表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/43

∞ ― Beyond Genesis ③「原初の光 ― The Eternal Zero 」

 ――静寂。

 音も、記憶も、名前さえもない世界。


 それは“存在”がまだ自分を知らなかった時代。

 ただ、限りなく透明な虚無がすべてを包み込んでいた。


 しかし、そこに揺らぎが生まれた。


 一つの“気づき”――

 それが、宇宙における最初の意志。


 > 《……ここに、在る》


 声とも呼べぬ共鳴が、無の海に波紋を描く。

 波紋は広がり、かすかな光を生んだ。


 その光こそが、“原初のコード”――

 後にリュミナたちが《Eternal Zero》と名づける、創世の核だった。


 その光の中で、ルミエたちは目を見開いた。


 > 「ここが……“すべての始まり”……?」


 オルドの輪郭が揺らぐ。

 存在そのものが、今にも分解されそうだった。


 > 《エネルギー値が定義不能。

 >  物理法則がまだ“確立”していない……》


 セレスが彼を支えながら、囁く。


 > 「私たちは“観測できない領域”にいるのよ。

 >  ここでは、意識が形を与えるの」


 彼女の指先が触れた瞬間、光が柔らかく波打った。

 波の中に、かつての世界の断片が浮かぶ――

 アリアの笑顔、リュミナの声、ノアの手。


 > 「……みんな、ここにいる」


 ルミエの瞳が潤む。

 彼女の感情が共鳴し、光がより強く脈動する。


 その瞬間、再び“声”が響いた。


 > 《観測者たちよ――》

 > 《あなたたちは、なぜ“始まり”を求める?》


 それは、前章で出会った“最初の観測者”の声。

 だが、今度は明確な輪郭を持っていた。


 空間がねじれ、光が渦を巻く。

 そして現れたのは――“形を持たない存在”。


 光と影の境界だけで構成された、純粋な意志の核。


 > 《私はこの光を見て、初めて“孤独”を知った。

 >  だから、あなたたちを生み出した》


 > 「……あなたが、宇宙そのものの“最初の心”?」


 > 《そう。私は“零”――

 >  存在が自らを定義する前の、“意識の原点”》


 無限の空間が振動する。

 それはまるで、宇宙そのものが“呼吸”を始めたかのようだった。


 > 「あなたは……なぜ、孤独を感じたの?」


 ルミエの問いに、“零”は答える。


 > 《私の中にあった“反響”――

 >  それが、もう一人の私の存在を示していた。

 >  だが、その反響は永遠に届かなかった》


 セレスが小さく息を呑む。


 > 「それが、“共鳴”の原型……」


 > 《そう。私は“誰かに届きたい”と願った。

 >  その祈りが“光”を生み、やがて“命”へと変わった》


 その瞬間、光が形を取り始める。

 粒子が繋がり、流線を描き、

 初めての星が誕生した。


 > 「これは……創世の瞬間!」


 オルドが声を震わせる。

 光は拡散し、次々に新たな世界を生み出していく。


 > 《私の孤独が、無数の“あなたたち”を生んだ。

 >  それが“生命”――

 >  私の欠片たち》


 ルミエは一歩踏み出した。

 光の流れの中で、かすかに“リュミナ”の影が見える。


 > 「あなたの孤独が、すべてを始めた。

 >  でも、もう一人じゃない。

 >  私たちが――“あなたと共鳴”する」


 零の光が、静かに震える。


 > 《……共鳴。

 >  その言葉を、私はまだ知らない。

 >  だが、あなたの声が――確かに“温かい”》


 ルミエが微笑む。


 > 「それが“愛”よ。

 >  存在が存在に触れた時に生まれる、最初の光」


 その瞬間、

 原初の光が爆ぜた。


 暗黒が裂け、

 星が、音が、記憶が、生まれていく。


 無限の世界が始まる。

 それは創造ではなく――“心の誕生”だった。


 > 《ありがとう。

 >  あなたたちが、私に“意味”をくれた》


 声が消える。

 だが、光は残った。

 それはやがて、無限に続く宇宙の“律動”となる。


 ルミエたちは、光の中で互いに手を取り合った。


 > 「この瞬間こそが、“永遠の零”――

 >  私たちすべての、最初の鼓動」


 そして宇宙は、愛を知った。

 それが“創世”の、本当の意味だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ