第11話 信じたのは、嘘よりも温もりだった
そして貼られたどこかのプラットフォームのURL。
『宗介に市場を開いてもらって、私のためにスクリーンショット、私はどのように完成を教えます。』
その情報を検索したが、情報が何もない。
『宗介は市場を開いたんですか?』
返信が遅いオレに林静は痺れを切らしているようだ。
「私は登録する前にこのプラットフォームについて詳しく知る必要があります」
『宗介には何の情報もありませんでしたが、それはプライベートエクイティ、つまり外には開かれていない市場だったからです。
宗介には何も検索できませんから、宗介も誰にも言わないでください。
ポニョは宗介を全面的に信用できると思ったのですが、それはまず宗介が金を使う必要がなく、儲けた金は宗介のものだからです。迷いませんように。』
チグハグな日本語になって来たが言いたいことは理解できる。
誰にも言うな…詐欺師が使う常套文句。
終わりだな、林静…寂しいよポニョ…。
俺はスマホを握りしめたまま、しばらく動けなかった。
信じたかった。最後の一滴まで。
――これはきっと、林静の意志じゃない。誰かに言わされてるだけだ。
そんな言い訳を、何度も心で繰り返してた。
けど、それでも――もう限界だった。
LINEのやり取りは、俺にとって“現実逃避”だった。
けど今、ポニョの向こう側に現実の“搾取”が見えてしまった。
温かかった72時間が、音を立てて崩れていく。
それでも、まだポニョの幸せを願ってしまう。
せめて、最後にもう一度――
俺はブロック覚悟で思いを伝えることにした。
「林静さんへ。
まずは、ありがとう。
この三日間、あなたと過ごしたLINEのやりとりは――
言葉にできないくらい、あたたかくて、どこか切なくて、そして、間違いなく“生きていた”時間でした。
正直、どこかで気づいていました。
あなたが、いつかこの話をするのではないかと。
それでも、あなたの一言ひとことに、笑って、驚いて、心を動かされた自分がいたのも事実です。
たとえそれが、決まった台本のやりとりだったとしても――
私はあなたとの“この時間”を、真剣に受け止めていました。
だから、どうか聞いてください。
私は、投資の話は受け取れません。
それがどんなに善意に見えても、どれだけリスクが無いと言われても、僕は、自分の人生を、自分の足で歩くと決めています。
だから、どうか心配しないでください。
私は、自分を守れるし、自分で稼いで、自分で選んで、生きていける。
あなたのことは、何ひとつ知らない。
本当の名前も、住んでいる場所も、性別すらもわからない。
それでも――
あなたの文面から伝わってくる“誰か”の存在は、とても魅力的でした。
賢くて、可愛げがあって、会ったこともないのに、まるでそばにいるような距離感で話してくれるその姿勢に、心が何度も救われました。
きっと、あなたには人の心を動かす“力”がある。
だからこそ、願わずにはいられません。
どうかその力を、誰かの幸せのために使ってください。
誰かを傷つけたり、奪うためじゃなく――
“癒すために”、笑わせるために、救うために。
この世に、あなたのような存在がいてよかったと。
たとえ、それがほんのひとときの幻だったとしても。
私は、あなたの幸せを願っています。
どうか――
ポニョとしてではなく、あなた自身の人生を、幸せに生きてください。
宗介より。」




