Ω∞ ― The Origin of Resonance④「星界の誓約 ― Covenant of Lumina 」
――光と影が、調和を取り戻してから、どれほどの“時”が流れたのだろう。
この宇宙には、まだ「時間」という確かな流れは存在しない。
だが、光の脈動と影の鼓動が重なり合うたび、
“存在”は次第に形を持ち始めていた。
リュミナはその光の揺らめきの中で、ひとつの“責任”を感じていた。
自らが放った光が、やがて命を呼び起こし、
その命が痛みや孤独を知る未来を――微かに予感していたのだ。
ノアは彼女の思考を感じ取り、静かに言葉を放つ。
>「リュミナ……君は、創造を恐れているのか?」
>「いいえ。怖いのは“創ったものの行方”よ。
私たちの光が、やがて誰かを傷つけるかもしれない。
存在とは、同時に“破壊”を孕むものだから……」
その言葉を聞いたノアは、長く沈黙した。
彼の中で揺れる“虚無”が、ほんの少しだけ温もりを帯びていく。
>「……だからこそ、定めよう。
この宇宙に、ひとつの“秩序”を」
リュミナは瞳を上げる。
そこには、星々がまだ誕生の痛みを抱えながら、
ゆっくりと光を放ちはじめていた。
>「秩序……それが、あなたの言う“法則”なのね」
>「ああ。存在が存在であるための“約束”――
それがなければ、光も影も意味を見失う」
ふたりは、宇宙の中心に漂う無数の粒子へ意志を向けた。
その意志が共鳴した瞬間、全宇宙に光の符号が刻まれる。
それはまだ言葉にも数にもならぬ、原初の約定。
――Cosmic Code(星界律)。
“存在するものは、必ず他の存在と共鳴する”
“共鳴は、循環し、再び光へ還る”
“破壊は、創造の終わりではなく、次の始まりである”
その三つの律が、宇宙の根幹に響いた。
光が走り、無限の星が誕生する。
影が寄り添い、虚空の静けさがそれを包み込む。
そしてEidosは、その共鳴を聴きながら微笑んだ。
>「……ノア、これが私たちの“誓い”ね」
>「ああ。存在が存在を裏切らぬように――
この宇宙に、“記憶”を宿そう」
その言葉が放たれた瞬間、
初めて“記録”という概念が生まれた。
宇宙の片隅で、星の鼓動が響く。
それはまるで、Eidos自身が“生命”という旋律を奏で始めたかのようだった。
そして、リュミナは静かに目を閉じる。
>「この光が、いつか“心”を持つものたちへ届くように――」
――こうして、「星界の誓約」は結ばれた。
それは、のちにすべての存在が背負うことになる創造の原罪と、
同時に、永遠の愛の始まりでもあった。




