終わりの鐘と始まる言葉(灯視点)
テスト最終日の二時間目が終わった瞬間、肩の力がふっと抜けた。やっと終わった……という安堵と同時に、胸の奥には別の気持ちが膨らんでいく。
一週間前、水守くんを勇気を出して誘って、一緒に帰った日のこと。
あの時、横に並んで歩いた帰り道が思っていた以上に楽しくて、その記憶がずっと頭から離れなかった。だからこそ、この一週間の“会えなさ”は少し寂しかった。
テスト勉強があるのはわかってる。だけど——
また話したい、また隣を歩きたい。
その気持ちを押し込めるのが難しい。
教室の中で水守くんを探すと、いつものように一人で片付けをしていた。席が近くないから、声をかけるには少し距離を歩かなきゃいけない。
……少しだけ胸が高鳴る。
(だいじょうぶ。前もできたんだから)
自分に小さく言い聞かせて歩き出し、水守くんの後ろに立つ。机の中を片付けている背中は、どこか緊張して見えた。
「……水守くん」
呼ぶと、彼はびくっとしてから振り返り、ぎこちなく微笑んだ。
「やっとテスト終わったね。お疲れさま」
「あ、うん……白咲さんも。お疲れ」
久しぶりに目が合った瞬間、胸の奥があたたかくなる。
テストが始まってから、必要な連絡以外はほとんど話せなかった。不安がなかったわけじゃない。でも——またこうして話せている。それだけで嬉しかった。
だから、勇気を少しだけ振り絞る。
「今日さ……よかったら、また一緒に帰らない?」
言うと同時に、心臓が跳ねる。
迷惑だったらどうしよう。
そう思ってつい付け足す。
「迷惑じゃなかったなら、だけど……」
すると水守くんは、すぐに大きく首を振った。
「いや、迷惑なんて……! むしろ、その……嬉しい、かも」
照れたように言う彼の声に、胸の奥がじんわり熱くなる。
「……じゃあ決まりだね」
自然と笑顔がこぼれた。
また話せる。
また隣で歩ける。
その事実だけで、どうしようもなく嬉しかった。




