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エントロピー

作者: 月蜜慈雨




 窓を打ちつける雨粒が痛そうだ


 この窓を最後に痛いのが無くなればいいな


 そんなわけないか


 ゲームの画面が揺れる


 ピコピコ音がする


 窓辺に咲いている植木鉢が水が欲しいというから


 一日カルキ抜きして部屋の隅に置いておいた水をあげた


 生ぬるいと文句を言われた


 ベッドに戻ってゲームを再開する


 電話が掛かってきた 姉からだった


 姉から聞かされる家族の愚痴に永遠とウンウン頷いた


 満足したのか姉が電話を切る


 空はもう曇天でもわかる程暗くなっていた


 雨はまだ降っていた


 アスファルトに染みた雨水は無尽蔵に街を駆け巡る


 白い曇りガラスを指でなぞる


 どこまでも巡回していく


 行き止まりの無い旅


 目の端の水もやがて雨水になるのなら


 どこまでも広がる青空


 明日の天気を示す飛行機雲


 むせ返る土の匂い


 この空も大地も


 答えは教えてもらえない


 ベッドに戻ってゲームを再開する


 段々と部屋は暗くなっていった


 ゲームの画面と


 街灯を反射して輝く雨粒だけが


 やけに明るい








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