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第2話.本物と来室者

「2人に引き取ってもらってからずっと幸せだよ」


姉さんがそう言うと父さんも母さんも涙を浮かべる。


「それに、ね」


声を震わせながら姉さんは言う。


「2人は偽物って言うけど、私にとっては2人も本物の親だがら」


その言葉を聞くと父さんも母さんも「ありがとう、ありがとう」と声を出して泣きだす。 姉さんが近くに行くと3人で肩を寄せ合い泣く。その様子を見て俺は胸が温かくなった。


          ◇ ◇ ◇


3人が落ち着いたところで俺はようやく言葉を絞り出す。


「何で今日にしたの?」


「「えっ?」」


父さんと母さんの声が重なる。


「だって、タイミングは前からあったでしょ?なんで今日なんだろうって思って」


2人とも顔を見合わせ困った顔を浮かべる。


(何か事情があるようだ)


「それはね」と父さんたちの後ろに立ったままの姉さんが話し始める。


「私が2人に伝えないでって言ってたの」


「どうして」


「雪哉は小さい頃から私のことをとても慕ってくれたから。私が高校に上がったタイミングで雪哉に伝えようか?ってお父さんが言ってくれたのだけど、その時はまだ勇気がなかった。もし、雪哉に真実を伝えて拒絶されたらって考えたら怖かった」


「そんなことは、、しないよ」


「雪哉は優しいからそう言ってくれるんじゃないかって思ってた。でも、もしもの事を考えたら私は怖かった」


姉さんの表情から本当に怖かったんだと伝わってくる。


「でも、最近になって決心がついたの。高校生になった雪哉を見ていたら伝えても良いんじゃないかって、そう思ったの。お父さん達に相談したら「春美が良いなら言おう」って。そう言ってくれたの。それに誕生日が近かったからせっかくならその日に伝えようって思ったの」


「だから、今日だったのか」


「ええ」と姉さんは言い、話を続ける。


「雪哉、せっかくの誕生日なのにこんな話を聞かせてしまってごめんなさい。それに、これまで偽物のなのに、実の姉の様に一緒に過ごしてごめ」


「やめてくれ」


姉さんが何を言おうとしてるか悟ると声が出ていた。


「謝らないでくれ。確かに血の繋がりがないのは驚いたけど、俺は姉さんの弟だよ。それにさっき父さん達に言ってたじゃないか。俺も同じ気持ちだよ。たとえ血の繋がりがなくたって姉さんは本物の姉だよ」


そう言い終わると、姉さんは「ありがとう」とひとことだけ言った。


しばらくの間、沈黙が流れるが父さんの「まさか、雪哉がこんな事を言うなんてな」と呟く。


「昔はあんなにやんちゃしてた、あの雪哉がね〜」と母さんが答える。


「やめてくれぇ、恥ずかしい」


俺がそう言うと3人はふふふっと笑い、それからは俺のやんちゃエピソードを肴にケーキを食べようということになった。過去を掘り返されるのは本当に恥ずかしかったがみんなで食べたケーキは本当に美味しかった。


           ◇ ◇ ◇


ケーキを食べ終わると良い時間になったので自室に戻って休むことにした。


ベッドに座ると今夜のことを振り返る。


(姉さんのことは本当に驚いた。今思い返すと勢いで恥ずかしいことを言ったけど、あれは間違えなく本心だ。しっかり伝えられて良かった)


「良い誕生日だったなぁ」


そのまま、ベッドに身を預ける。今日はもうこのまま休もうと全身の力を抜いた。


...何分経っただろう。


「寝れない」


時間が経つにつれ頭が冴えてきてしまった。横になってても寝れないので身体を起こす。ちょうどその時、コンコンとノックの音がする。


「雪哉、入っていい?」


声の主は姉さんだ。


「良いよ」


ベッドサイドに座り直し、返事をすると扉を開けて入ってくる。


「もう寝ちゃったと思ってた」


「ははは、寝ようと思ったんだけど寝れなくて」


「そうだったんだ」


「ああ」


...


沈黙が訪れる。


(こんな時間にどうしたんだろう。さっきの事もあるし、何か話がしたいのかなぁ)


そう思った俺は「立ってるのもあれだし、座ったら?」と提案する。


姉さんは「ありがとう」と言い、隣に座る。


(なんとも気まずい。何か会話をしないと。話題、話題はないかなぁ)


何か話さないと、と思っていたが沈黙を破ったのは姉さんだった。


「今日は本当に驚かせてごめんね。それに受け入れてくれてありがとう。あの言葉、嬉しかった」


「そっ、それなら良かったよ」


姉さんに言われると恥ずかしくなる。


「それに誕生日、本当におめでとう」


「ありがとう。姉さんのおかげで16歳になれたよ」


「ううん、私は何もしてない。父さんと母さんが見守ってくれたからだよ」


「それは、そうだけど。父さん達もだけど、より近いところで姉さんが見ていてくれたから俺はここまで大きくなれた。やっぱり姉さんのおかげだよ」


「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。私は本当に良い弟を持ったよ」


その言葉で胸が温かくなる。"良い弟"と言われた事が純粋に嬉しかった。


「それでね、お願いがあるの」


「お願い?」


立ち上がり、俺の正面に姉さんが来る。


「今夜、一緒に寝たい」


「は?」




      


第2話読んでいただきありがとうございました。


次話はドキドキ義姉と添い寝!?です


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