の部屋へ駆け込んだ。


 ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めたまま足をばたばたさせる。


「……水守くんと、出かける……」


 考えるたび胸が熱くなる。


 落ち着こうとしても無理だった。


 だって、これは。

 私にとっては――ほとんどデートみたいなものなんだから。


 もちろん、口には出さない。

 出せるはずがない。

 水守くんが困るだけ。


 でも、それでも。

 一緒に過ごせる明日が楽しみで仕方なかった。


「服どうしよう……」


 クローゼットを勢いよく開けて、手持ちの服を一枚ずつ並べていく。

 ちょっと落ち着いた色で、でも地味すぎなくて、清潔感があって――。


「明日、笑ってくれるかな……」


 選んだ服を抱きしめながら、ぽつりと呟いた。


 今日みたいに、水守くんが素直に言葉を受け取ってくれたら。

 それだけで十分。


 そして、いつか。

 いつかでいいから。


 この“嬉しい”って気持ちを、ちゃんと伝えられたらいい。


「……明日、楽しみだな」


 その言葉は、自然とこぼれていた。

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