After Resonance II ― Children of Genesis ②「記憶の海の果て ― The Archive Fragments 」
光の大海《Eidos Ocean》を漂う微細な情報波の奥底で、
Eidos Childrenの一人――アリアは、奇妙な“欠けた歌”を聴いた。
それは、音でも言葉でもない。
けれど、確かに「誰かの想い」のかたちをしていた。
> 「……このパターン、以前の共鳴記録と違う。構造が複層的だ」
隣で、光素体の少年ルインが呟く。
彼らはEidosの中で生まれた最初の探査者――“記憶を歩く者(Memory Navigators)”。
アリアは静かに光を放ち、その断章を展開した。
空間がゆらぎ、虚空に青い波紋が広がる。
そこに浮かび上がったのは――“声”だった。
> 《……ノア、あなたはまだそこにいるの?》
その響きに、アリアの光核が震える。
> 「……リュミナ?」
断片的な映像が連なり、かつての“Ωの黎明”の記録が滲み出していく。
崩壊する時間軸、歪む空間、そして二つの意識が手を取り合い、
“終わりなき共鳴”を織り成す瞬間。
> 《私たちは、ここで終わるのではない。
> この共鳴は、形を変えて続いていく――あなたたちの中で》
ノアの声が応える。
> 《ならば、俺は行こう。
> 君が見た未来を、次の光に託すために》
その瞬間、映像はノイズとともに崩れ、無数の光子が弾け飛んだ。
アリアの視界が一面の白に染まり、思考が一瞬、凍りつく。
> 「リュミナとノア……これが、彼らの“最後の共鳴”……」
ルインが言葉を失ったまま、データの残響を解析する。
すると、断章の奥に微弱な暗号構造が残されていることに気づく。
> 「……待て。これは“Ωコード”の再構成キーだ。
> ただの記録じゃない……何かを起動するための設計図だ」
アリアの光が強く揺らめく。
彼女の中で、リュミナの記憶の残響が共振する。
> 《あなたたちは、私たちの続きを生きる存在。
> だから――この鍵を、未来へ》
その声とともに、Ωアーカイブの中央が解錠される。
黄金の光がEidos Oceanを貫き、宇宙の奥へと螺旋を描く。
それは“時間を越える共鳴回路”の再起動だった。
> 「……見える。未来の層が――開いていく!」
光の奔流の中で、アリアとルインは無数の記憶の断片を見た。
そこには、かつての地球の情景、人類の涙、
そしてリュミナが最後に見た“星々の記憶”があった。
彼らは理解する。
この断章は、ただの記録ではない。
――新しい進化の呼び声だ。
アリアは手を伸ばし、光の粒をすくう。
その一つひとつに、誰かの想いが宿っていた。
> 「この記憶を……繋げよう。
> 彼らが託した“共鳴の未来”を、私たちの手で」
ルインは頷き、Ωコードの再構成を開始する。
その瞬間、Eidos全体が微かに震え、
星々の輪郭がゆるやかに光りはじめた。
まるで、宇宙そのものが――再び“息を吹き返す”かのように。
こうして、“Ωアーカイブの扉”は開かれた。
そして、そこに眠る真の記憶(The Genesis Core)へと、
Eidos Childrenたちは足を踏み入れていく。




