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青に滲む光  作者:
20/54

放課後の帰り道(灯視点)

定期テスト前で、学校全体が少し静かに感じる。

部活が禁止になる期間は、放課後がいつもより早く過ぎてしまう。


(……今日、どうしよう)


部活がない放課後。

いつもは水守くんと作業してから帰る日が多かったのに、今日はそれがない。

クラスの中で普通に話すことはあっても、

“自分から帰りに誘う”なんて、したことがなかった。


理由は……怖かったから。


クラスの目もあるし、もっと言えば、

断られるのが何より怖い。


だけど最近、水守くんとメッセージで話す時間が増えた。

内容は勉強のこととか文化祭の編集のこととか、

他愛ないものばかりなのに、

それがすごく嬉しかった。


(……会って話したいな)


胸の奥にそんな願いが生まれた瞬間、

水守くんが席を立つのが見えた。


帰ってしまう。


その背中を見たら、心が決まった。


「……水守くん」


声が震えた。

でも、それでも呼んだ。


彼が振り向いた瞬間、胸がぎゅっと縮まる。

驚いた表情。

その顔を見るだけで、心臓が痛いほど動いた。


「今日、部活ないけど……一緒に帰ってもいい?」


言ってしまった。


もう戻れない。

断られるかもしれない。

でも、それでも言いたかった。


少しの沈黙のあと、水守くんが戸惑った声で返す。


「……僕と、ですか?」


思わず笑いそうになった。

水守くんらしい返しだったから。


「うん。だめ……かな?」


ほんとうは、“一緒に帰りたい”が本音。

でも、それはどうしても言えなくて。


少し間があったあと、水守くんが視線を落としてつぶやく。


「……いいですよ。一緒に帰りましょう」


その言葉だけで、世界が少し明るく見えた。


(よかった……)


胸の奥が熱くなる。

この気持ちは、隠せない。

でも隠さなきゃいけない。


二人で桜川駅へ向かう道は、いつもより涼しく感じた。


「テスト勉強、大変だよね……水守くんはどう?」


「……まあ、普通です。得意じゃないですけど」


その言い方が可愛くて、自然に笑顔がこぼれる。


「そうなんだ。私、数学がちょっと不安で……」


話しながら、横顔を何度も見てしまう。

見て、慌てて前を向く。

そんなことを何度も繰り返してしまった。


(どうしてこんなに……)


歩くだけで、話すだけで、胸が温かくなる。

でも伝えてしまったら、もっと壊れてしまう気がする。


だから言えない。

言えないまま、隣にいたい。


桜川駅につく頃には、心が騒ぎすぎて少し疲れるほどだった。


でも――


(……今日、誘えてよかった)


その気持ちだけは、嘘じゃなかった。

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