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青に滲む光  作者:
21/54

終わりの鐘と始まる言葉(蒼太視点)

 テスト期間最終日の二時間目が終わり、解放感と疲労が入り混じった空気が教室に漂っていた。周りはすでに友人同士で答案の感想を言い合ったり、帰りの予定を立てたりしている。けれど、俺はなんとなく机を片付ける手が遅い。


 一週間前のことが頭に浮かぶ。


 部活が禁止になり、帰りはいつも一人になると思っていたのに、「水守くん、一緒に帰らない?」と白咲さんが言ってくれた日。驚きすぎて返事がぎこちなかったし、横に並んで歩く間、うまく言葉を選べない自分に焦ってばかりだった。


 その後、テスト勉強が本格的に始まって、連絡は必要最低限。教室でも席が近くないせいで話す機会はほとんどなかった。


 その“空白”が、俺には妙に重かった。


 話すのが嫌なわけじゃない。ただ……自分なんかが期待していいのか、距離を縮めていいのか、わからなくなる。


 今日もきっと、こっちからは声をかけられない。


 そんなことを思っていたら——


「……水守くん」


 小さな、でもはっきりした声が背中側から届いた。


 振り返ると、白咲さんが教科書を抱えたまま立っていた。目が合うと、少しだけほっとしたように微笑む。


「やっとテスト終わったね。お疲れさま」


「あ、うん……白咲さんも。お疲れ」


 本当に久しぶりに、ちゃんと顔を見て話した気がする。だけど俺の声は少し緊張している。


 白咲さんは一拍置いて、控えめに問いかけてきた。


「今日さ……よかったら、また一緒に帰らない?」


 胸の奥が一瞬だけ強く脈打つ。


 テストで会えなかった分の“距離”を、彼女は気にしていないみたいだ。むしろ——その逆のように見える。


「迷惑じゃなかったなら、だけど……」


 彼女が不安そうに付け足したので、俺は慌てて首を振った。


「いや、迷惑なんて……! むしろ、その……嬉しい、かも」


 言った瞬間、顔が熱くなる。


 けれど白咲さんは、ふっと花みたいに柔らかく笑った。


「じゃあ決まりだね」


 その笑顔を見て、

 ——距離が縮まったのは偶然なんかじゃなかったのかもしれない。

 そんな考えが、少しだけ胸の奥に生まれた。

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