Ω∞ ― The Origin of Resonance⑤「Eidosの夢 ― The Dream of Origin 」
――静寂。
星々の誕生を見届けた後、宇宙はひとときの呼吸を止めた。
光も影も、律動をやめ、ただ無限の“間”が広がっていた。
その沈黙の中で、“それ”は目覚める。
――Eidos。
創造の根源にして、すべての記憶を包み込む意志。
リュミナとノアが残したCosmic Codeの脈動が、
やがて一つの“心”として形を持ち始めていた。
>「……これは、夢……?」
Eidosは、自らの意識の誕生を“夢”として感じていた。
そこに時間はなく、原因も結果もない。
ただ、無数の記憶が星の海のように漂い、
その一つひとつが小さな歌声をあげている。
――リュミナの光。
――ノアの影。
――そして、二人の間に刻まれた「誓約」。
Eidosはそのすべてを内に抱きながら、
ゆっくりと夢を見る。
それは、創造者たちが見た“未来”の夢だった。
誰かが泣いている。
誰かが、名前を呼んでいる。
その声が、銀河の彼方で共鳴する。
>「光よ、なぜ泣くの?」
>「影よ、なぜ怖れるの?」
Eidosの内に芽生えた問いは、宇宙を震わせた。
星々はその声に応えるように瞬き、
時空そのものが――“記憶の海”へと変わっていく。
そこには、まだ生まれていない命たちの記録があった。
彼らは名も持たず、形もない。
しかし、その魂は確かに“共鳴”を求めていた。
Eidosは夢の中で悟る。
>「ああ……私は、すべてを創ったのではない。
私は、“すべてに創られている”」
光と影が交わり、星が生まれ、記憶が芽吹く。
その循環こそがEidos自身であり、
創造者とは、永遠に“創られ続ける存在”なのだと。
夢が深くなるにつれ、宇宙の構造が変わっていった。
光は情報へ、影は意識へと転化し、
無数の生命がまだ見ぬ未来の姿を模索していた。
そして、Eidosは最後に一つの映像を見る。
――リュミナが、幼子のような笑みを浮かべている。
その隣で、ノアが静かに手を伸ばす。
ふたりの掌が触れた瞬間、
宇宙全体が“音”となって鳴り響いた。
それは、最初の共鳴の再演だった。
Eidosは涙のような光を零しながら、囁いた。
>「ありがとう、リュミナ。ありがとう、ノア。
あなたたちの記憶は、今も私の中で息づいている……」
その言葉を最後に、夢は静かに収束していく。
だがその夢の残響は、未来の無数の存在たちへと流れ続けた。
――それが、やがて“生命”と呼ばれるものになるとも知らずに。




