第44話 みんなで東の孤児院に行きますわ!
どこから話が漏れて、どうなったのか……。
建国月間に東の孤児院に行って建国祝いをする話が広がって、シェルリンたち東の孤児院担当者と、カリーナ、アメリア、マリーに加え、ユリウス、そしてモンクレージュ学園の担当医トビアスまでが参加することになった。
なんでも彼は、医療に身分の境なしをモットーとしているらしく、ここ数年、孤児院や役場、教会などで平民相手の健康診断をしているらしい。
簡単な診察をし、健康のためのアドバイスをする。
重い病の場合は、市井の医者への紹介状を書く。
「無料の治療を掲げてしまうと、全く手もお金も足らなくなるけど、診察して、病気の早期発見が出来れば、治療に必要なお金も少なくて済むし、そもそもみんなが健康の為の知識を持っていたら、病にかかる確率も下がるからね」
トビアスが健康診断をしているのはそういう理由らしい。
だが、彼も東の孤児院がある地域一帯は治安の関係上、健康診断に赴いたことはない。
今回シェルリンたちが東の孤児院に行くと聞いて、トビアスはシェルリンたちと共にいく大勢の護衛を目当てに同行を申し出てきた。
ちなみにブルーノ経由でライのことを知っていたナターシャやすでに面識のあるアメリアには、ライは一緒に行かないのか? と聞かれたが、ライは同行者にユリウスがいることを知ると、「王子が一緒なら護衛は十分だろう」と同行を辞退した。
確かにナターシャは今回も大勢の護衛を連れてくるであろうし、治安が悪いとされていた東の地区にたった一人の王子が行くのだから、きっとユリウスを守る護衛も相当な数だろう。
前回あんなことがあったため、他のメンバーも少し多く護衛を連れてくるかもしれない。
けれど……。
あの日、孤児院の裏手に助けに来てくれたのは、他の誰でもないシェルリンの兄ライだった。
あの日だってたくさんの護衛がいたのに、助けてくれたのは、ライだった。
だからだろうか。
この頃のシェルリンは、多くの護衛に囲まれるよりも、ライの傍にいる方が安全で、安心できるような気がしていた。
いや、そもそも。
記憶のないシェルリンを知っているのはライだけなのだ。
実の兄なのだし、シェルリンにとってライが安心できるのも当然のことなのかもしれない。
ライが同行を断った時少しシェルリンが不安そうな顔をしたためか、ライは一緒に来ることはなかったが、今まで使っていたお守りの髪飾りをスッとシェルリンの髪から抜き取り、新たにお守りを作ってくれた。
見た目はあまり変わらないが、やはりこういう物をもらうのはとても嬉しい。
前回はただのお守りだと思っていたので、気持ちが嬉しいとしか思っていなかったのだが、あの日この髪飾りは、ライが来るまでの間本当にシェルリンたちを守ってくれた。
だから、ライが来なくても大丈夫。この髪飾りが、いやこの髪飾りを通じてライが守ってくれる……。
シェルリンは、ライが来られず不安になる気持ちに、そう言い聞かせた。
ちなみに……この新しく作ってもらったお守りはすぐにマリーに気づかれることになった。
ほとんど見た目は変わっていないのにもかかわらず、いち早く気づくあたりマリーはとても目ざとい。




