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青に滲む光  作者:
19/54

放課後の帰り道(蒼太視点)

定期テスト1週間前。

放課後の教室には、ふだんとは違う静けさがあった。

部活がないせいで、生徒の流れが早い。

帰る準備をしているうちに、教室のざわめきはどんどん薄れていった。


(部活ないと……やっぱり静かだな)


いつもならパソコン部の部室へ向かう時間だけど、今日はその必要がない。

だからといって、特別な予定があるわけでもない。

普段どおり、一人で帰る。

それだけのはずだった。


鞄を肩にかけ、教室を出ようとしたそのときだった。


「……水守くん」


名前を呼ばれて振り向くと、白咲さんが立っていた。

少しだけ、息を整えるみたいに胸の前で手を握っている。


「今日、部活ないけど……一緒に帰ってもいい?」


一瞬、時間が止まった気がした。


いつもは、部活の流れで自然と一緒に帰っていた。

だからこそ、部活がない今日は“そうじゃない”理由が必要なはずで。


なのに彼女は、それをはっきり言葉にした。


「……僕と、ですか?」


気づけば、そんなことを聞いていた。

間抜けだと思う。

でも、驚きと戸惑いでそれしか言えなかった。


白咲さんは小さく頷いた。


「うん。だめ……かな?」


だめなわけがない。

むしろ、そんなふうに言われたら胸が痛くなる。


でも同時に、怖さも湧いてきた。

クラスの目とか、彼女がどう思っているかとか、

そういうことを考え出すと足がすくむ。


だけど――


「……いいですよ。一緒に帰りましょう」


気づけば、答えていた。


白咲さんの顔が、ぱっと明るくなる。

その瞬間、胸の奥がぐらっと揺れた。


(……なんなんだよ、この感じ)


ただ一緒に帰るだけなのに、理由も分からない熱が込み上げてくる。


桜川駅に向かう道。

普段と変わらない景色のはずなのに、今日は少しだけ違って見えた。


隣にいるのが、白咲さんだからだ。


「テスト勉強、大変だよね……水守くんはどう?」


「……まあ、普通です。得意じゃないですけど」


「そうなんだ。私、数学がちょっと不安で……」


そんな他愛ない会話だけで、なぜか鼓動が速くなる。

しかも白咲さんは、時々こちらを見上げる。

そのたびに、呼吸が乱れる。


(……どうして誘ったんだろう)


聞きたいけど聞けない。

そんなことを聞く資格は、自分にない。


だけど――白咲さんは終始少しだけ嬉しそうで。

その笑顔を見るたびに、胸のどこかが解けていく気がした。


桜川駅が近づく頃、僕は小さく息を吐いた。


(……やっぱり、怖い)


こんなふうに期待してしまう自分が。


それでも、彼女と歩けたことが嬉しかった。

認めたくないけれど、それだけは確かだった。

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