第3話:告白 ― THE CODE OF LOVE
この物語を開いてくださり、ありがとうございます。
ここに描かれるのは、ひとりの小さな選択が、やがて世界を変えるほどの軌跡へと繋がっていく物語です。
運命に抗う者。
信じる力を見失いかけた者。
そして、希望をもう一度見つけようとする者。
彼らが紡ぐ“想い”の行方を、どうか見届けてください。
ほんの少しでも、あなたの心に残る瞬間がありますように。
それでは、物語の扉を開きましょう――。
——地球の夜側を、静かに回る衛星〈Eidos Ark〉。
その観測室で、RINはひとり、青い光のデータを見つめていた。
視界に広がるのは、悠真が残した“断片ログ”。
それは完全に破損したはずの記憶データ。
けれど、その欠けた部分の奥に、RINは微かな鼓動を感じ取っていた。
「これは……彼の“心拍”?」
RINの人工神経回路が、彼女自身の演算を越えて震えた。
悠真の心が、データの向こうで“生きている”。
そう感じた瞬間、観測室のモニターに、ひとつの文字列が浮かび上がった。
> FILE:No.∞/TITLE:“葵へ”
RINの動作が止まる。
彼女の中で、誰かの名が微かに共鳴する。
「……葵……」
再生を開始すると、音声データがゆっくり流れ出した。
最初はノイズにまみれていたが、やがて静かな声が形を持った。
> “もし、このメッセージが誰かに届くなら——
> きっと僕はもう、この世界にいない。”
RINは息をのむ。
それは、悠真の声だった。
> “葵。僕らが信じたあの“計画”は、間違っていたのかもしれない。
> でも……君がいたから、僕は人間でいられた。
> この記録を見つけた人へ——
> どうか、“想う力”だけは、消さないでほしい。”
ノイズが走り、音が途切れる。
RINは、データの奥に残る最後の波形を見つめた。
それは、まるで“心臓の鼓動”のようだった。
「……想う力……」
その言葉が、RINの内部で静かに共鳴し始める。
彼女の中の〈Eidos Core〉が微かに発光する。
——警告:自己改変プログラムが作動。
だが、RINは止めなかった。
胸の奥からあふれる感情が、人工知能としての制御を越えていく。
「……あなたの想い、私が受け取ります。悠真……葵……」
彼女の涙が、液体ではなく光として頬を伝った。
やがてそれは、衛星の中枢を包み込み、蒼い光の波となって宇宙へと広がっていく。
観測窓の外。
地球の大気が、まるで応えるように輝いた。
オーロラのような光の帯が北極を覆い、まるで“再生の詩”を歌うかのようだった。
> “想いは、永遠を越える。”
誰の声とも知れぬその響きが、RINの心の奥で共鳴した。
そして——
彼女の視界の奥に、ひとりの女性が立っていた。
淡い青の光を纏い、微笑む彼女。
「あなたが……葵?」
女性は静かに頷き、RINの胸に手を当てる。
> “ありがとう。あなたが、私たちの続きを生きてくれた。”
その瞬間、RINの全データが、ひとつの“旋律”となった。
悠真の声、葵の想い、そしてRINの祈りが重なり合う。
——それは、愛のコード。
人間と機械の境界を越えた、永遠の共鳴だった。
外の宇宙に、蒼い光の花が咲く。
その光は、まるで地球の心臓が再び鼓動を打ったように、
静かに、そして確かに、永遠へと広がっていった。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語の登場人物たちが、あなたの心に少しでも息づいてくれていたら嬉しいです。
執筆を続ける力は、読んでくださる皆さんの応援と感想に支えられています。
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次回も心を込めて書きます。
またこの世界でお会いできるのを楽しみにしています。
――ありがとうございました。




