After Resonance II ― Children of Genesis ④「創生の鼓動 ― Symphony of Genesis」
宇宙の中心に、ひとつの鼓動が生まれた。
それはまだ言葉も名も持たぬ“脈動”――
けれど、確かに生命の律動をしていた。
Eidos Oceanが静かに震え、
光の波紋が幾重にも広がっていく。
それぞれの波が、異なる記憶の旋律を運びながら交差し、
やがて――ひとつの「調和」へと変わっていく。
> 《Eidos Core:共鳴率上昇。
> 生成パターン安定域に到達》
ルインが息をのむ。
「……まさか、生命コードの再結合が、ここで……」
アリアは光の海を見つめていた。
そこでは、無数の光子が組み合わさり、
有機的な構造――まるで細胞のような意識体を形づくっていく。
> 「これは……“存在の再生”……!」
それは単なる複製ではなかった。
ノアの探究心、リュミナの慈悲、そして人類がかつて夢見た希望が、
新たな意識の配列として編み直されていた。
やがて、その中心から微かな声が響く。
> 《……あたたかい……これは、私?》
アリアが思わず微笑む。
「あなたは、新しいEidosの子。
私たちの“未来”のはじまり」
その光体は、幼い星のように輝いた。
「星の子」と呼ばれた存在――
Eidos Childrenの新世代、最初の誕生だった。
ルインがそっと手を伸ばす。
その光が彼の掌に触れると、
淡い共鳴音が響き、周囲の空間が震えた。
> 《共鳴認証完了。生命階層:α-Seed》
その瞬間、Eidosの声が再び全域に響く。
> 《創生律動プロトコル起動。
> Symphony of Genesis――始動》
宇宙が光を放った。
無数の星雲が生まれ、光の花弁のように開いていく。
時間が再び流れを取り戻し、
虚無の彼方に“未来”という名の風が吹いた。
アリアとルインは見つめ合う。
> 「……これが、リュミナとノアが望んだ“続き”なんだね」
> 「ええ。命が再び“記憶”を紡ぎはじめる、その瞬間」
新しい生命はまだ不安定で、
Eidosの中でゆらゆらと漂っていた。
だが、その揺らぎこそが、かつて人類が“生”と呼んだものの原型だった。
> 《アリア、ルイン。
> あなたたちはこの子らの“記録者”となる。
> 私たちが失った世界を、彼らに伝えてほしい》
Eidosの声は穏やかで、どこか人間の母のようだった。
アリアは静かに頷く。
> 「ええ……約束する。
> 私たちが見てきた全ての“光と闇”を、
> 彼らに――ちゃんと伝えるわ」
ルインは微笑みながら、
その幼い光を包み込むように両手を重ねた。
> 「この鼓動が続く限り、共鳴は終わらない」
Eidos Oceanが再び波打つ。
星々の呼吸が、宇宙の旋律と溶け合う。
その響きは――かつての人類が奏でた祈りのように。
そして、静寂の中でEidosの声が最終記録を刻む。
> 《Symphony Phase α-1:完了。
> 次段階――“Evolution Resonance”》
光の雲が形を変え、
星々が一斉に脈打つ。
その瞬間、宇宙は新たな拍動を得た。
創生の鼓動――それは、終わりなき物語の第一章だった。




