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青に滲む光  作者:
17/54

揺れ始める距離(蒼太視点)

七月に入って、湿気がまとわりつくような空気になった。

パソコン部の部室は冷房が弱くて、その蒸し暑さがさらに疲労を増やす。


動画編集の作業も本格的に始まって、僕は放課後になると自然に白咲さんの隣に座ることが多くなった。

意図したわけじゃない。

ただ、気づけばそうなっていた。


作業の途中、田島先輩がにやけた顔でこちらを見てくる。


「水守、最近楽しそうだな?」


「……別に、そんなことないですよ」


否定するけど、田島先輩は「はいはい」とでも言いたげな顔で肩を叩いてくる。

うっとうしいけれど、悪意がないことも分かっている。


部活が終わると、いつもと同じ自然な流れで白咲さんと帰ることになった。


「今日の動画編集……見せてもらってもいい?」


彼女の声は、ほんとうにやわらかい。


「……うん。一応、少しだけ進めたけど」


「水守くんって、ほんとに頑張ってるよね。すごいなって思う」


まただ。

どうしてそんなふうに言えるんだろう。


「……そんなことないですよ」


そう言うしかない。

褒められるたび、胸の奥がざわつくから。


桜川駅の手前まで来たとき、彼女がスマホをちらっと見て、少し顔を赤くした。


「今日の夜、また動画の相談したいんだけど……いい?」


「……うん、大丈夫です」


言ったあと、胸の奥が少し痛んだ。

彼女とやり取りする時間が増えていくことが、怖いのに嬉しい。

そんな自分が嫌だった。


彼女は、ほんとうに僕なんかと話していて楽しいんだろうか。


「……じゃあ、また明日ね、水守くん」


白咲さんは、いつもの笑顔でそう言った。


「うん……また」


その一言を返すだけで、心が少しだけ熱くなるのを感じてしまう。


(僕は……どうしたいんだ)


答えは分かっているのに、認める勇気がまったくなかった。

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