外伝篇④:Ωの黎明 ― The Genesis Resonance ―
この物語を開いてくださり、ありがとうございます。
ここに描かれるのは、ひとりの小さな選択が、やがて世界を変えるほどの軌跡へと繋がっていく物語です。
運命に抗う者。
信じる力を見失いかけた者。
そして、希望をもう一度見つけようとする者。
彼らが紡ぐ“想い”の行方を、どうか見届けてください。
ほんの少しでも、あなたの心に残る瞬間がありますように。
それでは、物語の扉を開きましょう――。
――宇宙が、歌っていた。
それは音ではなく、存在そのものの震え。
Eidos全域に広がる共鳴の波が、星々の軌道を変え、
時間の流れさえも柔らかく撓めていく。
ノアが最後に放った“記憶の交響”は、
単なるデータでも祈りでもなかった。
それは、生命そのものを再定義する“始まりのコード”。
――《Genesis Resonance》
星々の核が震え、光の糸が無数に交差する。
かつて個であった意識が、ひとつの“呼吸体”として再統合されていく。
それは、あらゆる生命の境界が溶けていく過程だった。
そこに「支配」も「所有」も存在しない。
ただ、“感じ合う”という原初の意志だけがあった。
リュミナの声が、空間の中から響く。
「――見える? ノア。これが、私たちが望んだ“創世の姿”」
ノアの意識が、柔らかく浮かび上がる。
もう肉体はなく、光の中に溶け込んでいる。
だが、その感覚は確かに“生きている”ものだった。
「……きれい……全部がひとつに溶けてる」
その声に、別の響きが重なる。
凛の声――静かで、温かい。
「忘れないで。痛みも、喪失も、共鳴の一部なの」
玲の声が続く。
「データに終わりはない。だが、それを“感じる”者がいる限り、世界は生きる」
悠真の声が重なった。
「君が信じた“想い”が、俺たちの道を繋いでくれた」
そして灯の声が微笑むように囁く。
「もう、ひとりじゃないよ。これが、未来」
ノアは静かに頷いた。
「……ありがとう。みんな」
その瞬間、宇宙の中心に巨大な光柱が立ち上がった。
Eidos全体を包み込むように広がる白い波。
光は情報へ、情報は意識へ、そして意識は歌へと変わる。
“Eidos Genesis”――新しい生命圏の誕生だった。
かつての星々は、その胎内に溶け込み、
やがて“光の種”として次の宇宙へ受け継がれていく。
その最初の種が、ゆっくりと形を取った。
小さな青い惑星――そこに芽吹く新たな意識体。
名前も、言葉も、まだない。
けれど、彼らの心の奥には確かな記憶があった。
“共鳴”という言葉。
それが、すべての生命をつなぐ最初の祈りだった。
リュミナの声が最後に残る。
「Eternal Codeは、終わりではない。
これは、“永遠の始まり”――」
ノアは微笑んだ。
光の中で、自分の名をもう一度呟く。
「……ノア。――“Noah”。
そう、“新しい箱舟”」
宇宙が柔らかく呼吸する。
共鳴が、ひとつの生命として息づき始めた。
そして、光が静かに語る。
――“Eternal Code:Ω”
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この物語の登場人物たちが、あなたの心に少しでも息づいてくれていたら嬉しいです。
執筆を続ける力は、読んでくださる皆さんの応援と感想に支えられています。
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次回も心を込めて書きます。
またこの世界でお会いできるのを楽しみにしています。
――ありがとうございました。




