閑話①
目が覚めると見慣れない天井だった。
「あれ?」
横を向くと彼の顔が横にあった。
ここが彼の部屋だというのは理解できた。ただ、どうして彼の部屋にいるのか理解できなかった。
寝ぼけた頭が冴え始める。すると昨日の出来事が段々と鮮明になってくる。
「私、、なんてことを」
自分が義姉だという告白、一緒に寝たいとお願いしたこと、寝ているからと彼に対する想いを口に出したこと、その結果暴走しちゃったこと、寝ていると思った彼が実は起きていて私の想いが知られちゃったこと、彼の胸の中で泣いたこと、彼に告白したこと、、全て思い出した。
『恥ずかしい、逃げたい、ごめんなさい』
あの時の自分は間違いなくパニックになっていた。
でも、そんな自分を彼はその優しさで包んでくれた。
話をしてくれた。
『今は答えを出せない。でも、いつか絶対答えを出して伝える』
彼はそう言ってくれた。その言葉がどれほどの救いになるか、彼は分からないかもしれない。でも、私には救いでしかなかった。
「ゆーちゃん、優しすぎるよ。ますます好きになっちゃう」
今は彼が寝ていると確信しているので、こんな事を言えちゃう。
「今日からアプローチしても良いかな。ゆーちゃん困らせちゃうかな」
でも、彼なら許してくれる気がする。そんな確信がある。だって、彼は優しいから。
「すぅーすぅー」
気持ち良さそうに寝る彼を愛おしく思う。このまま、ずっと見ていたい。だけど、そういう訳にいかない。カーテンからこぼれる光は今が何時くらいか認識させるには十分過ぎるから。
「今は7時くらいかな。そろそろ起きて、準備しないと」
私は永遠に味わっていたいこの時間に別れを告げることにした。
「ゆーちゃん、昨日は本当にごめんね。そして、ありがとう」
昨夜からずっと握っていてくれた手を放そうとする。
すると、彼の目が少し開いた。
「お姉ちゃん?起きるの?」
眠たげな声で彼が聞いてきた。彼が完全に起きないように小さな声で返す。
「うん。今日はバイトあるからそろそろ起きるね」
そう伝えると「そっか。頑張ってね」と返してくれる。
「ありがとう。ゆーちゃんはまだ寝てて良いから。ゆっくり休んでてね」
彼は「うん」と一言だけ言ってまた寝始める。
「ゆーちゃん、もう行くね。本当にありがとう。大好きだよ」
私は優しくて、可愛くて、大好きな彼に別れを告げる。そして、一晩中握っていてくれた彼の手の温もりを握りしめて、部屋を後にする。