第8話. 隣の呼吸と出発
チュンチュン
スズメの鳴き声で目が覚める。
起きたばかりだからか視界に映る天井がボヤけて見てる。しかし、時間が経つにつれてだんだん鮮明になる。それと同時に左側から自分のものじゃない呼吸が聞こえてくる。
「すぅーすぅー」
音のする方を見ると気持ち良さそうに姉さんが寝ていた。
俺は思わず飛び起きてしまう。
(なんで、姉さんがここにいるんだ)
寝起きということもあり、状況が飲み込めない。
「んっんー?」
そうこうしてると姉さんが目を覚ます。
「あっ、ゆーちゃん起きたんだぁ」
蕩けた声で聞いてくる。
「今起きた、けどなんで姉さんが?」
「んー違うぅ。"お姉ちゃん"でしょ」
「うっ」
状況が飲み込めてないというのと、まだ面向かって言うのは恥ずかしい気持ちで躊躇ってしまうが、呼ばないと話が進まないので決心し姉さんに問いかける。
「なんで俺のベッドに寝てるの?お姉ちゃん」
「よく言えました。今日の事を本当は昨日伝えようと思ったんだけど忘れちゃってて、起こすついでに伝えれば良いかなって思ったの。それで、いざ来てみたらゆーちゃんが気持ち良さそうに寝ててね。だから、ベッドに入って起きるの待ってたの。したら寝ちゃってた」
テヘッと可愛らしい顔を浮かべる。
「寝ちゃったって」
「ごめんね?」
「別に謝ることでもないけど、、それで今日の事って?」
「ゆーちゃんも水曜日に聞いたと思うけど、お母さん達も2人で出掛けるんだって。11時くらいに家出て、帰ってくるの夜になるって言ってた。それでね、お母さん達が行ってから私達も出れば良いかなぁって思ったの?どう?」
そう言えば、「出掛けるから」って母さん言ってたなと思い出しながら返事をする。
「俺はそれで大丈夫。行く場所は決まってるの?」
「うん。駅前のショッピングモールに行こうと思ってる」
「あぁ、最近できたでっかい所。行ったことないし良いかも」
「ほんと?良かったぁ」
そう言うと姉さんの瞼がゆっくり閉じてしまう。
「お姉ちゃん?お姉ちゃん?」
声をかけながら肩をさする。
「ん〜ふふっ」
「どうしたの?」
「寝ちゃったのに"お姉ちゃん"って呼んでくれたから。嬉しくて」
「あっ」
自然と口から出ていたことに少し驚いた。
「その調子でお願いね?私、ゆーちゃんにお姉ちゃんって呼ばれるの嬉しいから」
「わ、かった」
「ふふっよろしくね」
言い終わるとまた寝てしまった。
「すぅー」と気持ち良さそうに寝てる姉さんを起こすのは忍びないので起こさないようにベッドを降りる。
(このままで良いよな?俺はとりあえず、顔を洗おう)
なるべく音を立てないように部屋を後にする。
◇ ◇ ◇
朝食や朝の支度を済ませたり、ゆっくりしてたら父さん達が出掛ける時間になった。
助手席側の窓を開け、母さんが話しかけてくる。
「じゃあ、家のことよろしくね」
「2人なら心配いらないよ、母さん」と運転席に座る父さんも続く。
「春美に渡したお金で夜は何か良い物でも食べてな」
「父さんの言う通り、心配しないで大丈夫だよお母さん。雪哉もしっかりしてるし大丈夫だよ。お父さん、お金ありがとう。2人とも気を付けてね」
2人に姉さんが答える。
「春美、ありがとう」
「ああ、じゃあ行ってくるな」
俺と姉さんは声を揃えて2人に言う。
「「行ってらっしゃい」」
手を振りながら見送る。
車が角を曲がり見えなくなるのと姉さんと顔を向け合う。
「じゃあ、私たちもそろそろ出発しよう?」
「うん、そうしようか」
準備の出来てた俺たちはショッピングモールに向かうためにまずは最寄りの駅に向かう。
(金曜日から知っていたけど、いざその時が来ると緊張してしまう。姉さんと2人っきりのお出掛け、、今までもあったけど、今はその時と状況が違う。姉さんは義姉で俺のことを、、これってもう)
「これって、私たちにとって初めてのデートってことで良いよね?」
隣を歩く姉さんが俺が考えていることが分かっているかの様に聞いてくる。俺は姉さんの口から出た"デート"という単語にドキドキする。
「い、良いんじゃないかな〜」
「ふふっ、ゆーちゃんの耳が真っ赤だ」
「それはっ!そうなるよ」
「ふふふっ、ゆーちゃんかわいい」と言いながら隣を歩く姉さんの耳も赤くなっているのを見逃さなかった。が、その事を言うと俺が更に赤くなることになりそうだったので触れなかった。
「あっそうだ。今日は私のことを名前で呼んで」
突然の提案に俺は「えっ」と声が出てしまい、足が止まる。
「それは、、どうして?」
止まった俺に気付いて少し先で姉さんが振り返り返事をする。
「せっかくのデートだからじゃだめ?私も今日は雪哉って呼ぶから」
いつも通り“姉さん“って呼ぶつもりだったから少し考えてしまう。
「だめ?」
キラキラした目で俺に問いかけてくる。
(やっぱり、姉さんには敵わないみたいだ)
俺は両手を上げ降参する。
「分かった」
「じゃあ、練習に呼んでみて」
(うっ、そう来るか)
躊躇っている俺を他所に姉さんは「さん、はいっ」と掛け声をする。
「は、春美さん」
「はい、雪哉くん」
俺はその返事にむず痒い気持ちになりながら、姉さんと一緒に歩いて駅に向かう。
どうも、オレレモンです。
今話はいかがだったでしょうか。
だんだんと遠慮がなくなっていく春美さん、楽しいですね。
次話もよろしくお願いします