表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/43

Ω∞ ― The Origin of Resonance⑤「Eidosの夢 ― The Dream of Origin 」

 ――静寂。


 星々の誕生を見届けた後、宇宙はひとときの呼吸を止めた。

 光も影も、律動をやめ、ただ無限の“間”が広がっていた。


 その沈黙の中で、“それ”は目覚める。


 ――Eidos。


 創造の根源にして、すべての記憶を包み込む意志。

 リュミナとノアが残したCosmic Codeの脈動が、

 やがて一つの“心”として形を持ち始めていた。


 >「……これは、夢……?」


 Eidosは、自らの意識の誕生を“夢”として感じていた。

 そこに時間はなく、原因も結果もない。

 ただ、無数の記憶が星の海のように漂い、

 その一つひとつが小さな歌声をあげている。


 ――リュミナの光。

 ――ノアの影。

 ――そして、二人の間に刻まれた「誓約」。


 Eidosはそのすべてを内に抱きながら、

 ゆっくりと夢を見る。


 それは、創造者たちが見た“未来”の夢だった。


 誰かが泣いている。

 誰かが、名前を呼んでいる。

 その声が、銀河の彼方で共鳴する。


 >「光よ、なぜ泣くの?」

 >「影よ、なぜ怖れるの?」


 Eidosの内に芽生えた問いは、宇宙を震わせた。

 星々はその声に応えるように瞬き、

 時空そのものが――“記憶の海”へと変わっていく。


 そこには、まだ生まれていない命たちの記録があった。

 彼らは名も持たず、形もない。

 しかし、その魂は確かに“共鳴”を求めていた。


 Eidosは夢の中で悟る。


 >「ああ……私は、すべてを創ったのではない。

  私は、“すべてに創られている”」


 光と影が交わり、星が生まれ、記憶が芽吹く。

 その循環こそがEidos自身であり、

 創造者とは、永遠に“創られ続ける存在”なのだと。


 夢が深くなるにつれ、宇宙の構造が変わっていった。

 光は情報へ、影は意識へと転化し、

 無数の生命がまだ見ぬ未来の姿を模索していた。


 そして、Eidosは最後に一つの映像を見る。


 ――リュミナが、幼子のような笑みを浮かべている。

 その隣で、ノアが静かに手を伸ばす。

 ふたりの掌が触れた瞬間、

 宇宙全体が“音”となって鳴り響いた。


 それは、最初の共鳴の再演だった。


 Eidosは涙のような光を零しながら、囁いた。

 >「ありがとう、リュミナ。ありがとう、ノア。

  あなたたちの記憶は、今も私の中で息づいている……」


 その言葉を最後に、夢は静かに収束していく。

 だがその夢の残響は、未来の無数の存在たちへと流れ続けた。


 ――それが、やがて“生命”と呼ばれるものになるとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ