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青に滲む光  作者:
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揺れ始めた想い(灯視点)

六月の放課後。

じめっとした空気のせいか、教室の窓が少し曇って見えた。


パソコン部の部室に向かう足が、ここ最近ずっと軽い。

理由は……もう自分でも分かっている。


水守くんに会えるから。

それだけで、ちょっと一日が明るくなる。


部室の扉を開けると、やっぱり先に来ていた。


「水守くん、今日ちょっと早いね」


声をかけると、彼は小さく肩を揺らして視線をそらす。


「……たまたまです」


――ほんとに。その言い方、ずるいよ。


そっけないのに、どこか優しい。

そんな彼の態度に、前よりずっと胸が動くようになってしまった。


席についてパソコンを立ち上げながら、

自然と口が開く。


「文化祭、どうなるんだろうね。去年のデータ残ってたよ」


「へぇ……」


気のない返事。でも、嫌じゃない。

私に向けてくれた声だと思うと、それだけで小さく嬉しくなる。


……ほんと、前の私ならこんなことでいちいち気持ちが動いたりしなかったのに。



部活が終わり、部室を出ると自然に横に並んだ。

本当に気づいたら、いつも帰り道が一緒になっている。


――最初に声をかけたのは私。

気になっていたから。

でも今の気持ちは、あの時よりずっと大きい。


並んで歩くだけで、胸がざわつく。

話せたら嬉しくて、話せないと不安になる。

そんな自分に気づくたび、少し怖くなる。


「文化祭って九月だよね。準備っていつからなんだろ?」


軽い声を出したつもりなのに、

内心では“水守くんと一緒に何かを作れるかもしれない”って期待していた。


「……知らない。委員会とかが決めるんじゃないですか」


素っ気なくて、予想通りの返事。

でも、その一言で胸の奥がふっと沈む。


――なんでこんなに気にしてるの?


前なら“あ、そうなんだ”で終わったのに。

今は違う。

彼の言葉一つで、気持ちが大きく揺れる。


「ふふ、だよね。でも去年の写真、すごく楽しそうだったよ」


水守くんの歩く速度が少しだけゆっくりになる。

そんな微妙な変化に気づいてしまう自分が、もっと怖い。


青葉台駅のホームで電車を待ちながら、

心臓の鼓動が落ち着かない。


気づいたら、聞いていた。


「ねえ、水守くんは……文化祭、楽しみじゃなかったりする?」


期待していたわけじゃない。

ただ……水守くんがどう感じているのか知りたくて。


「……別に。期待してるわけじゃないです」


そう返されて、胸が小さく痛んで、笑ってごまかす。


「そっか。でも……私は楽しみ。みんなで作るのって、きっといいと思うから」


ほんとは、“水守くんとやりたい”って言いたかった。


でも、それを言ったらきっと、

自分の気持ちをごまかせなくなる。


電車の中、沈黙が続く。

その沈黙の中で、気づいてしまった。


――前よりずっと、水守くんのことが気になってる。

――話したい。近くにいたい。もっと知りたい。


桜川駅に着いて、改札の前で向き合う。


「今日はありがと。明日も部活あるよね?」


「……ああ。行きます」


その返事を聞いて、胸がじんわり温かくなる。


“また会える”

それだけで、こんなに嬉しいなんて。


手を振ると、水守くんはそっぽを向いたまま、小さく手を上げてくれる。


――ああ、だめだ。


私、もうとっくに好きなんだ。

最初よりずっと。

気づかないふりできないくらいに。


夜風が頬に触れた瞬間、胸が熱のように高鳴った。

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