拠点(5)
今回は拠点造りの話(5)です。
(どうしたら良いんだ)
私はエルフの族長のムム。
最近人族がエルフの森に侵入して、同胞を拉致しようとする事件が何度も発生している。
既に何十名の同胞が拉致されてしまった。
「人族の大集団が森に迫っています」
「直ちに迎撃の準備をしなさい」
遂に人族が大挙して、森に迫っているという報告が伝えられた。
私は迎撃の準備を命じた。
最初は優勢だったが、徐々に劣勢になってしまっている。
このままでは全滅してしまう。
(アンタ達、エルフに何をしているのよ)
エルフの森に転移したら、人族の大集団に襲撃されていた。
このままでは依頼が達成出来ない。
つまりミドリに嫌われてしまう。
絶対に赦さない。
ゴブリンキングの剣で襲撃者を次々と斬り捨てた。
「「「「「ぎゃあああああ」」」」」
人族に異変が発生したみたいで、動きが鈍くなった。
遠見の魔法で確認すると、一人の人族が同胞である人族の大集団を攻撃している。
「「「「「・・・・???」」」」」
私達は困惑するしか出来なかった。
(あの女、同族を攻撃するなんて、何を考えているのよ)
マリナは桜の行為に呆れてしまった。
「不埒者達は全滅させたわよ。族長に面会を求めます」
やがて人族の大集団は全滅してしまい、全滅させた人族とドライアドが面会を求めてきた。
「・・・・分かった。面会に応じる」
あんな大集団をあっさりと全滅させた人族が相手では面会に応じるしかないので、私に直ぐに了承した。
「私は桜」
「アカネです」
「私は族長のムムです。御助勢頂いて、ありがとうございます」
「気にしないで。依頼だから」
「そうは参りません。是非お礼をさせて下さい」
「それなら私の住む家を用意してくれる」
「この森に住むのですか」
「偶に訪れるだけよ」
「本当にそれだけで宜しいのですか」
「あぁ、もう一つあったわね。実はある植物を育てて欲しいのよ」
「大事な依頼を忘れないで下さい」
「植物を育てるですか?」
どんな要求をされるかと思ったら、簡単な内容だった。
「もう一度確認します。本当にそれだけですか?」
「それで良いわ」
「分かりました。それでその植物というのは何ですか」
「これよ」
「・・・・こ、これは世界樹の苗木ではないですか」
「そうよ」
「・・・・貴女はどのようなお方なのですか」
世界樹の苗木を所持しているなんて、普通の人族では絶対にあり得ない。
「世界樹の苗木を所持しているのは、世界樹の森のミドリさんが依頼主だからよ」
「世界樹の森のミドル様の依頼ですか。畏まりました。世界樹の苗木は必ず育てます」
「頼むわよ。それじゃ失礼します」
「失礼します」
「待って下さい。私はムム族長の娘モモです。サクラ様、私を貴女の弟子にして下さい。私は強くなりたいのです」
「お断りします。私は弟子を持たない主義です」
「お願いします」
拒否したのに、モモは諦めなかった。
「・・・・貴女、ちょっと来てくれる」
アカネがモモを離れた場所に連れて行った。
彼女を説得してくれるのだろう。
「あの女の弟子になるのは止めなさい。あの女は同性愛者なのよ」
「私と同じですね。私も男が嫌いなんです」
「・・・・あの女は姉のミドリに強引に迫り、力付くで性行為をする変態痴女なのよ」
「まぁ、羨ましいです。私も強引に迫られて、力付くで性行為をして欲しいです」
(この娘の説得は無理ね。完全に心が病んでいる)
「勝手にしなさい。絶対に後悔するわよ」
「絶対に後悔なんてしません」
二人が戻って来た。
「説得出来ましたか」
「駄目だったわよ。彼女は完全に心が病んでいるわよ」
「・・・・そうですか」
「サクラ様、娘を宜しくお願いします」
「任せて。それからムム族長、エルフの森の周囲に私以外の人族が侵入出来ない結界を張っておいたわよ。それでは失礼します」
「失礼します」
「父上、行って来ます」
【転移】
三人は世界樹の森に転移した。
「依頼はどうなりましたか」
「依頼は達成しました」
「アカネ、本当ですか」
「依頼は確かに達成しました。依頼だけは」
「どういう意味ですか。それから彼女は誰ですか」
「ミドリ様ですね。エルフの森の族長の娘モモでず。そしてサクラ様の弟子です」
「・・・・サクラ様、どういう事ですか」
「後で詳しく話します」
「分かりました。後で詳しく話を聞きましょう」
ミドリは一応笑顔だが、眼は笑っていなかった。
「という訳です」
「そうですか。取り敢えず依頼の達成ありがとうございます」
ミドリは何とか納得して、怒りを鎮めてくれた。
「依頼を達成させたんだから、一回やらせてよ」
「・・・・仕方ないですね。一回だけですよ」
結局三回してしまった。
「一回だけだって、言ったじゃないですか」
「余りに気持ち良くて、我慢出来なかったのよ。お詫びに世界樹の森の守護を引き受けるわよ」
こうして世界樹の森を新たな拠点にした。