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青に滲む光  作者:
16/54

触れ始めた距離(灯視点)

文化祭の準備が始まって、毎日が少しずつ慌ただしくなってきた。

だけど――私はこの忙しさが、どこか嬉しかった。


水守くんと一緒に作業する時間が、確実に増えているから。


今日も放課後、部室の窓から差し込む薄い夕方の光の中で、

二人で動画の構成について話し合っていた。


モニターを見ながら、私は言う。


「……ここ、もうちょっと明るいカットが欲しいね」


「そ、そうですね……明日、外で撮りますか」


水守くんはいつも通り控えめで、

私と話すときはほんの少し緊張しているように見える。


その姿が、最近になってやっとわかってきた。

不器用で、でも優しくて、真面目で――私が好きになった理由全部が、そこにある。


でも、ただ好きなだけじゃ、だめなんだ。

ちゃんと距離を縮めたい。

彼が自分なんか、と卑下してしまうその壁を、少しずつ溶かしていきたい。


「うん。……あ、でも放課後だけだと時間足りないかも」


そう言って、私は小さく息を吸った。


(言うなら……今だよね)


文化祭の準備を理由にすれば、不自然じゃない。

でも本当の理由は――もっと話したい。

彼と繋がる時間が、どうしても欲しい。


「ねえ、水守くん」


名前を呼んだだけで、彼の肩がぴくっと揺れる。


その反応が、かわいくて、少し胸が痛い。


「……もしよかったら、連絡先、交換しない?」


彼は大きく目を開いた。


「えっ」


予想通りの反応に、思わず笑いそうになったけど、

たぶん笑ったら彼は余計に混乱してしまう。


だから私は落ち着いた声で続けた。


「ほら、文化祭の作業って急に確認したいこととか出るかもしれないし……。

 連絡できたほうが便利だと思って」


言いながら、胸の奥がじんわり熱くなる。


(便利なのは本当。

 でも……それだけじゃない)


もっと彼と言葉を交わしたい。

今日のこと、ちょっとした出来事、くだらない一言でもいい。

近くにいたいから。


だけど、その本音はまだ言わない。


言ったら、きっと彼を困らせてしまうから。


「……迷惑だったら、ごめんね?」


そう言うと、水守くんは慌てて首を横に振った。


「い、いえ……迷惑とか……そんなの……。

 必要なら……交換、したほうが……いいですよね」


その言い方があまりにも彼らしくて、胸がぎゅっとなる。


「うん。ありがとう」


スマホを出しながら、

彼と連絡先を交換できるなんて、本当は夢みたいな気分だった。


QRコードを読み取ると、画面に

「水守 蒼太」

の文字が表示される。


それだけで、心臓が跳ねた。


思わず、少し嬉しくて微笑んでしまう。


「これで、連絡とれるね。

 ……よろしくね、水守くん」


そう言ったとき、

彼は少しうつむきながらも、真剣な声で返してくれた。


「よ、よろしく……お願いします」


その言い方が、なんだか大事な約束みたいに聞こえて、

胸の奥がじんわりと温かくなった。



桜川駅に着くころ、

私は何度かスマホの画面を見てしまっていた。


(連絡先……交換したんだ。

 水守くんと)


明日から、会えない時間にも彼の名前を見ることができる。


それだけのことが、

こんなに嬉しいなんて思わなかった。


そして——

これがきっと、私の気持ちがまた一段深くなるきっかけになる。


そんな予感がしていた。

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