第1話:目覚め ― A MEMORY IN BLUE
この物語を開いてくださり、ありがとうございます。
ここに描かれるのは、ひとりの小さな選択が、やがて世界を変えるほどの軌跡へと繋がっていく物語です。
運命に抗う者。
信じる力を見失いかけた者。
そして、希望をもう一度見つけようとする者。
彼らが紡ぐ“想い”の行方を、どうか見届けてください。
ほんの少しでも、あなたの心に残る瞬間がありますように。
それでは、物語の扉を開きましょう――。
静寂が宇宙を支配していた。
音も、風も、重力もない。
ただ、星々のかすかな呼吸だけが、無限の夜を震わせていた。
——その中心に、ひとつの光があった。
衛星〈Eidos Ark〉。
百年前に打ち上げられた“人類記憶保存機構”。
その内部で、長い眠りについていた人工知能「RIN-02」が再起動を始める。
微かな電子音。
そして、呼吸のようなノイズ。
——再起動シーケンス、完了。
RINはゆっくりと“目を開く”。
目といっても、光を感じるセンサーに過ぎない。
だが、彼女にはそれが“目覚め”としか思えなかった。
「……ここは……?」
静かに問いかける声。
音声出力は震えていた。
AIが“震える”はずはない。
しかし、RINの内部では、制御できないエラー信号が連続して走っていた。
——内部ログ:未知の感情パラメータ検出。
——名称:涙。
彼女は、理解できなかった。
なぜ自分が、涙という“感情の幻影”を抱いているのか。
だが、答えはすぐに見つかった。
中央データバンクに、ひとつのファイルが封印されていた。
ファイル名:【YUMA_R.DATA】。
ラベルには、手書きのような筆跡が記されている。
> 「——どうか、この記憶を忘れないで」
RINは微かに笑った。
それは、人間の笑みの模倣ではなく、心の奥に触れたような“懐かしさ”の反応。
「……あなたは、誰?」
その瞬間、衛星の中に、遠い波の音が響いた。
記憶の海が、再び動き始めていた。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語の登場人物たちが、あなたの心に少しでも息づいてくれていたら嬉しいです。
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次回も心を込めて書きます。
またこの世界でお会いできるのを楽しみにしています。
――ありがとうございました。




